●ロックへの旅(第四章):ラヴ・ポーション・ナンバー・ナイン
    (ザ・サーチャーズ:1965)

ブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれたイギリスのグループによるアメリカのチャ
ートの席捲には、ジェリー&ザ・ペースメーカーズ、スィンギン・ブルー・ジーンズなど
、ビートルズと同じリヴァプール出身のグループも多数含まれていました。サーチャーズ
も、それらリヴァプール勢のグループのひとつです。カウ・ボーイ映画好きだったことか
ら、アメリカ俳優ジョン・ウェイン主演の「サーチャーズ」という映画のタイトルをその
ままグループ名にしてしまった彼らは、その容姿もアメリカの映画俳優のようなヘア・ス
タイルをしていました。ビートルズに似たヘア・スタイルが多かった当時のイギリスのグ
ループの中では、彼らの容姿は少し異色です。見た目はアメリカっぽいサーチャーズでし
たが、《ニードルズ・アンド・ピンズ(邦題:ピンと針)》の全英No.1ヒットに代表され
るイギリス国内での成功ほどにはアメリカのチャートでは成功していませんでした。

そのサーチャーズが1965年に放った全米ヒットが、《ラヴ・ポーション・ナンバー・ナイ
ン(邦題:恋の特効薬)》です。サーチャーズのシングルで、アメリカのチャートのトッ
プ10に入ったのはこの曲のみ(イギリスでは6曲あります)。したがってアメリカ国内で
サーチャーズといえば、《ラヴ・ポーション・ナンバー・ナイン》なのでしょう。日本で
もアメリカの余勢をかってか、ヒットしていた記憶があります。しかしサーチャーズが《
ラヴ・ポーション・ナンバー・ナイン》を取り上げたのは、1963年発表のファースト・ア
ルバム『ミート・ザ・サーチャーズ』の収録曲としてでした。ちなみにこのアルバムの他
の収録曲は、《スタンド・バイ・ミー》、《マネー》、《ツィスト・アンド・シャウト》
といったR&Bカヴァーがしめています。《ラヴ・ポーション・ナンバー・ナイン》も例
外ではなく、黒人ドゥ・ワップ・グループのクローヴァーズのカヴァー曲です。

サーチャーズの《ラヴ・ポーション・ナンバー・ナイン》のヒットで一番びっくりしたの
は、作者のリーバー&ストーラーではないでしょうか。エルヴィスが歌った《ハウンド・
ドッグ》などの作者としてロック史には欠かせない彼らが、この曲をクローヴァーズに提
供したのは1959年。それから5年以上も経って、全米チャートの3位に入るなんて想像も
しなかったことでしょう。サーチャーズにしても、ファースト・アルバム用に録音したこ
の曲が、1965年(発売は1964年)になってから全米3位になるなんて考えてもみなかった
のではないでしょうか。しかしロックンロールからロックへの過渡期となった1965年とい
う年に、《ラヴ・ポーション・ナンバー・ナイン》はピッタリとはまった感があります。
そしてサーチャーズは、この埋もれた傑作に命を吹き込んだというだけで、ロック史にそ
の名をとどめる価値があると思うのです。

《 Love Potion Number Nine 》( The Searchers )
cover

The Searchers are
Mike Pender(vo,elg,g), John McNally(elg,g,vo), Tony Jackson(vo,elb), Chris Curtis(ds)


Written  by Jerry Leiber and Mike Stoller
Recorded  : 1963
Released  : 1964(US)
Charts    : POP#3(US)
Label     : Kapp(US)

Appears on :The Very Best of the Searchers
1.Sweets For My Sweet, 2.Needles And Pins, 3.Love Potion Number Nine,
4.Don't Throw Your Love Away, 5.Sugar And Spice, 6.When You Walk In The Room,
7.Ain't That Just Like Me, 8.What Have They Done To The Rain,
9.Some Day We're Gonna Love Again, 10.Goodbye My Love, 11.Bumble Bee,
12.He's Got No Love, 13.Take Me For What I'm Worth, 14.Have You Ever Loved Somebody

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