●ロックへの旅(第五章):ハート・フル・オブ・ソウル
    (ザ・ヤードバーズ:1965)

エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジという、ロック3大ギタリスト
を輩出したことで有名なのが、イギリスのグループのヤードバーズです。彼らの《フォー
・ユア・ラヴ》に続く2作目の全米トップ10ヒットが《ハート・フル・オブ・ソウル(
邦題:ハートせつなく)》です。《ハート・フル・オブ・ソウル》はヤードバーズのメン
バーのペンによる作品ではなく、《フォー・ユア・ラヴ》と同様に、後に10CCに参加
するグラハム・グールドマンという人の作品です。ヒット曲を望んでいたヤードバーズの
メンバーにとって《フォー・ユア・ラヴ》のヒットは待ち望んでいたものだったのでしょ
うが、彼らはそれと引き換えにエリック・クラプトンという、イギリスで最も注目を集め
ていたギタリストを失いました。したがって《ハート・フル・オブ・ソウル》では、クラ
プトンに代わってヤードバーズに参加したジェフ・ベックがギターを弾いています。

《ハート・フル・オブ・ソウル》で有名なエピソードは、シタールの導入です。ロックへ
のシタールの導入というと、インド音楽を大々的に取り入れたビートルズや、今は亡きオ
リジナル・メンバーのブライアン・ジョーンズがTV出演などでもシタールを弾いていた
ローリング・ストーンズの《ペイント・イット・ブラック(邦題:黒くぬれ!)》の印象
が強い人が多いのではないかと思います。しかし、楽曲への導入の早さという点で捉える
のであれば、ヤードバーズの《ハート・フル・オブ・ソウル》がビートルズやストーンズ
よりも早いのです。録音年月では、ビートルズに半年先行しています。導入自体は早かっ
たのですが、結局シングルとしてリリースされたのはジェフ・ベックがシタールのような
ビブラートでリード・ギターを弾いたヴァージョンでした。現在では、両方のヴァージョ
ンをCDで聴くことができます。

そして《ハート・フル・オブ・ソウル》で最も印象深いのが、このベックのリード・ギタ
ーなのです。ローリング・ストーンズの《サティスファクション》のキース・リチャ―ズ
によるオープニング・リフも衝撃的でしたが、リチャ―ズの場合は、まだ”リフ”という
次元にとどまっているように思います。しかし《ハート・フル・オブ・ソウル》のベック
のギターは、確実に”リード・ギター”です。しかもフレーズが、もともとシタールが弾
いていたエキゾチックなメロディのため、ヒット曲にしてはかなりの衝撃があったのでは
ないかと推測します。実際、ローリング・ストーンズの《ペイント・イット・ブラック》
はこの曲の影響を受けているように思えますし、ベックとジミー・ペイジがツイン・リー
ド・ギターを弾いたヤードバーズの《ハプニングス・テン・イヤーズ・タイム・アゴー(
邦題:幻の10年)》もこの曲の影響下から生まれたような気がするのです。

《 Heart Full Of Soul 》( The Yardbirds )
cover

The Yardbirds are
Keith Relf(vo), Chris Dreja(g), Paul Samwell-Smith(elb), Jim McCarty(ds), Jeff Beck(elg)


Written  by Graham Gouldman
Produced by Giorgio Gomelsky
Recorded  : April 13, 1965
Released  : June   4, 1965(UK)
            July  19, 1965(US)
Charts    : POP#9(US)
Label     : Columbia(UK)
            Epic(US)

Appears on :Having A Rave Up
1.You're A Better Man Than I, 2.Evil Hearted You, 3.I'm A Man, 4.Still I'm Sad,
5.Heart Full Of Soul, 6.Train Kept A Rollin', 

7.Heart Full Of Soul(Sitar Version), 7.Steeled Blues, 9.Shapes Of Things,
10.New York City Blues, 11.Questa Volta, 12.Paff...Bum(Italian Issue),
13.Paff...Bum(German Issue), 14.What Do You Want, 15.Jeff's Blues,
16.Someone To Love(Part1), 17.Someone To Love(Part 2), 18.For RSG,
19.Like Jimmy Reed Again, 20.Chris Number, 21.Pounds And Stomps, 22.Stroll On
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