●ロックへの旅（第五章）：オーヴァー・アンド・オーヴァー
    （ザ・デイヴ・クラーク・ファイヴ：1965）

1965年という年は、ロックンロールの一部が変化して、ロックへと生まれかわった年と言
えるのではないでしょうか。ロックンロールを聴いて育った世代のビートルズやビーチ・
ボーイズの音楽をベースにして、ボブ・ディランという強力なスパイスをまぶしてできあ
がったバーズに代表されるフォーク・ロックや、Ｒ＆Ｂをベースにエフェクターという武
器でエレクトリックにサウンドを彩ったローリンズ・ストーンズ、フー、ヤードバーズと
いったブリティッシュ・ロックは、1965年という時代が生んだ新しい波だったように思い
ます。同時代ヒット・チャートを賑わしていたほぼ誰もが、これらの新しい波に感化され
、自らのサウンドをブラッシュ・アップしていきました。逆にいえば、ブラッシュ・アッ
プできなかった、あるいはしなかったグループのサウンドは、次第に時代の中で色褪せて
いきました。

デイヴ・クラーク・ファイヴは、どうだったのでしょうか。彼らの唯一の全米No.1ヒット
《オーヴァー・アンド・オーヴァー》は、それを物語っているような気がします。「アウ
ーッ、アウーッ」というドゥ・ワップ調で始まり、ズンチャッ、ズンチャッというリズム
のこの曲は、ポップではありますが、バーズの《ミスター・タンブリン・マン》や、ロー
リング・ストーンズの《サティスファクション》といった同時代のロックと並べてみると
、古めかしい印象をうけます。それもそのはず、《オーヴァー・アンド・オーヴァー》は
彼らのオリジナルではなく、1950年代に活躍したＲ＆Ｂシンガーのボビー・ディ（マイケ
ル・ジャクソンが歌った《ロッキン・ロビン》のオリジナル・シンガー）の創った曲なの
です。デイヴ・クラーク・ファイヴは、ボビー・ディの《リトル・ビティ・プリティ・ワ
ン》もカヴァーしていますから、おそらく好みのタイプだったのでしょう。

1965年の終盤にきて、このようなタイプの曲をやっていたところが、デイヴ・クラーク・
ファイヴの命運をわけたように思います。その後も彼らは、バディ・ホリーの影響を色濃
く感じさせる曲や、その名も《グッド・オールド・ロックンロール》という50年代のロッ
クンロールの名曲をメドレーにしたシングルを出しています。デイヴ・クラーク・ファイ
ヴのこのような方向性は、1965年を境にオリジナル中心主義となり、ロックンロールのカ
ヴァーをレコーディングしなくなっていくビートルズやローリング・ストーンズとは全く
対象的です。ただ、デイヴ・クラーク・ファイヴをこよなく愛するミュージシャン達（キ
ッス、チープ・トリック、ヴァン・ヘイレンなど、アメリカ勢のハード・ロック系に多し
）をみると、彼らの進んだ方向性は、アメリカン・ロック史のバック・ボーン形成に一役
も二役もかっていたように感じるのは、ボクだけではないのではと思います。

《 Over And Over 》( The Dave Clark Five )

The Dave Clark Five are Dave Clark(ds,vo), Mike Smith(vo,org,p), Lenny Davidson(g), Rick Huxley(elb) and Denny Payton (sax, harmonica, g) Written by: Robert James Byrd (aka Bobby Day) Produced : Dave Clark Charts : POP#1 Label : Columbia/Epic Appears on :The Dave Clark Five The Hits 1.Do You Love Me, 2.Glad All Over, 3.Bits And Pieces, 4.Can't You See That's She's Mine, 5.Everybody Knows (I Still Love You), 6.Don't Let Me Down, 7.Any Way You Want It, 8.Wild Weekend, 9.Catch Us If You Can, 10.Because, 11.I Like It Like That, 12.Reelin' And Rockin', 13.Over And Over, 14.Come Home, 15.You Got What It Takes, 16.Try Too Hard, 17.Everybody Knows, 18.I'll Be Your's My Love, 19.Nineteen Days, 20.Look Before You Leap, 21.Til The Right One Come Along, 22.All Night Long, 23.Good Old Rock 'n' Roll Medley, 24.Sha Na Na Hey Kiss Him Goodbye, 25.Here Come Summer, 26.Put A Little Love In Your Heart, 27.Universal Love