●ロックへの旅:オンリー・ザ・ロンリー
    (ロイ・オービソン:1960)

「森田健作じゃない、これ」。ロイ・オービソンのヒット曲《オンリー・ザ・ロンリー》
を、ぼくがはじめて聴いたときの感想です。森田健作というのは、改めて言うまでもない
かとは思いますが、現千葉県知事と同一人物です。いまでこそ政治の世界で活躍する森田
健作ですが、”青春の巨匠”という別名を持つとおり昔は青春ドラマの大スターでした。
ドラマの中で彼の演じる主人公が剣道をやっていたので、彼に憧れて剣道を始めた友人も
ひとりやふたりではありません。それくらい、ぼくらの世代にとっては影響力の大きいス
ターでした。そのうえ彼は、ドラマだけではなく、自らが主演するドラマの主題歌も数多
く歌っていました。日本を代表する作詞家の阿久悠が手掛けた彼の名曲の多くは、彼の主
演ドラマと同様にぼくらの心に深く刻まれたのです。その中の1曲に《さらば愛の日々よ
》という曲があるのですが、その曲のフィーリングがとても《オンリー・ザ・ロンリー》
に似ているのです。それが冒頭の感想へとつながるわけです。

そのような印象の《オンリー・ザ・ロンリー》という曲は、オービソンの初の大ヒット曲
です。バディ・ホリーのマネージャー兼プロデューサーのノーマン・ペティに認められた
オービソンが、初めてのシングルを出したのが1955年。《オンリー・ザ・ロンリー》がヒ
ットするまで、5年もかかったことになります。その間、エルヴィス・プレスリーの後釜
となる新人を探していたサン・レコードのプロデューサーのサム・フィリップスの目にと
まり、サンからデビュー・シングルの再発売を含めて4枚のシングルを出しています。そ
の後、エルヴィスと同じく、サンから大手のRCAへと移籍して2枚のシングルを出すも
不発。しかしRCAの次に移籍したモニュメント・レコード時代から、オービソンに運が
巡ってくるのです。全米トップ・テン・ヒットを量産したモニュメント時代の3枚目のシ
ングルが、初の全米2位となった《オンリー・ザ・ロンリー》なのです。

「ダンダンダン、ドゥビドゥワー」というコーラスはドゥ・ワップの影響も感じさせます
が、曲調が爽やかなのでドゥ・ワップっぽい感じはしません。リズムもツイストっぽいの
ですが、もろにツイストを感じさせません。ロックっぽい感じもしません。コーラスも伴
奏も、すべてが爽やかで繊細なオービソンのイメージにぴったりなのです。冒頭の歌詞で
「オンリー・ザ・ロンリー」とタイトルが歌われた瞬間、オービソンの声の魅力によって
そのイメージがオービソン以外の何物でもない決定的なイメージに変わります。それは、
それまでのポップスにない上品な爽やかさ。青春スターだった森田健作のスタッフが、曲
を制作するうえで意識したくなったのもわかります。聴きどころは、ミドル部分の「ゼア
・ゴーズ・マイ・ベイビィ」からオペラ風に盛り上がっていくところ。歌に関してあまり
詳しくない人が聴いても、十分に歌のうまさが伝わってくるのではないかと思うのです。

《 Only The Lonely (Know The Way I Feel) 》( Roy Orbison )
cover

Roy Orbison

Written  by Roy Orbison and Joe Melson
Released  : May, 1960
Charts    : POP#14
Label     : Monument

Appears on :The Essential Roy Orbison
Disk.1
1.Ooby Dooby, 2.Go! Go! Go!, 3.Rock House, 4.Uptown,
5.Only The Lonely (Know The Way I Feel), 6.Blue Angel, 7.I'm Hurtin', 8.Lana,
9.Love Hurts, 10.Crying, 11.Candy Man, 12.Dream Baby (How Long Must I Dream),
13.The Crowd, 14.Leah, 15.Falling, 16.Working For The Man, 17.Mean Woman Blues,
18.Blue Bayou, 19.Pretty Paper, 20.It's Over
Disk.2  
1.Oh, Pretty Woman, 2.You Got It, 3.She's A Mystery To Me, 4.California Blue,  
5.The Only One, 6.Ride Away, 7.Crawling Back, 8.Best Friend,  
9.Communication Breakdown, 10.Walk On, 11.That Lovin' You Feelin' Again, 
12.Running Scared, 13.In Dreams, 14.A Love So Beautiful, 15.The Comedians,  
16.Claudette, 17.I Drove All Night, 18.Wild Hearts Run Out Of Time,
19.Coming Home, 20.Life Fades Away

Disk1-1,1-2,1-3:Roy Orbison & Teen Kings
Disk2-11:Emmylou Harris With Roy Orbison
Disk2-19:Roy Orbison with Carl Perkins / Johnny Cash / Jerry Lee Lewis
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