●ロックへの旅（第四章）：ミスター・タンブリン・マン
    （ザ・バーズ：1965）

冒頭の12弦ギター、そしてそこに絡んでくるエレクトリック・ベースとエコーのかかった
タンブリンのサウンド。バーズの《ミスター・タンブリン・マン》には、このイントロの
サウンドだけで心をわしづかみにされてしまいます。神々しい感じさえ受けます。バッハ
にインスパイアされたとかいう話もありますが、真実はどうあれ、一発で心をわしづかみ
にされてしまうイントロであることに変わりはありません。それは永遠に記憶に残る名曲
になくてはならない要素のひとつです。この曲が発売された当時の人々も心をわしづかみ
にされたようで、チャートにおける成績はもちろんNo.1。バーズの初めてのシングルでし
たが、ビートルズの《チケット・トゥ・ライド》、ビーチ・ボーイズの《ヘルプ・ミー、
ロンダ》、スプリームズの《バック・イン・マイ・アームズ・アゲイン》、フォー・トッ
プスの《アイ・キャント・ヘルプ・マイセルフ》に続く全米No.1は立派です。。

ロックンロールが誕生して半世紀以上たったいま、バーズの《ミスター・タンブリン・マ
ン》に関しても様々な情報が明らかになってきました。最も有名なものは、リズム・トラ
ックはビーチ・ボーイズの傑作《ドント・ウォーリー・ベイビー》（1964年）を参考にし
たというものでしょう。この話は、イントロの印象的な12弦ギターを弾いているロジャー
・マッギン自身がいろいろなところで発言しています。なによりも、両方の曲を聴き比べ
てみれば、誰もが「なるほど」と思えることなので真実なのでしょう。そのような制作の
ウラ話的な情報は、書籍やインターネットなどで容易に手に入るようになりました。しか
しそのような情報と、音楽そのものが与えてくれるものは全く違います。バーズの《ミス
ター・タンブリン・マン》が、ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、モータウン勢のひしめく
全米チャートでNo.1を獲得できた理由は、やはり音楽の中にしかないと思うのです。

その理由として考えられるのは、12弦ギターの印象的なイントロはもちろんですが、ボブ
・ディランの曲そのものが持つシンプルなメロディの美しさと、バーズの美しいヴォーカ
ルの奇跡的なコラボレーションにあるのではないかと思うのです。もっとも高い音から下
降してくるメロディは、誰でも口ずさめるシンプルな魅力があります。そのメロディは、
ビートルズのレノン＆マッカートニー、ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン、モ
ータウンのホランド、ドジャー＆ホランドに匹敵するのでしょうか。ぼくは、バーズの手
によって、奇跡的に匹敵する魅力を備えたと思うのです。ディランのオリジナルのメロデ
ィを改良して、誰もが口ずさめる（ヒットするための重要な要素）レベルに引き上げたこ
とが、バーズの最大の功績ではないかと思うのです。そして、誰よりもそのことに驚き、
ショックを受けたのが、他ならぬ作者のディランだったような気がするのです。

《 Mr. Tambourine Man 》( The Byrds )

The Byrds are Roger McGuinn(vo,12string_elg), Gene Clark(vo), David Crosby(vo), Chris Hillman, Michael Clarke ※Hillman and Clarke are omit on the Record Bill Pitman(elg), Jerry Cole(elg), Leon Russell(elp), Larry knechtel(elb), Hal Blaine(ds) Written by Bob Dylan Produced by Terry Melcher Recorded : January 20, 1965 Released : April 12, 1965 Charts : POP#1 Label : Columbia Appears on :Mr Tambourine Man 1.Mr Tambourine Man, 2.I'll Feel A Whole Lot Better, 3.Spanish Harlem Incident, 4.You Won't Have To Cry, 5.Here Without You, 6.Bells Of Rhymney, 7.All I Really Want To Do, 8.I Knew I'd Want You, 9.It's No Use, 10.Don't Doubt Yourself Babe, 11.Chimes Of Freedom, 12.We'll Meet Again + Bonus Tracks 13.She Has A Way, 14.I'll Feel A Whole Lot Better, 15.It's No Use, 16.You Won't Have To Cry, 17.All I Really Want To Do, 18.You And Me