●ロックへの旅(第五章):バーバラ・アン
    (ザ・ビーチ・ボーイズ:1965)

1966年1月の最後のチャートで、全米No.2に輝いたのはビーチ・ボーイズの《バーバラ・
アン》です。残念ながら1位に届かなかったのは、大方の人が予想するとおり、ビートル
ズが《ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト》でNo.1の座に君臨していたためです。
ビーチ・ボーイズのリーダーで、プロデューサーも兼務していたブライアン・ウィルソン
は、いつも悔しい思いをしていたんだろうな。しかし《バーバラ・アン》という曲は、ビ
ーチ・ボーイズが素晴らしいロックンロール・グループだということを、非常にわかりや
すく示してくれているシングルだと僕は思っているのです。そもそも《バーバラ・アン》
は、ビーチ・ボーイズのオリジナルではありません。しかし彼らのライヴでは欠かせない
ナンバーであり、ビーチ・ボーイズがオリジナルだと思っている人は、少なくないのでは
ないかと思います。

その秘密は、やはりビーチ・ボーイズならではのコーラス・ワークにあります。《バーバ
ラ・アン》は、彼らのパーティをそのままライヴ・レコーディングしましたというふれこ
みのアルバム『ビーチ・ボーイズ・パーティ!』に収録されていた曲です。パーティやコ
ンサートの最後に、みんなで踊りながら盛り上がるのにはもってこいのタイプの曲で、ア
ルバムでもラストに置かれています。『ビーチ・ボーイズ・パーティ!』は、MTVでお
馴染みのアンプラグドの先駆けとも言われているアルバムで、パーティというアルバムの
設定上、たまたま周囲にあった楽器で適当に演奏しましたという雰囲気の演出が施されて
います。ドラムは入っておらず、ギターもエレクトリックではなくアコースティック・ギ
ターが使われています。したがって、楽器の演奏によるドライヴ感というものは、あまり
感じることのできないアルバムなのです。ここが、大きなポイントなのです。

しかし《バーバラ・アン》を聴くと、一緒に「バーバーバー」とコーラスしたり、手拍子
をしたくなるような、いてもたってもいられない楽しい気分になります。ロックンロール
の見事なドライヴ感があるからです。そのドライヴ感を出しているのが、もう言うまでも
ありませんが楽器の演奏ではなく、彼らのコーラス・ワークそのものなのです。ビーチ・
ボーイズの楽曲に対して、フォー・フレッシュマンのハーモニーをロックンロールのリズ
ムにのせたというようなことがよく言われますが、フォー・フレッシュマンのような高度
な和声感覚を取り入れた、ロックンロールそのもののグルーヴを創りだすことのできるの
が、ビーチ・ボーイズのハーモニーなのではないかと思うのです。それをより感じさせて
くれるのは、エンディングがダラダラと続く『ビーチ・ボーイズ・パーティ!』ではなく
途中でフェイド・アウトするシングル・ヴァージョンのほうです。聴くならベスト盤で。

《 Barbara Ann 》 ( The Beach Boys )
cover

The Beach Boys are
Brian Wilson(vo,elb), Mike Love(back-vo), Carl Wilson(back-vo,g), Al Jardine(back-vo,g), 
Dennis Wilson

+ Dean Torrence(vo), Bruce Johnston(back-vo), Billy Hinche(back-vo), Hal Blaine(perc)

Written  by Fred Fassert
Produced by Brian Wilson
Recorded  : December  20, 1965
Released  : September 23, 1965
Charts    : POP#2
Label     : Capitol

Appears on : The Very Best Of The Beach Boys Sounds Of Summer
1.California Girls, 2.I Get Around, 3.Surfin' Safari, 4.Surfin' U.S.A., 5.Fun, Fun, Fun,
6.Surfer Girl, 7.Don't Worry Baby, 8.Little Deuce Coupe, 9.Shut Down, 10.Help Me, Rhonda,
11.Be True To Your School, 12.When I Grow Up (To Be A Man), 13.In My Room,
14.God Only Knows, 15.Sloop John B, 16.Wouldn't It Be Nice, 
17.Getcha Back, 18.Come Go With Me, 19.Rock And Roll Music, 20.Dance, Dance, Dance,
21.Barbara Ann, 22.Do You Wanna Dance?, 23.Heros And Villains, 24.Good Timin', 25.Kokomo,
26.Do It Again, 27.Wild Honey, 28.Darlin', 29.I Can Hear Music, 30.Good Vibrations
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