●ロックへの旅(第五章):ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト
    (ザ・ビートルズ:1965)

ビートルズの1965年の最後のシングルは、ビートルズ史上初の両A面シングル《ウィー・
キャン・ワーク・イット・アウト(邦題:恋を抱きしめよう)》・《ディ・トリッパー》
でした。米キャピトルのシングル盤のジャケットの表記では、《ウィー・キャン・ワーク
・イット・アウト》のほうが上の方に書かれています。そのためか、《ウィー・キャン・
ワーク・イット・アウト》は全米No.1を獲得しています(ちなみに《ディ・トリッパー》
は最高5位)。《ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト》は、ポールとジョンが交互
にリード・ヴォーカルをとるというスタイルで作られています。サビで「ライフ・イズ・
ヴェリー・ショート・アンド・ゼアズ・ノ―・タイム」と人生の格言のような歌詞を歌う
ジョンの声が、なんとも哀感があって素晴らしい。ジョンの、ビートルズ時代の名唱のひ
とつだと思います。

また《ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト》で不思議なのは、ビートルズは4人し
かいないのに、リズム・トラックに5つの楽器の音が聴こえることです。ダビングなどの
レコーディング・テクニックを使えば、1人でも複数の楽器を演奏できますが、これらの
5つの楽器は同時に演奏しているように僕には聴こえます。その証拠に5つの楽器の音は
《ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト》の2テイクあるリズム・トラックのうち、
演奏が途中で終わってしまうテイク1にも入っています。発表しないとわかっているテイ
クに、わざわざ楽器をダビングすることは普通では考えられません。普通ではないことを
やるのがビートルズですが、ここは同時に演奏していると考えるほうが自然です。何度も
聴いた印象でも、同時に演奏しているように聴こえます。だとすると、誰がどの楽器を演
奏しているのでしょうか。

3拍子になるところの特徴的なドラムは、リンゴに間違いないでしょう。ノリ一発の自由
な弾き方のアコースティック・ギターは、ジョンだと思います。ベースは通常どおりポー
ルだとすると、ジョージがなにを担当しているかが問題となります(ウィキペディアでは
、ハーモニーのみしかやっていないことになっています)。僕は、ジョージが担当したの
は、ずばりエレクトリック・ギターだと思います。リズム・トラックにハーモニウムの低
音部のようなこもった音で入っているのが、おそらくジョージの弾いたエレクトリック・
ギターです。残るのはタンバリンですが、ジョージ・マーティンが叩いたと考えれば納得
できます。この5人の楽器編成で、リズム・トラックを録音したのではないかと思うので
す。そうしてできたリズム・トラックに、ヴォーカルとハーモニウムをダビングして完成
させたのが《ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト》だと思うのです。

《 We Can Work It Out 》 ( The Beatles )
cover

The Beatles are
John Lennon(vo,g,harmonium), Paul McCartney(vo,elb), George Harrison(backing-vo,elg), 
Ringo Starr(ds)

+ George Martin?(tamborine)

Written  by  John Lennon & Paul McCartney
Produced by  George Martin
Recorded :   20 October 1965
Released :   3 December 1965 (UK)
             6 December 1965 (US)
Charts   : POP#1(US)
Label    : Capitol

Appears on :Past Masters
Disk1:
1.Love Me Do [Mono Version], 2.From Me to You, 3.Thank You Girl, 4. She Loves You [Mono Version],  
5.I'll Get You [Mono Version] , 6.I Want to Hold Your Hand, 7.This Boy, 8.Komm, Gib Mir Deine Hand,  
9.Sie Liebt Dich, 10.Long Tall Sally, 11.I Call Your Name, 12.Slow Down, 13.Matchbox, 
14.I Feel Fine, 15.She's a Woman, 16.Bad Boy, 17.Yes It Is, 18.I'm Down  
Disk2:  
1.Day Tripper, 2.We Can Work It Out, 3.Paperback Writer, 4.Rain, 5.Lady Madonna, 6.Inner Light,  
7.Hey Jude, 8.Revolution, 9.Get Back, 10.Don't Let Me Down, 11.Ballad of John and Yoko,  
12.Old Brown Shoe, 13.Across the Universe, 14.Let It Be,  
15. You Know My Name (Look Up the Number) [Mono Version] 

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