●ロックへの旅(第四章):アイル・ビー・ドッゴーン
    (マーヴィン・ゲイ:1965)

マーヴィン・ゲイというと、いまだにアルバム『ホワッツ・ゴーイン・オン』の成功によ
るニュー・ソウルの旗手という一面的な見方で語らがちです。しかし彼の初期のヒット曲
を聴けば誰もがすぐにわかりますが、『ホワッツ・ゴーイン・オン』の世界はあくまでも
ゲイの一部でしかありません。音楽を創るよろこびが爆発したような《スタブボーン・カ
インド・オブ・フェロウ》、ゲイ自身の好みだったというジャジーな《プライド・アンド
・ジョイ》、初期のローリング・ストーンズもカヴァーしたR&B《キャン・アイ・ゲッ
ト・ア・ウィットネス》、数々の女性歌手とのデュオなど、『ホワッツ・ゴーイン・オン
』の世界以外にもゲイの素晴らしい歌というのはたくさん存在しているのです。1965年に
ヒットしたゲイの《アイル・ビー・ドッゴーン》も、そんなゲイの魅力を伝えてくれる曲
のひとつです。

ゲイの生涯をつづった本によると、《アイル・ビー・ドッゴーン》はゲイがはじめて自分
自身で納得がいくかたちで満足できた作品だそうです。ゲイは自信家とは正反対の繊細な
性格の持ち主だったようで、《アイル・ビー・ドッゴーン》までの自分の作品に満足でき
ていなかったと言われています。そんなゲイをみて手を差し伸べたのが、古くからのモー
タウンの同僚、スモーキー・ロビンソンとミラクルズのメンバー達。《アイル・ビー・ド
ッゴーン》は、スモーキー・ロビンソンとミラクルズのメンバーの作品です。そのミラク
ルズのマーヴィン・タ―プリンのギターと、おそらくファンク・ブラザーズのジェイムズ
・ジェマーソンのベースによる、ユニゾンのイントロ・リフのカッコイイこと。このカッ
コイイとしかいいようがないイントロ・リフは、同時代の英米のロックやR&B系のミュ
ージシャンに大きなインパクトを与えたのではないかと思われます。

それを思わせるのが、《アイル・ビー・ドッゴーン》と同じ1965年のローリング・ストー
ンズの大ヒット曲、《サティスファクション》です。《サティスファクション》は、モー
タウンのマーサ&ザ・ヴァンデラスの《ダンシング・イン・ザ・ストリート》のリフをも
とに生まれたというのが定説ですが、ぼくは《アイル・ビー・ドッゴーン》がベースにな
ったのではないかと秘かに思っているのです。録音・発売日など年代的にもつながるし、
それまでのゲイの曲をレパートリーに取り入れていたストーンズの面々が、この曲を聴か
なかったということは考えにくいです。なにより《アイル・ビー・ドッゴーン》の中で、
ゲイが「ホワット・アイ・セイ」と口ずさむのが、同じくレイ・チャールズの《ホワット
・アイ・セイ》を引用する《サティスファクション》への直接的な連想をさせるのです。
この推測は、おそらくあたっていると思っているのですがいかがでしょう。

《 I'll Be Doggone 》( Marvin Gaye )
cover

Marvin Gaye(vo)

Background vocals by The Miracles (Claudette Rogers Robinson, Pete Moore, Ronnie White, and Bobby Rogers)
                   & The Andantes (Marlene Barrow, Jackie Hicks and Louvain Demps)
Instrumentation by The Funk Brothers & Marv Tarplin of The Miracles (guitars).

Written  by William "Smokey" Robinson, Pete Moore & Marv Tarplin
Produced by William "Smokey" Robinson
Recorded  : 1964
Released  : January 1965
Charts    : POP#8, R&B#1
Label     : Tamla(Motown)

Appears on : The Very Best of Marvin Gaye
Disk1
1.Stubborn Kind of Fellow, 2.Hitch Hike, 3.Pride and Joy, 4.Can I Get a Witness,
5.You're a Wonderful One, 6.How Sweet It Is (To Be Loved by You), 7.I'll Be Doggone,
8.Ain't That Peculiar, 9.It Takes Two, 10.Ain't No Mountain High Enough, 11.Your Precious Love,
12.If I Could Build My Whole World Around You, 13.Ain't Nothing Like the Real Thing,
14.You're All I Need to Get By, 15.You, 16.I Heard It Through the Grapevine,
17.Too Busy Thinking About My Baby, 18.That's the Way Love Is, 19.His Eye Is on the Sparrow

Disk2
1.What's Going On, 2.Mercy Mercy Me (The Ecology), 3.Inner City Blues (Make Me Wanna Holler),
4.You're the Man, Pts. 1-2, 5.Where Are We Going?, 6.Trouble Man, 7.Let's Get It On,
8.Come Get to This, 9.Distant Lover [Live], 10.I Want You, 11.Got to Give It Up, 12.Anger,
13.Ego Tripping Out, 14.Praise, 15.Sexual Healing

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