●ロックへの旅(第四章):ヘルプ!
    (ザ・ビートルズ:1965)

1965年9月第一週の全米No.1は、ビートルズの《ヘルプ!》です。本国イギリスにおける
ビートルズの10枚目のシングルであり、彼らの2作目の主演映画である「ヘルプ!」の主
題歌です。しかしぼくがこの曲を知ったのは、ビートルズのヴァージョンではなく、ラジ
オで聴いたカーペンターズによるヴァージョンでした。それはビートルズのヴァージョン
とはかなり異なるパーカッシヴなアレンジがされているカヴァー・ヴァージョンでしたが
、なぜか強く印象に残ったことを憶えています。少ししてから、カーペンターズの《ヘル
プ!》はビートルズがオリジナルだということを知り、2枚組LPだったビートルズの赤
盤を買って、ようやくオリジナル・ヴァージョンを聴いたのです。ビートルズの《ヘルプ
!》は全員が全力疾走しているような歌と演奏なのですが、赤盤にほぼ年代順に入ってい
るそれまでのビートルズのシングル曲とは、やはり一味違った印象を抱かせるのです。

それは一言でいうと、メロディアスな印象です。はじめて聴いた中学生のころから、つい
最近まで、その印象が変わることはありませんでした。しかし最近、「ホェン、アイ・ワ
ズ」で始まる《ヘルプ!》のメイン部分のメロディには、それまでのシングル曲とほぼ同
じく、ハ長調でいうとド・レ・ミ・ファ・ソの5音しか使われていない(音程の高低はあ
ります)ということに気がついたのです。メロディアスと思っていたのですが、最初の「
ホェン、アイ・ワズ・ヤンガ・ソー・マッチ・ヤンガ・ザン」というところまでは、なん
とドレミでいうとミの1音しか使われていません。その後に続く「トゥデェェィ」という
ところを含めても、ド・レ・ミ・ソの4音のみです。このことに、気がついたときは少々
驚きました。それにもかかわらず、なぜ《ヘルプ!》からはメロディアスな印象を受ける
のでしょう。どうやらその秘密は、コード進行にあるようです。

ミのメロディに対して、ド・シ・ラと下降していくベース音。ベース音がド・シ・ラと下
降していく曲は、《ラヴ・ミー・ドゥ》からはじまったビートルズのシングルとしては初
めてのパターンです。そして、そのベース音とメロディの音との間に生まれるコード。そ
の下降するベース音が作りだしているコード感が、ひとつの音で進むメロディをどれだけ
豊かに、かつメロディアスな印象にしていることか。それ以外にも、「ヘルプ・ミー、イ
フ・ユー・キャン・アイム・フィーリング・ダァーアァン」のあとのジョージの”テェー
ン、テェーン、テェーン”というギターの下降音や、なんといっても極めつけは必殺の”
テレレレ、テレレレ、テレレレ、テレレレ”と下降する奇妙なギターの下降フレーズと、
《ヘルプ!》は下降するコードやフレーズを上手く使うことによってシンプルなメロディ
をメロディアスに感じさせるという不思議なマジックを持っている曲なのです。

《 Help! 》( The Beatles )
cover

The Beatles are
John Lennon(vo,g), Paul McCartney(elb,cho), George Harrison(elg,cho) & Ringo Starr(ds, tambourine)

Written  by John Lennon & Paul McCartney
Produced by George Martin
Recorded  : April 13, 1965
Released  : July 19, 1965(US)
            July 23, 1965(UK)
Charts    : POP#1
Label     : Parlophone (UK)
            Capitol (US)

Appears on :Help!
1.Help!, 2.The Night Before, 3.You've Got To Hide Your Love Away, 4.I Need You,
5.Another Girl, 6.You're Going To Lose That Girl, 7.Ticket To Ride
8.Act Naturally, 9.It's Only Love, 10.You Like Me Too Much, 11.Tell Me What You See,
12.I've Just Seen A Face, 13.Yesterday, 14.Dizzy Miss Lizzie
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