●ロックへの旅(第四章):バック・イン・マイ・アームズ・アゲイン
    (ザ・スプリームズ:1965)

1965年の全米チャートを眺めていると、名勝負を繰り広げているスポーツを観戦している
みたいにワクワクした気分になってきます。ライチャス・ブラザーズの《ユーヴ・ロスト
・ザット・ラヴィン・フィーリン》でフィル・スペクターが見事に全米No.1を獲得すれば
、前年から快進撃が続いているビートルズは会心のギター・リフで始まる《チケット・ト
ゥ・ライド》でたちまちチャートのトップに躍り出ます。すぐさまビーチ・ボーイズが、
「もうビートルズにトップを譲ってはおけぬ」と、《ヘルプ・ミー、ロンダ》でトップに
躍り出るという、いまではロック・ポップスの伝説となっている人達が、みな現役でチャ
ートという戦場でしのぎを削る様子は、それだけでワクワクさせるものがあります。この
全米チャートで、ビートルズやビーチ・ボーイズと一緒に熾烈な争いを繰り広げていたの
が”ヒッツ・ビル・USA”でお馴染みのデトロイトのモータウン・レコードです。

モータウンは、3月にテンプテーションズの《マイ・ガール》とスプリームズの《ストッ
プ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ》の全米No.1ヒットを出していますが、ビートルズの
《チケット・トゥ・ライド》やビーチ・ボーイズの《ヘルプ・ミー、ロンダ》が大ヒット
していた5月までの間は、マーヴィン・ゲイやマーサ&ザ・ヴァンデラスによるトップ1
0ヒットはあるものの、全米No.1ヒットは出ていない状況でした。たかだか2カ月の間の
出来事ですが、おそらく社長のベリー・ゴーディ・Jrをはじめとするモータウンの経営
ならびに制作陣はヤキモキしていたことでしょう。そんな彼らにとっての、満を持しての
大ヒットが、スプリームスの《バック・イン・マイ・アームズ・アゲイン(邦題:涙のお
願い)》です。ビーチ・ボーイズの《ヘルプ・ミー、ロンダ》を蹴落としての、全米No.1
(1965年6月)でした。

《バック・イン・マイ・アームズ・アゲイン》は、《愛はどこへ行ったの》、《ベイビー
・ラヴ》、《ひとりぼっちのシンフォニー》、《恋はあせらず》といったスプリームズの
珠玉の傑作群と比較すると、あまり目立たない位置にある曲といえます。ウリはといえば
、モータウン初の8トラック録音の曲とのこと。そんなこととは関係なく、ポップスとロ
ックが一緒になったような曲調は、スプリームズの他の傑作群に比較して決して劣るもの
ではないとぼくは思います。ポイントは、ヴァイヴとピアノによる”チャチャチャチャー
、チャッチャチャー”というイントロのリフ。このリフは、初期の松田聖子の楽曲によく
聴くことのできたパターンです。したがって松田聖子に代表される80年代アイドル歌謡を
聴いて育ったぼくのような世代にとっては、80年代歌謡のネタ元として魅力的に響くので
はないかと思うのです。

《 Back In My Arms Again 》 ( The Supremes )
cover

The Supremes are
Diana Ross(lead-vo), Florence Ballard(vo), Mary Wilson(vo)

 
Written  by Brian Holland, Lamont Dozier & Eddie Holland
Produced by Brian Holland & Lamont Dozier
Recorded  : December 1,1964 & February 24,1965
Released  : April 15,1965
Charts    : POP#1
Label     : Motown

Appears on : The Ultimate Collection
1.When the Lovelight Starts Shining Through His Eyes, 2. Where Did Our Love Go,
3.Baby Love, 4.Come See About Me, 5.Stop! In the Name of Love, 6.Back in My Arms Again,
7.Nothing but Heartaches, 8.I Hear a Symphony, 9.My World Is Empty Without You,
10.Love Is Like an Itching in My Heart, 11.You Can't Hurry Love, 12.You Keep Me Hangin' On,
13.Love Is Here and Now You're Gone, 14.Happening, 15.Reflections, 16.In and out of Love,
17.Forever Came Today, 18.Some Things You Never Get Used To, 19.Love Child,
20.I'm Livin' in Shame, 21.I'm Gonna Make You Love Me, 22.I'll Try Something New,
23.Composer, 24.No Matter What Sign You Are, 25.Someday We'll Be Together

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