●ロックへの旅(第五章):ドゥ・ユー・ビリーヴ・イン・マジック
    (ザ・ラヴィン・スプーンフル:1965)

1965年にディランの《ミスター・タンブリンマン》をひっさげて登場したバーズは、「ア
メリカからのビートルズへの回答」と呼ばれていたそうです。当時、バーズのメンバーだ
ったデヴィッド・クロスビー曰く、「レコード会社の宣伝さ、ビートルズとバーズでは格
が違いすぎる」ということですが、全米チャートで易々とNo.1ヒットを飛ばすビートルズ
、ローリング・ストーンズ、デイヴ・クラーク・ファイヴといったイギリスのロック・バ
ンドに拮抗しうる”アメリカのロック・バンド”は、バーズが登場するまではいなかった
といってよいでしょう。唯一、例外的な存在としてビーチ・ボーイズが思い浮かびますが
、《カリフォルニア・ガールズ》のヒット以前の彼らは、”ロック・バンド”というより
”ロックン・ロール・バンド”と呼んだほうがしっくりきます。ラヴィン・スプーンフル
がヒット・チャートに登場したのは、そのような状況においてでした。

”ダダンッ、ダダンッ”というリズムが印象的な、明るい《ドゥ・ユー・ビリーヴ・イン
・マジック(邦題:魔法を信じるかい?)》という曲が、ラヴィン・スプーンフルの最初
のシングルです。全米9位までのぼる大ヒットとなりました。ラヴィン・スプーンフルは
、フォーク・ソングを演奏していたジョン・セバスチャンが、別のフォーク・グループに
いたギタリストのザル・ヤコブスキーと出会い、ベースとドラムスを加えてバンド編成に
なったグループです。彼らもバーズと同様に、”フォーク・ロック”の系譜に属するバン
ドだと思いますが、面白いことにバーズの12弦ギターの使用にみられるような、ビートル
ズをはじめとするイギリス勢の音楽の影響が《ドゥ・ユー・ビリーヴ・イン・マジック》
という曲からは殆ど感じられません。彼らは、どのようにして《ドゥ・ユー・ビリーヴ・
イン・マジック》に聴かれるフォーク・ロック・サウンドを獲得できたのでしょうか。

そこで浮かび上がるのが、スプリームズに代表されるモータウンのサウンドです。モータ
ウンは、作家チームが書き下ろした楽曲を、専属バンド(メンバーは流動的)のファンク
・ブラザーズが演奏する形でレコードを制作していました。《ドゥ・ユー・ビリーヴ・イ
ン・マジック》の作者であるセバスチャンは、マーサ&ザ・ヴァンデラスの《ヒート・ウ
ェーヴ》のコード進行から《ドゥ・ユー・ビリーヴ・イン・マジック》のインスピレーシ
ョンを得たような発言をしていた記憶がありますが、ぼくが《ドゥ・ユー・ビリーヴ・イ
ン・マジック》を聴いて感じるのは、むしろスプリームズの《ホェア・ディド・アワー・
ラヴ・ゴー》です(ドラムスのフィルはソックリ)。ラヴィン・スプーンフルの《ドゥ・
ユー・ビリーヴ・イン・マジック》は、モータウンのヒット曲の雰囲気やサウンドをうま
くバンド編成に当てはめたことで、成功した曲なののではないかと思うのです。

《 Do You Believe In Magic 》 ( The Lovin' Spoonful )
cover

The Lovin' Spoonful are
John Sebastian(vo,autoharp,g), Zal Yanovsky (vo,elg), Steve Boone(elb) and Joe Butler(ds) 

 
Written  by John Sebastian
Produced by Erik Jacobsen
Recorded  : 1965
Released  : August 1965
Charts    : POP#9
Label     : Kama Sutra

Appears on : Do You Believe In Magic
1.Do You Believe In Magic, 2.Blues In The Bottle, 3.Sportin' Life, 4.My Gal, 5.You Baby,
6.Fishin' Blues, 7.Did You Ever Have To Make Up Your Mind?, 8.Wild About My Lovin',
9.Other Side Of This Life, 10.Younger Girl, 11.On The Road Again, 12.Night Owl Blues

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