●ロックへの旅:ウォーク・ドント・ラン
    (ザ・ヴェンチャーズ:1960)

ぼくのようなビートルズの解散後にロックに本格的に目覚めた世代の人にとって、ヴェン
チャーズ(旧来の日本では”ベンチャーズ”と書くのが違和感がないのかもしれないが、
ここではVの発音にしたがいヴェンチャーズで統一する)の存在というのは不思議な存在
ではないだろうか。個人的なことを言わしてもらえれば、ジミ・ヘンドリックス、エリッ
ク・クラプトン、ジェフ・ベック、レッド・ツェッペリンなどを聴いてロックを本格的に
知るようになった耳には、ヴェンチャーズは”ロック”として響いてこない。かといって
ビートルズを通して遡って聴いたチャック・ベリーやリトル・リチャードのような”ロッ
クンロール”としても響かない。感覚的に一番近いのは、60年代から70年代の歌謡曲であ
る。イメージ的には、若大将(加山雄三)、バミューダ・パンツ、クルー・カットにサン
グラスといったものとシンクロしている。

歌謡曲と感覚的に近いというのは、ヴェンチャーズが関わった《二人の銀座》や《京都の
恋》といった”ヴェンチャーズ歌謡”というものが存在していることからも間違ってはい
ないのだろう。これらの楽曲は彼らの中から出てきたものであり、サウンド的にも彼らの
サウンドが最もフィットしている。そのような音楽性をもったグループが、日本ではある
意味でビートルズ以上と言える人気を得て、音楽的な影響も多くの人に与えたことがとて
も不思議なのだ。ビートルズも既にいたわけである。しかし、多くの人はヴェンチャーズ
を選択した。しかしよく聴いてみると、ヴェンチャーズの音楽には、ぼくのような彼らの
サウンドを”ロック”でも”ロックンロール”でもないと感じた人間にも、魅力的に響く
なにかが確実にあるのである。彼らの最初の全米ヒット《ウォーク・ドント・ラン(邦題
:急がば廻れ)》には、その魅力が集約されているような気がする。

《ウォーク・ドント・ラン》は、Am-G7-F-E7というギターを弾く人には最も親しみやすい
コード進行である。そして「おまえらホンマにアメリカ人か」と聞きたくなる、マイナー
調のメロディがくる。実は作曲はヴェンチャーズではなく、ジョニー・スミスという白人
のジャズ・ギタリストだ。しかし《ウォーク・ドント・ラン》といえばヴェンチャーズと
いうくらい、サウンド的に彼らにピッタリとあっている。コード進行のわかりやすさとマ
イナー調が、楽器をやってみたい当時の日本の若者たちへの敷居を低くしたのだろう。し
かし、それだけでオヤジになっても毎週のように練習に励んだりするのだろうか。《ウォ
ーク・ドント・ラン》を聴いて感じるのは、トレモロ&エコーたっぷりのエレクトリック
・ギター・サウンドの麻薬的な魅力である。ヴェンチャーズ・オヤジは、彼らの麻薬的な
サウンドにとりつかれた人達なのだ。奇しくもそれは、ジミヘンと相通じるのである。

《 Walk, Don't Run 》( The Ventures )
cover

The Ventures are
Bob Bogle(lead-g), Don Wilson(rhythm-g), Nokie Edwards(bass-g)

Skip Moore(ds)

Written  by Johnny Smith
Released  : June, 1960
Charts    : POP#2
Label     : Monument

Appears on :AKA-Ban(赤盤) 1960-1970
Disk.1
1.Walk Don't Run, 2.McCoy, 3.Perfidia, 4.Lullaby of the Leaves, 5.Bulldog, 6.Blue Moon,
7.Yellow Jacket, 8.Driving Guitar, 9.Bumble Bee Twist, 10.Telstar, 11.Lonely Bull, 12.Apache,
13.Caravan, 14.Wild Night, 15.Pipeline, 16.Surf Rider, 17.Ninth Wave, 18.Let's Go, 19.Walk Right In,
20.Wipe Out, 21.Out of Limits, 22.Penetration, 23.Cruel Sea, 24.Scratchin', 25.Journey to the Stars
Disk.2
26.Walk Don't Run '64, 27.Diamond Head, 28.Blue Star (The Medic Theme), 29.House of the Rising Sun,
30.Slaughter on 10TH Avenue, 31.I Feel Fine, 32.Ten Seconds to Heaven, 33.Swingin' Creeper,
34.Go Go Slow, 35.Secret Agent Man, 36.Stop Action, 37.Taste of Honey, 38.Batman, 39.Man from U.N.C.L.E.,
40.Kimi to Itsumademo, 41.Yozora No Hoshi, 42.Ginza Lights, 43.Green Hornet Theme, 44.Hokkaido Skies,
45.Greco, 46.Flights of Fantasy, 47.Horse, 48.Hawaii Five-O, 49.Kyoto Doll, 
50.Reflections in a Palace Lake (Kyoto Bojo)

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