●ロックへの旅(第四章):ストップ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ
    (ザ・スプリームズ:1965)

1964年のブリティッシュ・インヴェイジョン以降、全米チャートで人気が衰えなかったの
は、ビートルズだけではありません。マーヴィン・ゲイ、テンプテーションズなどを擁す
るモータウン系レーベルのヒット曲も、ビートルズと同様に1965年になってもポップ・チ
ャートをにぎわしていました。モータウンのポップ・チャートでの人気は、ケネディが推
進した公民権法の成立や、キング牧師のノーベル平和賞受賞など、黒人社会にとっての歴
史的な背景が関係しているのかもしれませんが、もしかするとビートルズも関係している
のかもしれません(彼らはモータウン好きを公言していたし、曲をカヴァーしていた)。
しかしビートルズの1965年の全米チャートでの最初のヒット曲、《エイト・デイズ・ア・
ウィーク》が全米No.1の座を明け渡すことになったのは、モータウン系のグループの曲で
した。スプリームズの、《ストップ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ》です。

《ストップ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ》は、スプリームズの4枚目の全米No.1シン
グルです。一聴して感じるのは、それまでのシングルとは異なるサウンドです。バックの
演奏を担当しているのは、いつものようにファンク・ブラザーズ(モータウンのレコーデ
ィング専属バンド)ですが、この曲における彼らの演奏からは、いわゆる私たちが普通に
イメージするところのロックを感じるのです。それが、端的に表れているのはビートとサ
ウンドです。それまでのスプリームズの曲は、”タン・タン・タン・タン”という4ビー
トを基調としていた曲が殆どでした。しかし、《ストップ・イン・ザ・ネーム・オブ・ラ
ヴ》は、ギターがはっきり”ダダダダダダダダ”という8ビートのリフを弾いています。
1965年は、ロックに大きな転換が訪れることになる年ですが、モータウンの楽曲にもその
兆候が表れていた証拠といえるのではないでしょうか。

またサウンドも、モータウンがロック的なものを意識した現れのように感じます。とくに
物凄い音圧にそれを感じるのです。スプリームズのそれまでのヒット曲だけではなく、こ
の曲の少し前にヒットしたテンプテーションズの《マイ・ガール》などと比べてみても、
全く異なるサウンドであり音圧なのです。とくに、オルガン、ピアノ、エレクトリック・
ベースによる低音の強調に、ひじょうにロック的なサウンドに近づける創意工夫を感じま
す。しかし、そのサウンドがロック的な視点で大きく注目を浴びることがなかったのは、
ヴァイブとホーン・セクションというモータウン・サウンドの華やかさを彩る楽器の音が
巧みにブレンドされていたからでしょう。その意味で《ストップ・イン・ザ・ネーム・オ
ブ・ラヴ》で創りだされたサウンドは、もっともモータウンらしいサウンドと言えるので
はないかと思います。

《 Stop! In The Name Of Love 》 ( The Supremes )
cover

The Supremes are
Diana Ross(lead-vo), Florence Ballard(vo), Mary Wilson(vo)

 
Written  by Brian Holland, Lamont Dozier & Eddie Holland
Produced by Brian Holland & Lamont Dozier
Recorded  : January,1965
Released  : February 8,1965
Charts    : POP#1
Label     : Motown

Appears on : The Ultimate Collection
1.When the Lovelight Starts Shining Through His Eyes, 2. Where Did Our Love Go,
3.Baby Love, 4.Come See About Me, 5.Stop! In the Name of Love, 6.Back in My Arms Again,
7.Nothing but Heartaches, 8.I Hear a Symphony, 9.My World Is Empty Without You,
10.Love Is Like an Itching in My Heart, 11.You Can't Hurry Love, 12.You Keep Me Hangin' On,
13.Love Is Here and Now You're Gone, 14.Happening, 15.Reflections, 16.In and out of Love,
17.Forever Came Today, 18.Some Things You Never Get Used To, 19.Love Child,
20.I'm Livin' in Shame, 21.I'm Gonna Make You Love Me, 22.I'll Try Something New,
23.Composer, 24.No Matter What Sign You Are, 25.Someday We'll Be Together

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