●ロックへの旅:ポエトリー・イン・モーション
    (ジョニー・ティロットソン:1960)

年代を軸にした曲を聴く楽しみは、よく知っているつもりだった曲でも意外な新しい発見
があったりすることです。ジョニー・ティロットソンの1960年の全米トップ・テン・ヒッ
ト(2位)、《ポエトリー・イン・モーション》もそんな1曲です。《ポエトリー・イン
・モーション》という曲は、オールディーズを集めたコンピレーションCDによく入って
いる軽快な曲という印象があったのですが、よく聴いてみるとアレンジがとても独創的で
面白いのです。まず印象に残るのはサックス。《ポエトリー・イン・モーション》は、ス
ローなイントロで始まります。このイントロが、ティロットソンとサックスの掛け合いな
のです。”ジャラーン”というピアノとギターの音に導かれて、まずはティロットソンが
「ホェン・シー・マイ・ベイビー」と歌いだします。すると、すぐにサックスが後を追う
ように「ブブブブー」とくるのです。

この見事なサックスは、カントリー・ミュージックの都であるナッシュビルのセッション
・ミュージシャンのブーツ・ランドルフです。ランドルフは、エルヴィス・プレスリーや
ロイ・オービソンなど、ロックンロールの数々のレコードでもサックスを演奏している名
手です。イントロでは、ティロットソンの歌とランドルフの「ブブブブー」が3回繰り返
されます。ランドルフの「ブブブブー」は、”ドレミファー”のように音が一音づつ高く
なっていくので、イントロの後に続くメインの歌への期待感を見事に高めています。メイ
ンの歌に入る部分では、それまで後追いメロディを演奏していたサックスが、バックのリ
ズム・セクションに同化していてくのです。サックスは、もともとメロディ楽器ではなく
、リズム楽器として使用されていたため、このランドルフのパフォーマンスには思わずう
なってしまいます。

《ポエトリー・イン・モーション》のもう一点の注目ポイントは、アップテンポになって
からのアレンジです。とくに高音域を中心に”チャチャチャチャ・チャチャチャチャ”と
弾かれるパーカッシヴなピアノが印象的です。演奏をしているのは、ランドルフと同じく
ナッシュビルのセッション・ミュージシャンのフロイド・クラマーです。ランドルフ同様
に、カントリーだけではなく、プレスリーやエヴァリー・ブラザーズといったロックンロ
ール関係のレコードでもピアノを弾いている名手です。クラマーの弾く、ドラムスのリズ
ムにシンクロするようなパーカッシヴなピアノが、《ポエトリー・イン・モーション》と
いう曲を単なる軽快なオールディーズの域にとどまらない印象的な曲にしているのです。
また今回聴きなおしてみて、黛ジュンの《天使の誘惑》にも似ていた(実際は逆だが)と
いう点も、ぼくにとっては新しい発見でした。

《 Poetry In Motion 》 ( Johnny Tillotson )
cover

Johnny Tillotson(vo)


Produced by : Archie Bleyer
Written  by : Paul Kaufman and Mike Anthony
Recorded    : 1960
Released    : 1960
Charts      : POP#2
Label       : Cadence

Appears on :The Definitive Soul Collection
1.Poetry In Motion, 2.Dreamy Eyes, 3.Cutie Pie, 4.Earth Angel, 5.True True Happiness,
6.Much Beyond Compare, 7.Without You, 8.Jimmy's Girl, 9.Princess, Princess,
10.Pledging My Love, 11.Why Do I Love You So, 12.True Love

+ bonus Tracks

13.Sweet Love, 14.Well, I'm Your Man, 15.Love Is Blind, 16.Never Let Me Go,
17.You Can Never Stop Me Loving You, 18.A Very Good Year For Girls, 19.Empty Feeling,
20.Where Is She, 21.Judy, Judy, Judy, 22.Out Of My Mind, 23.Much Beyond Compare,
24.Poetry In Motion

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