●ロックへの旅(第四章):チケット・トゥ・ライド
    (ザ・ビートルズ:1965)

”ティンリリ、ティリーリ”という、まことにカッコいいリード・ギターで始まるのが、
1965年5月の全米No.1ヒット、ビートルズの《チケット・トゥ・ライド(邦題:涙の乗車
券》です。イギリスでは9枚目のオリジナル・シングルとして発表され、映画「ヘルプ・
4人はアイドル」でも使われました(したがって、ヘルプのサウンド・トラックを収録し
たアルバム『ヘルプ』にも収録されています)。映画では、オーストリアのアルプスをバ
ックにしたスキーのシーンで使われています。《チケット・トゥ・ライド》といえば、映
画の中の雪山ではしゃぎまわるビートルズの印象が強い人も多いことでしょう。しかし、
ぼくの場合、なんといってもイントロのリード・ギターのインパクト。これにつきます。
このイントロのリード・ギターのフレーズは、ぼくはビートルズの楽曲史上でNo.1のイン
トロだと思っているのです。

このイントロ、決して難しいフレーズではありません。ちょっとギターを弾けるようにな
った人ならば、おそらく誰でも弾くことができるフレーズです。ぼくも、ギターを弾くよ
うになって、すぐに弾けた記憶があります。それくらい簡単なフレーズですから、普通の
人ならばイントロにしようとは思いつかないような気がします。思いついたとしても、も
っとイントロらしいフレーズを考えるのが普通の人のような気がします。しかしビートル
ズは、堂々と使用します。そればかりか、歌がはじまってもバックを彩るフレーズとして
しばらくこのフレーズを鳴らしているのです。またベースやドラムの演奏も、聴きように
よってはイントロのフレーズのヴァリエーションのように聴こえます。ビートルズは、そ
こまでやるかというくらい、イントロのフレーズを曲の中で使い切っているのです。そこ
が我々のような凡人と、ビートルズとの違いのかもしれません。

おそらくビートルズ(とくにジョン・レノン)の中でも、《チケット・トゥ・ライド》の
フレーズとその影響下にあるリズムのインパクトは残ったのではないでしょうか。レノン
は、1970年のヤン・ウェナーによる有名なインタヴューの中で、《チケット・トゥ・ライ
ド》について「当時としてはヘヴィーなサウンドだった」と語っています。イントロのフ
レーズに呼応しているリズムは、レノンの言うとおり確かにヘヴィーです。レノンの中で
《チケット・トゥ・ライド》のリズム・パターンは、意識的か無意識かはわかりませんが
再考され、再び曲として表にでてきたのが傑作『リボルバー』のラストを飾る《トゥモロ
ウ・ネヴァー・ノウズ》ではないかと言ったら考えすぎでしょうか。ぼくには、《チケッ
ト・トゥ・ライド》と《トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ》の2曲が、共鳴しあっているよ
うに聴こえるのです。

《 Ticket To Ride 》 ( The Beatles )
cover

The Beatles are
John Lennon(vo,g), George Harrison(elg,cho), Paul McCartney(elb,elg,cho), Ringo Starr(ds)


Written  by John Lennon & Paul McCartney
Produced by George Martin
Recorded  : February 15, 1965
Released  : April 9, 1965
Charts    : POP#1
Label     : Parlophone(UK)/Capitol(US)

Appears on :The Beatles 1962-1966
Disk1:
1.Love Me Do, 2.Please Please Me, 3.From Me To You, 4.She Loves You, 5.I Want To Hold Your Hand,
6.All My Loving, 7.Can't Buy Me Love, 8.A Hard Day's Night, 9.And I Love Her, 10.Eight Days A Week,
11.I Feel Fine, 12.Ticket To Ride, 13.Yesterday
Disk2: 
1.Help!, 2.You've Got To Hide Your Love Away, 3.We Can Work It Out, 4.Day Tripper, 5.Drive My Car,
6.Norwegian Wood (This Bird Has Flown), 7.Nowhere Man, 8.Michelle, 9.In My Life, 10.Girl,
11.Paperback Writer, 12.Eleanor Rigby, 13.Yellow Submarine

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