●ロックへの旅(第五章):アイ・ゴット・ユー(アイ・フィール・グッド)
    (ジェームズ・ブラウン:1965)

1965年の終盤に、ジェームズ・ブラウンが前作に続いて、また大きなヒットを放ちます。
ブラウンの60年代の傑作のひとつ、《アイ・ゴット・ユー(アイ・フィール・グッド)》
です。邦題は単に《アイ・フィール・グッド》ですし、歌詞でも「アイ・フィール・グッ
ド」が繰り返されるので、その曲名で憶えている方も多いかもしれませんね。1965年10月
にリリースされ、R&Bチャートでは6週連続のNo.1。全米ポップ・チャートでも3位と
いう、前作《パパズ・ゴット・ア・ブランド・ニュー・バッグ》に続く大ヒットでした。
ボブ・ディランの《ライク・ア・ローリング・ストーン》や、ローリング・ストーンズの
《サティスファクション》といった、ロック史に残るような決定的な曲がチャートを飾っ
ていた時代において、プリミティヴな印象の強いブラウンの曲が、ポップ・チャートの主
要なリスナーである白人層にどのように聴かれていたのかは、少し興味深いです。

そんな点にも少し関係するかもしれませんが、《アイ・ゴット・ユー(アイ・フィール・
グッド)》が世にでるまでには興味深い経緯があります。もともとこの曲の初期ヴァージ
ョンは、前年のアルバム『アウト・オブ・サイト』に収録されていました(この時点では
タイトルも単に《アイ・ゴット・ユー》)。『アウト・オブ・サイト』は同名のシングル
をフィーチャーしたアルバムですが、他の収録曲は《カム・レイン・オア・カム・シャイ
ン》、《モナ・リザ》、《ネイチャー・ボーイ》、《アイ・ラヴ・ユー、ポーギー》とい
った、いわゆるスタンダード・ナンバーなのです。ブラウンは”キング・オブ・ソウル”
とか”キング・オブ・ファンク”としかみられない場合もありますが、こうしたスタンダ
ード・ナンバーを歌わせても、すごく上手なのです。つまり『アウト・オブ・サイト』と
いうアルバムは、明らかに白人層へのアピールを狙ったアルバムなのです。

また《アイ・ゴット・ユー(アイ・フィール・グッド)》は、同じく12小節ブルースを下
敷きにしている《アウト・オブ・サイト》によく似ています。つまりアルバム『アウト・
オブ・サイト』のなかでの《アイ・ゴット・ユー》の役割は、タイトル曲のリプライズ的
な役割、つまりリスナーの白人層が、ホーム・パーティなどでダンスに興じるときのため
のナンバーだったのではないかと思います。そんな《アイ・ゴット・ユー》を、ブラウン
が《アイ・ゴット・ユー(アイ・フィール・グッド)》としてリメイクしたのは、同じく
12小節ブルースをベースにして大ヒットした前作の《パパズ・ゴット・ア・ブランド・ニ
ュー・バッグ》のヒットがあったからではないでしょうか。前作のギターのカッティング
と同じくらい印象的な、コーラス毎のブレイク部分のナインスの音まで上り詰めるホーン
・セクションが忘れられない1曲です。

《 I Got You (I Feel Good) 》 ( James Brown )
cover

James Brown(vo)

Ron Tooley(tp), Joe Dupars(tp), Levi Rasbury(tp),
Nat Jones(as), St.Clair Pinckney(ts), Eldee Williams(ts), Al "Brisco" Clark(ts),
Maceo Parker(as), Jimmy Nolen(elg), Alphonso "Country" Kellum(elg),
Bernard Odum(elb), Melvin Parker(ds)

Written  by : James Brown
Produced by : James Brown
Released    : October, 1965
Charts      : POP#3,R&B#1
Label       : King

Appears on :Foundations Of Funk : A Brand New Bag : 1964-1969
Disk1
1.Out Of Sight, 2.Papa's Got A Brand New Bag, Pts.1 & 2, 3.I Got You (I Feel Good) ,
4.Money Won't Change You, Pts.1 & 2, 5.Introduction/Out Of Sight/Bring It Up,
6.Let Yourself Go, 7.There Was A Time, 8.Cold Sweat, Pts.1 & 2, 9.Get It Together, Pts.1 & 2,
10.Goodbye My Love, Pts.1 & 2, 11.I Can't Stand Myself (When You Touch Me), Pts.1 & 2,
12.I Got The Feelin', 13.The Popcorn, 14.Cold Sweat (False Start And Studio Dialogue),
15.Cold Sweat (Alternate Take)
Disk2
1.Licking Stick-Licking Stick, 2.Say It Loud-I'm Black And I'm Proud, Pts.1 & 2,
3.Give It Up Or Turnit A Loose, 4.You Got To Have A Mother For Me,
5.I Don't Want Nobody To Give Me Nothing (Open Up The Door I'll Get It Myself),
6.Let A Man Come In And Do The Popcorn, Pts.1 & 2, 7.It's A New Day, Pts.1 & 2,
8.Ain't It Funky Now, 9.Brother Rapp, 10.Funky Drummer, Pts.1 & 2, 11.She's The One
12.Mother Popcorn

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