最近の大手CDショップではあまり見かけなくなった(あるのかもしれませんが、あまり 意識させないようになっているのかも)が、少し前までは多くのCDショップ(元のレコ ード・ショップ)には、必ず”オールディーズ”というコーナーがありました。CDショ ップだけではなく、オールディーズ専門を中心としたライヴ・ハウスが存在するように、 日本では”オールディーズ”と呼ばれる音楽は、音楽ファン(ことに洋楽ファン)の間で はなじみ深いものだと思います。では”オールディーズ”と呼ばれる音楽は、いったいど のような音楽なのでしょうか。いろいろと人によって意見が分かれるのかもしれませんが 、一般的にオールディーズの名のもとに親しまれている音楽は、ビートルズが登場する以 前のアメリカン・ポップスが多いと思います。とくにブリル・ビルディング系と呼ばれる 音楽は、日本でも数多くがヒットしたため、日本人にはなじみ深いのではと思います。 ブリル・ビルディング系の音楽という呼び方は、少しマニアックな表現かもしれません。 ブリル・ビルディング系の音楽というのは、ニューヨークの音楽出版社が入居しているビ ルに出入りしていたソングライター達が作ったヒット曲を指します。その代名詞的な存在 なのが、ニール・セダカではないでしょうか。現在も現役(「このアルバムは、私の最後 のポップ・ソングのセットになるだろう」と述べている近作もそろそろ発売されるようで す)の彼は、ソロ・シンガーとして自らも数多くのヒット曲を量産する傍らで、コニ―・ フランシスに提供した《ボーイ・ハント》などでもヒットを飛ばしました。セダカも、ポ ール・アンカと同じように、正当なロック史の中では無視されることが多い人ですが、と びっきりの躁状態のようなリズミックで楽しい彼の音楽は、一度聴いたら忘れない類の音 楽であることは間違いないと思います。 そのセダカのソロとしての最初のヒット曲が、同じくブリル・ビルディング系のソングラ イター仲間だったキャロル・キングに向けて書いたという《オー!キャロル》です。セダ カは、メロディー・メイカーとしてロック・ポップスの世界でも屈指といえる人で、70年 代にキャプテン&テニールに提供した《愛ある限り》などを聴くと、非常にモダンな感覚 を持っているソングライターだと思います。しかし《オー!キャロル》では、セダカのメ ロディ・メイカーとしての本領は十分に発揮されていません。《オー!キャロル》は、ダ イアモンズがヒットさせたオールディーズの代表的なナンバー《リトル・ダーリン》を思 わせなくもありません(裏声のような声のコーラスが入るイントロや、間奏でセリフが入 るところなどもソックリです)。しかしセダカを感じさせるのはやはりメロディで、つん のめるようなところ、明らかに天性の才能を感じさせるのです。