●ロックへの旅(第五章):ア・マスト・トゥ・アヴォイド
    (ハーマンズ・ハーミッツ:1966)

何を快感と感じるか否かは、人によって違うことと思います。チャートの上位曲ともなれ
ば、大勢の人々がその曲を聞いて、踊ったり、歌ったり、リラックスしたりと、なんらか
の心地よさ即ち快感を得ていることでしょう。ところがアメリカのチャートでヒットした
曲のなかには、アメリカ人という人種は、少なくとも自分とはだいぶ異なるタイプの曲を
好む人が大勢いるのだなぁと感じる曲も少なくないのです。それを強く感じたのは、エリ
ック・クラプトンの《レイ・ダウン・サリー》という曲が最初です。アメリカのチャート
でNo.1を獲得したカントリー・ロック風味のこの楽曲を、日本のクラプトン・ファンの人
達はどう感じているのでしょうか。クラプトンの曲といえば《ベター・メイク・イット・
スルー・デイ》が好きなぼくにとって、《レイ・ダウン・サリー》をNo.1にしてしまうア
メリカ人の感性は、到底相容れないものがあるのです。

そのような意味において、全米チャート史上でぼくがもっともアメリカ人の感性を疑って
しまうのが、ハーマンズ・ハーミッツなのです。ハーマンズ・ハーミッツは、イギリスの
マンチェスター出身の5人組グループで、このエッセイでも何度となくでてくるブリティ
ッシュ・インヴェイジョンのグループのひとつです。次々と全米トップ10に入るヒット
を飛ばし、とくに1965年の春から夏にかけてのチャートでは、ビートルズをしのぐ勢いが
ありました。しかしハーマンズ・ハーミッツのヒット曲を聴いてみると、彼らの曲が好き
な人には申しわけないのですが、ぼくにはしっくりこないのです。許せるのは、《アイム
・イントゥ・サムシン・グッド(邦題:朝からゴキゲン)》と《ワンダフル・ワールド》
くらいですが、これはオリジナルがぼくが好むゴフィン&キングとサム・クックの曲だか
ら聴けるのだと思っています(彼らのヒット曲は、カヴァー曲が多い)。

ところが全米No.1になった《ミセス・ブラウンのお嬢さん)》や《ヘンリー8世君)》な
どは、なぜ全米No.1になったのかぼくには理解不能です。アメリカ人とは、つくづく感性
が違うなぁと思ってしまうのです。ぼくにとってハーマンズ・ハーミッツのヒット曲はそ
のような印象ですが、1966年初めにヒットした《ア・マスト・トゥ・アヴォイド(邦題:
あの娘にご用心)》だけは、少し印象が違っています。この曲には、ほんの少しですがロ
ック(の時代になった影響)を感るのです。その要因は、P.F.スローンの手による曲
のコード進行と、バックの演奏(とくにギター)です。彼らのレコードの多くは、セッシ
ョン・ミュージシャンとしてジミー・ペイジが参加しているという話もありますので、ロ
ックっぽくなるのも当然かもしれません。《ア・マスト・トゥ・アヴォイド》だけは、ご
用心なのです。

《 A Must To Avoid 》(Herman's Hermits)
cover

Herman's Hermits are 
Peter Noone (vo), Derek "Lek" Leckenby(elg,vo), Keith Hopwood (elg), 
Karl Green(elb) & Barry "Bean" Whitwam(ds)
 
Written  by Steve Barri & P.F.Sloan
Produced by Mickie Most
Released  : 1965
Charts    : POP#8
Label     : MGM

Appears on :Their Greatest Hits
1.Mrs. Brown You've Got A Lovely Daughter, 2.No Milk Today, 3.End Of The World, 
4.This Door Swings Both Ways, 5.Just A Little Bit Better, 6.I'm Henry The VIII, I Am
7.There's A Kind Of Hush All Over The World, 8.Silhouettes, 9.I'm Into Something Good
10.Can't You Hear My Heartbeat, 11.Dandy, 12.(What A) Wonderful World, 13.Hold On
14.Listen People, 15.Leaning On A Lamp Post, 16.A Must To Avoid
※上記のイメージをクリックすると、Amazonにて購入できます