●ロックへの旅(第四章):エイト・デイズ・ア・ウィーク
    (ザ・ビートルズ:1965)

1965年のアメリカのヒット・チャートにおけるビートルズの最初のヒット曲は、《エイト
・デイズ・ア・ウィーク》です。もちろん、全米No.1。1965年になると、ブリティッシュ
・インベイジョンと言われたイギリスのグループのうち、マージー・ビート勢は少しづつ
チャートから姿を消していきますが、ビートルズ人気は健在だったようです。《エイト・
デイズ・ア・ウィーク》は、イギリスでは1964年にリリースされた『ビートルズ・フォー
・セール』の収録曲としてリリースされました(シングル・カットはされていません)。
一方、イギリスのオリジナル・アルバムを解体して、独自の選曲・曲順でアルバムを制作
していたアメリカでは、『ビートルズ・フォー・セール』の収録曲を元に制作された『ビ
ートルズ '65』には《エイト・デイズ・ア・ウィーク》は収録されずに、シングル・リ
リースされました(後に『ビートルズY』に収録)。

《エイト・デイズ・ア・ウィーク》という曲には、そのようなシングル・リリースするの
かしないのかというような優柔不断な部分があるように思います。ぼくは、ジョンとポー
ルは《エイト・デイズ・ア・ウィーク》をシングル候補曲として考えていたと思います。
曲そのものは、十分にヒット曲としての要素を持っています。しかし、《アイ・ウォント
・トゥ・ホールド・ユア・ハンド》や、《ア・ハード・デイズ・ナイト》といった先行シ
ングルのような、強烈なインパクトや疾走感はありません。《エイト・デイズ・ア・ウィ
ーク》は、ビートルズがスタジオで試行錯誤しながら作り上げていった曲とされています
が、おそらく試行錯誤した割には、曲そのものの器がジョンとポールが思ったほどには大
きくならなかったのだと思います。ジョンとポールには、それがわかっていたのではない
でしょうか。だからイギリスでは、結果的にシングル・リリースしなかったのではないか
と想像します。

しかし、ここからが「やはりビートルズ!」と唸らざるを得ないところです。ビートルズ
の曲(とくにシングル曲)は、”ジャァーン”という《ア・ハード・デイズ・ナイト》や
”ビョォーン”というフィード・バック音を使った《アイ・フィール・ファイン》など、
印象的なオープニングを持つ曲が多くあります。《エイト・デイズ・ア・ウィーク》のイ
ントロでは、華やかなギターのコード・カッティングが用いられていますが、それだけで
はなくフェード・インという小さな音から少しづつ大きな音になっていく手法が用いられ
ています。このギターのコード・カッティングのイントロは、『アンソロジー1』に収録
されている初期テイクでは出てきません。そこから数テイクで、あのコード・カッティン
グのオープニングを思いつくところが、それをさらにフェード・インしようと思いつくと
ころが「やはりビートルズ!」なのです。

《 Eight Days a Week 》( The Beatles )
cover

The Beatles are
John Lennon(g), George Harrison(elg), Paul McCartney(elb), Ringo Starr(ds)

 
Written  by John Lennon & Paul McCartney
Produced by George Martin
Recorded  : October   6,1964
Released  : December  4,1964
          : February 15,1965 (Single US Only)
Charts    : POP#1
Label     : Capitol

Appears on : Beatles For Sale
1.No Reply, 2.I'm a Loser, 3.Baby's in Black, 4.Rock and Roll Music, 5.I'll Follow the Sun
6.Mr. Moonlight, 7.Kansas City/Hey-Hey-Hey-Hey!, 8.Eight Days a Week, 9.Words of Love,
10.Honey Don't, 11 Every Little Thing, 12.I Don't Want to Spoil the Party
13.What You're Doing, 14. Everybody's Trying to Be My Baby

※上記のイメージをクリックすると、Amazonにて購入できます