●ロックへの旅(第四章):ヘルプ・ミー、ロンダ
    (ザ・ビーチ・ボーイズ:1965)

お久しぶりの我らがビーチ・ボーイズの登場です。チャートを吹き荒れるビートルズ旋風
に対して、全米No.1の《アイ・ゲット・アラウンド》ので存在感を示したのが前年の7月
のこと。その後《ホェン・アイ・グロウン・アップ》や《ダンス、ダンス、ダンス》とい
った曲をヒットさせますが、イギリス勢の勢いにはかなわずNo.1の座を獲得するまでには
いたりませんでした。ツァーをこなしながら曲を作り、プロデューサーとしてアルバムを
制作していたビーチ・ボーイズのリーダーのブライアン・ウィルソンの肩にかかるプレッ
シャーは並大抵ではなかったのでしょう。1964年の12月、ツァー中の飛行機の中で、つい
にブライアンの精神はついに破たんをきたしてしまいます。以降、ブライアンはツァーか
ら離脱して曲作りとスタジオ・ワークに専念し、ビーチ・ボーイズはグレン・キャンベル
やブルース・ジョンストンをブライアンの代役にすえてツァーを行うようになります。

スタジオ・ワークに専念しはじめたブライアンは、ビーチ・ボーイズの傑作アルバム『ト
ゥデイ!』を制作します。《ヘルプ・ミー、ロンダ》は、『トゥデイ!』の1曲としてレ
コーディングされました。これが1965年1月の出来事。しかし、この曲の手ごたえに何か
感じるものがあったのでしょう。ブライアンは、短いピアノ・ソロとギター・ソロを加え
、シングル・ヴァージョンを完成させます。このヴァージョンの録音時に、マネージャー
だった実の父親のマリー・ウィルソンとブライアンは対立し、最終的には実父を解雇する
というかたちで決着しています。これが2月の出来事。最初に録音したヴァージョンは、
『トゥデイ!』の1曲としてリリースされます。これが3月の出来事。2月に録音したヴ
ァージョンは、シングルとしてリリースされます。これが4月の出来事。このシングル・
ヴァージョンが、ビートルズをNo.1の座から蹴落として全米No.1になるのです。

それ以来、《ヘルプ・ミー、ロンダ》は、ビーチ・ボーイズのライヴに欠かせないナンバ
ーとなりました。延々と繰り返される「ヘッ、ミ、ローンダ、ヘッ、ヘッ、ミ、ローンダ
」というコーラスは、ライヴ後半で観客と一緒に盛り上がるのに最適だからでしょう。し
かし《ヘルプ・ミー、ロンダ》の真に魅力的な部分は、そのような盛り上がりとは一切関
係ないとぼくは思うのです。ぼくが《ヘルプ・ミー、ロンダ》で一番魅力的に感じる部分
は、「ウェ、ロンダ、ユー、ルック、ソー、ファー(イン)」という部分で、メロディが
一瞬だけ憂いを帯びるところなのです。上記のようなブライアンを取り巻く背景がそうさ
せたのでしょうか。歌詞の中のSheやherを、ブライアンを取り巻いていた諸々のプ
レッシャー要因として深読みすることもできますが、おそらくは無意識的の仕業によるも
のでしょう。天才の創るメロディは、人の心を掴むなにかをもっているようです。

《 Help Me, Rhonda 》 ( The Beach Boys )
cover    cover

The Beach Boys are
Brian Wilson(cho,p.org),Carl Wilson(cho,elg), Dennis Wilson(cho), Al Jardine(Lead-Vo) and  Mike Love(cho)

Bruce Johnston(cho)

Written  by Brian Wilson & Mike Love
Produced by Brian Wilson
Recorded  : February 24, 1965
Released  : April 5, 1965
Charts    : POP#1
Label     : Capitol

Appears on :Today! / Summer Days(2in1)
Today!:
1.Do You Wanna Dance, 2.Good To My Baby, 3.Don't Hurt My Little Sister, 4.When I Grow Up (To Be a Man),
5.Help Me, Ronda, 6.Dance, Dance, Dance, 7.Please Let Me Wonder, 8.I'm So Young, 9.Kiss Me Baby,
10.She Knows Me Too Well, 11.In the Back of My Mind, 12.Bull Session with "Big Daddy"
Summer Days:
13.Girl from New York City, 14.Amusement Parks, U.S.A., 15.Then I Kissed Her, 16.Salt Lake City,
17.Girl Don't Tell Me, 18.Help Me, Rhonda [Single Version], 19. California Girls, 
20. Let Him Run Wild, 21. You're So Good To Me, 22. Summer Means New Love,
23.I'm Bugged At My Ol' Man, 24.And Your Dream Comes True

+ bounas tracks

25.The Little Girl I Once Knew, 26.Dance, Dance, Dance [Alternate Take], 
27.I'm So Young [Alternate Take], 28.Let Him Run Wild [Alternate Take], 29.Graduation Day [Studio Version]

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