●ロックへの旅（第四章）：（アイ・キャント・ゲット・ノー）サティスファクション
    （ザ・ローリング・ストーンズ：1965）

1965年７月、ローリング・ストーンズがようやく全米No.1ヒットをとばします。曲は、い
まもストーンズのライヴには欠かせない《（アイ・キャント・ゲット・ノー）サティスフ
ァクション（邦題：サティスファクション）》です。《サティスファクション》は、スト
ーンズのメンバーのミック・ジャガーとキース・リチャーズが創ったオリジナル曲です。
この時期のストーンズは、ビートルズに対抗する手段としてオリジナルを作ることをマネ
ージャーから強く推奨されていたといわれています。《サティスファクション》はヒット
曲ですが、ビートルズの影響は全くといってよいほど感じません。見事な出来のオリジナ
ル曲だと思います。そして、この曲の魅力を決定づけているのは、なんといってもキース
・リチャーズが夢うつつの状態のときに閃いたといわれているオープニング・リフです。
このリフは、ロックの歴史上、もっとも重要なリフではないかとぼくは思うのです。

ぼくは、このリフこそ”ロックの誕生そのもの”ではないかと思うのです。リチャ―ズの
弾くこのリフが、もしも《サティスファクション》になかったらどうでしょう。《サティ
スファクション》は、ありきたりなポップなＲ＆Ｂという雰囲気の曲になるのではないで
しょうか。リフを頭の中で取り除いてみるとわかりますが、《サティスファクション》か
ら強く感じるのは、ビートルズの影響ではなく、モータウン・レコードにいたマーヴィン
・ゲイや、ウィルソン・ピケット、ドン・コヴェイといった、アトランティック・レコー
ドのＲ＆Ｂ（ソウル）シンガー達といった、エモーショナルなタイプの同時代の黒人シン
ガーの影響です。モータウンの影響は、タンバリンの効果的な使用といったサウンド創り
にも感じることができます。つまり、もし全編を貫くリチャ―ズのリフがなかったら、《
サティスファクション》はポップなＲ＆Ｂで終わっていた可能性があります。

しかし、そこにリチャーズがリフを重ねた瞬間に化学反応がおこるのです。50年代にエル
ヴィスが、黒人シンガーのアーサー・”ビッグ・ボーイ”クルーダップの《ザッツ・オー
ル・ライト》を”黒人のように”歌った瞬間に、ロックン・ロールは誕生しました。同様
のことが、《サティスファクション》では起こっているのではないでしょうか。イギリス
から来た青年達の演奏するポップなＲ＆Ｂ（ブラック・ミュージック）に、リチャ―ズが
ファズで歪ませた音色でリフを重ねた瞬間に、もはやロックン・ロールとは呼べない音楽
、すなわち”ロック”が誕生したのではないでしょうか。リチャ―ズがリフを歪んだ音で
弾くためにファズをオンにする瞬間に、ロックのひとつのカタチが作られたように思うの
です。ローリング・ストーンズの《サティスファクション》は、そのことを伝えるドキュ
メントのように思えるのです。

《 (I Can't Get No) Satisfaction 》 (The Rolling Stones)

The Rolling Stones are Mick Jagger(vo), Keith Richards(elg,back-vo), Brian Jones(g), Charlie Watts(ds) & Bill Wyman(elb) + Jack Nitzsche(p, tambourine) Written by Mick Jagger, Keith Richards Produced by Andrew Loog Oldham Recorded : May 12, 1965, RCA Studios, Hollywood, California Released : June 6, 1965 (US) August 20, 1965 (UK) Charts : POP#1(US) Label : London 45-LON 9766 (US) 　　　　　　Decca F12220 (UK) Appears on :　Out of Our Heads 1.Mercy Mercy, 2.Hitch Hike, 3.The Last Time, 4.That's How Strong My Love Is, 5.Good Times, 6.I'm All Righ, 7.(I Can't Get No) Satisfaction, 8.Cry To Me, 9.The Under Assistant West Coast Promotion Man, 10.Play With Fire, 11.The Spider And The Fly, 12.One More Try