●ロックへの旅(第五章):レッツ・ハング・オン(トゥ・ホワット・ウィーヴ・ゴット)
    (ザ・フォー・シーズンズ:1965)

1962年の《シェリー》以降、全米チャートでコンスタントにヒットを出してきたのがフォ
ー・シーズンズです。ブリティッシュ・インベイジョンの波に飲み込まれながらも、消え
てしまうことがなかったのは、ボブ・ゴーディオとボブ・クルーという優れたポップ感覚
をもったソング・ライティング・チームに恵まれていたからでしょう。しかし、バーズの
《ミスター・タンブリン・マン》、ローリング・ストーンズの《サティスファクション》
、ビーチ・ボーイズの《カリフォルニア・ガールズ》といったロック史を彩る楽曲がチャ
ートを賑わすようになり、とどめにボブ・ディランが《ライク・ア・ローリング・ストー
ン》をぶちかました1965年においては、さすがの彼らも失速していったかのように見えま
した。そんな思いを見事に打ち砕いたのが、全米3位という彼らにとって久しぶりの大ヒ
ットになった《レッツ・ハング・オン(トゥ・ホワット・ウィーヴ・ゴット)》です。

さすがはゴーディオとクルーだと思うのが、明らかに時代を意識したと思われる楽曲制作
を、ディランの《ライク・ア・ローリング・ストーン》以降となる1965年後半に続けて行
っていることです。ロックな時代になって、少しコーニーな印象のヴォーカルのフランキ
―・ヴァリには《ザ・サン・エイント・ゴナ・シャイン(エニイモア)》(名曲!)とい
うソロ曲を準備し、フォーク・ロックな時代に対してフォー・シーズンズの変名ユニット
の”ザ・ワンダー・フー”名義でディランの《ドント・シンク・トワイス(イッツ・オー
ル・ライト)》をリリースします。ディランの曲をカヴァーすることは、当時の音楽業界
の流行でした。そして真打のフォー・シーズンズには、ロックな時代にも十分に通用する
強力なシングル《レッツ・ハング・オン(トゥ・ホワット・ウィーヴ・ゴット)》を用意
して、おそらく勝負をかけたのです。

勝負のカギは、アップ・テンポになる部分におけるファズ(ギターの低音部とベースの高
音部にファズをかけユニゾンで弾いている)の導入です。おそらくローリング・ストーン
ズの《サティスファクション》を意識したものと思われますが、アメリカのグループで当
時これだけ歪んだギター・サウンドを楽曲に取り入れたグループは他になかったのではな
いでしょうか。エレクトリック・ベース、ヴィブラフォーン、タンバリン、ホーン・セク
ションの使い方も実に巧みです。まったく無駄がない、最高にポップなサウンド・プロダ
クションといえます。このシングルのリリース直後にレコーディングされたビートルズの
『ラバー・ソウル』には、ポールがファズをかけたベースを弾いている《シンク・フォー
・ユアセルフ》が収められていますが、時系列的に考えると《レッツ・ハング・オン(ト
ゥ・ホワット・ウィーヴ・ゴット)》が影響を与えた可能性もあるのではと思うのです。

《 Let's Hang On (To What We've Got) 》 ( The 4 Seasons )
cover

The 4 Seasons : 
Frankie Valli(vo), Bob Gaudio(key,vo), Tommy DeVito(elg,vo), Nick Massi(elb,vo)

Written  by : Bob Crewe, Sandy Linzer & Denny Randell
Produced by : Bob Crewe
Released    : September, 1965
Charts      : POP#3
Label       : Philips

Appears on :In Season : The Frankie Valli and the 4 Seasons Anthology

1.Sherry, 2.Big Girls Don't Cry, 3.Connie-O, 4.Peanuts,
5.Alone (Why Must I Be Alone), 6.Walk Like a Man, 7.Ain't That a Shame,
8.Candy Girl, 9.Marlena, 10.Stay, 11.Little Boy (In Grown Up Clothes),
12.Dawn (Go Away), 13.Silence Is Golden, 14.Ronnie, 15.Rag Doll, 
16.Save It for Me, 17.Big Man in Town, 18.Bye, Bye, Baby (Baby Goodbye),
19.Betrayed, 20.Toy Soldier, 21.Girl Come Running, 
22.Let's Hang On (To What We've Got) , 23.Don't Think Twice, It's All Right,
24.The Sun Ain't Gonna Shine (Anymore), 25.(You're Gonna) Hurt Yourself,
26.Working My Way Back to You, 27.You're Ready Now,
28.Opus 17 (Don't You Worry 'Bout Me), 29.I've Got You Under My Skin

1.Can't Take My Eyes off You, 2.C'mon Marianne, 3.Proud One, 
4.Tell It to the Rain, 5.Beggin', 6.Lonesome Rad, 7.I Make a Fool of Myself,
8.Watch the Flowers Grow, 9.To Give (The Reason I Life), 
10.Will You Love Me Tomorrow, 11.Idaho,
12.The Girl I'll Never Know (Angels Never Fly This Low),
13.And That Reminds Me (My Heart Reminds Me), 14.Patch Of Blue,
15.My Eyes Adored You, 16.Swearin' To God, 17.Who Loves You,
18.Our Day Will Come, 19.December, 1963 (Oh, What A Night), 20.Silver Star,
21.Fallen Angel, 22.Grease

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