●ロックへの旅（第五章）：ターン・ターン・ターン
    （ザ・バーズ：1965）

1965年に音楽業界の話題をさらったバーズの最高傑作だと僕が思っているのが、彼らの３
枚目のシングル《ターン・ターン・ターン》です。《ターン・ターン・ターン》は、彼ら
のデビュー・シングルの《ミスター・タンブリン・マン》と同様にオリジナル曲ではあり
ません。旧約聖書の文言に、アメリカの有名なフォーク・シンガーのピート・シーガーが
メロディをつけた曲です。バーズ以前に、《青春の光と影》でお馴染みの女性歌手のジュ
ディ・コリンズなどがレコーディングしています（コリンズのレコーディングには、バー
ズのジム・マッギンが参加）。しかし《ターン・ターン・ターン》といえばバーズと断言
してしまえるほど、バーズのパフォーマンスはオリジナリティに満ちていると思います。
デビュー・シングルの《ミスター・タンブリン・マン》から数えてわずか３枚目のこの曲
で、バースは頂点を極めたと言って良いと思います。

バーズといえば、なんといっても”ジングル・ジャングル・サウンド”と呼ばれるマッギ
ンの弾く１２弦ギターを中心としたきらびやかなサウンドが有名です。そのサウンドは、
彼らのアイドルだったビートルズや、エレクトリック楽器を積極的に導入していた時期の
ボブ・ディランにも影響を与えたと言われています。しかし僕が《ターン・ターン・ター
ン》で一番に言いたいのは、彼らの創りだすハーモニーの素晴らしさなのです。《ミスタ
ー・タンブリン・マン》や、２枚目のシングルとなった《オ―ル・アイ・リアリー・ワン
ト・トゥ・ドゥ》（共にディランのカヴァー）におけるハーモニーも見事なのですが、な
んといっても《ターン・ターン・ターン》におけるハーモニーが一番なのです。１２弦の
エレクトリック・ギターを導入しても誰もがバーズにならないのは、このハーモニーがバ
ーズの（初期の）フォーク・ロック・サウンドに不可欠のものだからなのです。

《ターン・ターン・ターン》は、バーズのハーモニーの見本のような曲です。「トゥ・エ
ヴィリシング」とはじまり、すぐに「ターン、ターン、ターン」から高い音でハーモニー
がついています。そして「ア・タイム・トゥ・ビー〜」の部分で全員が一度ユニゾンにな
り、最後にまた主旋律に対してハーモニーがつくのですが、今度は上ではなく下の音でつ
くのです。最初は上、最後は下と、構造はシンプルなのですが、主旋律を軸にハーモニー
が上下に入れ替わるため、不思議なことに単純に聴こえないのです。さらに歌詞の”シー
ズン”や”タイム”という言葉に呼応するように、このハーモニーはメランコリックな感
情をたたえており、このハーモニーを聴くとキュンと切ないようななんだかタマラナイ気
持ちになるのです。こんな感情を抱かせる曲は、あらゆるジャンルを考えても数えるほど
しかありません。だから僕は、《ターン・ターン・ターン》がバーズのベストなのです。

《 Turn! Turn! Turn! (To Everything There Is a Season) 》 ( The Byrds )

The Byrds are Jim McGuinn (vo,12strings-elg), Gene Clark (vo,tambourine), David Crosby (vo,elg), Chris Hillman (elb) and Michael Clarke(ds) Written by Words From The Book Of Ecclesiastes, Addaptation and music by Pete Seeger Produced by Terry Melcher Recorded : September 1,10,14 & 16, 1965 Released : October 29, 1965 Charts : POP#1 Label : Columbia Appears on : Turn! Turn! Turn! 1.Turn! Turn! Turn! (To Everything There Is A Season), 2.It Won't Be Wrong, 3.Set You Free This Time, 4.Lay Down Your Weary Tune, 5.He Was A Friend Of Mine, 6.World Turns All Around Her, 7.Satisfied Mind, 8.If You're Gone, 9.Times They Are A Changin', 10.Wait And See, 11.Oh! Susannah + bonus tracks 12.Day Walk (Never before), 13.She Don't Care About Time, 14.Times They Are A Changin' (first version), 15.It's All Over Now Baby Blue, 16.World Turns All Around Her (alt. mix), 17.Stranger In A Strange Land (instrumental)