●ロックへの旅：マネー（ザッツ・ホワット・アイ・ウォント）
    （バレット・ストロング：1960）

「やかましいから、アッチでやんな！」と、おもわず隣に住んでいるコニシキみたいなお
ばさんが怒鳴りこんできそうなやかましさがあるのが、バレット・ストロングの《マネー
（ザッツ・ホワット・アイ・ウォント）》です。一般的に《マネー（ザッツ・ホワット・
アイ・ウォント）》というと、殆どの人がビートルズのヴァージョンで初めて聴いたので
はないでしょうか（近年では、ＲＣ・サクセションという人も多いのかもしれません）。
ぼくの場合も、ご多分にもれずビートルズのジョン・レノンの名唱によってこの曲の存在
を知りました。ファースト・アルバムの《ツィスト・アンド・シャウト》に続いて、ビー
トルズのセカンド・アルバムのエンディング・ナンバーとなっているビートルズ・ヴァー
ジョンの《マネー（ザッツ・ホワット・アイ・ウォント）》は、強烈なビートルズ体験で
した。しかし、オリジナルのストロングのヴァージョンも、なかなかのものです。

ところで《マネー（ザッツ・ホワット・アイ・ウォント）》という曲は知っていても、オ
リジナル・ヴァージョンを歌ったバレット・ストロングについて知っている人は、それほ
ど多くないのではないかと推測します。彼は、1960年代に全米チャートで数々のヒットを
飛ばすモータウンが契約した、最初の歌手だそうです。1941年生まれとのことですので、
日本の学校制度に照らし合わせれば、1940年生まれのジョン・レノンとは同級生というこ
とになります。《マネー（ザッツ・ホワット・アイ・ウォント）》がチャートの最高位を
記録したのは1960年に入ってからですが、録音は1959年。つまり《マネー（ザッツ・ホワ
ット・アイ・ウォント）》を吹きこんだときは、ストロングはまだティーン・エイジャー
だったということになります。顔立ちをみると紳士的な感じがするので、サム・クックの
ような人気者になることをモータウンは期待していたのかもしれません。

しかしストロングがどんなに紳士的な顔立ちでも、モータウンの創設者のベリー・ゴーデ
ィー・Ｊｒが制作に関わってくると、とたんに楽曲が下品になるのが面白いところです。
《マネー（ザッツ・ホワット・アイ・ウォント）》は、それが顕著なように思います。ま
ずは、ゴーディーの考えをそのまま書き出したような歌詞です。「自由になるために、た
くさんの金がほしい」というメッセージはキョーレツですが、ある意味ではビジネス書に
書かれるような真理でもあります。騒々しいバック演奏が、さらにそのメッセージを強烈
に盛りたてます。カラオケ・パブの盛り上げ係みたいな、鳴りっぱなしのタンバリンは、
とくにキョーレツです。このキョーレツさが、黒人のレコード会社モータウン制作のシン
グルにも関わらず、ロックを感じさせるのです。一般的な意味でのソウル・ミュージック
とは、程遠いものがあります。レノンが気に入ったのも、無理はないと思います。

《 Money (That's What I Want) 》( Barrett Strong )

Barrett Strong(vo) The Funk Brothers (Maybe Joe Hunter Band?) Benny Benjamin(ds), James Jamerson(b), Unknown (Joe Hunter?)(p), Unknown (Larry Veeder?)(g), Unknown (Jack Ashford?)(per), Unknown female chorus Produced by : Berry Gordy Jr Written by : Janie Bradford & Berry Gordy Jr Recorded : July?, 1959 Released : August 1,1959 Charts : POP#23,R&B#2 Label : Anna(Motown) Appears on :The Complete Motown Collection 1.Money (That's What I Want), 2.Oh I Apologize, 3.Yes, No, Maybe So, 4.You Knows What To Do, 5.I'm Gonna Cry (If You Quit Me), 6.Whirlwind, 7.Money And Me, 8.You Got What It Takes, 9.Two Wrongs Don't Make A Right, 10.Misery, 11.Let's Rock, 12.Do The Very Best You Can, 13.Tell All Your Friends, 14.Actions Speak Louder Than Words, 15.Believe It Or Not, 16.Who's Taken My Place, 17.I'll Make It Up To You, 18.Sugar Daddy, 19.That's All You Need, 20.You're Too Young, 21.(I Don't Need You) You Need Me, 22.What Is Love