●ロックへの旅(第五章):シーズ・ジャスト・マイ・スタイル
    (ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズ:1965)

ビートルズの《ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト》が全米No.1を獲得した1966年
の1月8日のチャートの2位が、ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズの《シーズ・ジ
ャスト・マイ・スタイル(邦題:あの娘のスタイル)》です。ゲイリー・ルイス&ザ・プ
レイボーイズは、有名な俳優のジェリー・ルイスの息子のゲイリーが組んでいたグループ
です。まだロック・バンドという概念がなかった当時のアメリカの音楽業界では、楽器を
演奏するのが売りのグループでも、レコード制作の場ではセッション・ミュージシャンを
使って録音するのが当たり前でした。例えば、バーズやビーチ・ボーイズの1965年当時の
シングルをみても、フィル・スペクターのセッションを支えてきたようなセッション・ミ
ュージシャンが演奏しています。そのあたりが、ロンドンのクラブなどで演奏の腕を競い
合ってきたイギリスのロック・グループとの違いです。

《シーズ・ジャスト・マイ・スタイル》は、主に西海岸のセッション・ミュージシャンを
主体に録音された曲だと思います。作曲者に名前がクレジットされていることからみて、
ロック・ファンにはバングラディッシュのコンサートでの怪演が有名な、レオン・ラッセ
ルがピアノ(もしかするとオルガンも)を弾いているのだと思われます。《シーズ・ジャ
スト・マイ・スタイル》は、ラッセルと思われる軽快なピアノで始まりますが、そういっ
たセッション・ミュージシャンが演奏しているとか、そんなことはどうでもよくなってし
まうくらい素晴らしい曲なのです。曲調は明るいにもかかわらず、なぜか胸がキュンとな
るような、まさにポップスの王道をいくタイプの曲です。間奏のギター・ソロがもう少し
印象的かつ独創的なものであれば、ロックの時代のシングルとして100点をあげてもよ
いくらいの素晴らしいできなのです。

なぜ胸がキュンとなるのか。その秘密は、コード進行にあります。1番でいうと、最初の
8小節目まではロックっぽいコード進行なのですが、、9小節目からコード進行がマイナ
ー調になるのです。これが、なんとなく切ない気持にさせるのです。マイナーになるから
切ない気持になるなんて、あまりにも単純なのですが、事実だからしかたがありません。
ポップスの魔法みたいなものです。サビに入る前にコーラスが入ってきて、「エニイウェ
イ」の”ウェイ”でワーとくるところも最高です。そして、”これぞポップス”という、
ドゥ・ワップ調のサビのコーラスがくるという、まあ聴いてもらうしかない最高の曲なの
です。逆に考えると、《シーズ・ジャスト・マイ・スタイル》ようなタイプのポップスは
、R&Bにどっぷりとそまっていた当時のイギリスのグループには、絶対できなかったと
思うのです。もしかすると、ビートルズも”やられた”と思ったかもしれません。

《 She's Just My Style》( Gary Lewis & The Playboys )
cover

Gary Lewis & The Playboys are
Gary Lewis(vo,ds), David Walker(elg), David Costell(elg), Allan Ramsay(elb),
John West("Cordovox" (electronic accordion))
 
Written  by Gary Lewis, Leon Russell, Snuff Garrett and Al Capps
Produced by Snuff Garrett
Released  : December 11, 1965
Charts    : POP#3
Label     : Liberty

Appears on :The Complete Liberty Singles
Disk:1
1.This Diamond Ring, 2.Hard to Find, 3.Tijuana Wedding, 4.Count Me In, 5.Little Miss Go-Go,
6.Doin' the Flake, 7. Save Your Heart for Me, 8.Without a Word of Warning,
9.Everybody Loves a Clown, 10.Time Stands Still, 11.She's Just My Style,
12.I Won't Make That Mistake Again, 13.Sure Gonna Miss Her, 14.I Don't Wanna Say Goodnight,
15.Green Grass, 16.I Can Read Between the Lines, 17.My Heart's Symphony,
18.Tina (I Held You in My Arms), 19.(You Don't Have To) Paint Me a Picture,
20.Looking for the Stars, 21.Way Way Out, 22.Down on the Sloop John B
Disk:2
1.Where Will the Words Come From, 2.May the Best Man Win, 3.Loser (With a Broken Heart),
4.Ice Melts in the Sun, 5.Girls in Love, 6.Let's Be More Than Friends, 7.Jill,
8.New in Town, 9.Has She Got the Nicest Eyes, 10.Happiness, 11.Sealed with a Kiss,
12.Sara Jane, 13.Main Street, 14.C.C. Rider, 15.Mister Memory, 16.Every Day I Have to Cry Some,
17.Rhythm of the Rain, 18.Hayride, 19.Gary's Groove, 20.Something Is Wrong,
21.I Saw Elvis Presley Last Night, 22.I'm on the Right Road Now, 23.Great Balls of Fire

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