●ロックへの旅:スリープ・ウォーク
    (サント&ジョニー:1959)

「これ、ジョージじゃん」、「いいやビーチ・ボーイズみたい」、まあ、どちらも言いえ
て妙だと思うのが、1959年の全米No.1ヒット、サント&ジョニー《スリープ・ウォーク》
です。上述の意見は実はどちらも僕の感想で、《スリープ・ウォーク》のメロディの最初
の部分の雰囲気は、アンソロジー・プロジェクトの中で”ビートルズの新曲”として披露
された《フリー・アズ・ア・バード》におけるジョージ・ハリスンのスライド・ギター・
プレイを思わせます。また《スリープ・ウォーク》でメロディと対比するように弾かれる
旋律は、ビーチ・ボーイズの傑作《スピリット・オブ・アメリカ》のコーラス部分を思わ
せます。ジョージもビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンもバリバリのティーン・
エイジャーの頃のヒット曲なので、無意識にインスパイアされた(もしかすると意識的に
取り入れた可能性もなくはない?)のではないかと思います。

そのようにロックとの関係性を感じさせる《スリープ・ウォーク》とは、いったいどのよ
うな曲なのでしょうか。実はこの曲は、インストゥルメンタル(歌がない、楽器だけで演
奏される曲)なのです。演奏しているサント&ジョニーというのは兄弟で、兄のサントが
よくハワイアンなどで使われるスティール・ギターという楽器、弟のジョニーはフル・ア
コースティックのエレクトリック・ギターでリズム・ギターを弾いています。他には、ベ
ースとドラムスがバッキングをしています。弟のジョニーの弾くギターのトーンとかコー
ドの弾き方はどちらかというとジャズ・ギターなのですが、兄のサントのエレクトリック
・スティール・ギターが、なんともいえずエモーショナルでロックを感じさせるのです。
そのトーン(というか全体の雰囲気)は、間違ってもイージー・リスニングやハワイアン
で聞かれるような、スティール・ギターではないのです。

もともとスティール・ギターは、ロックンロールの前身のひとつのウェスターン・スィン
グ(ロックンロールの元祖、ビル・ヘイリのバンドにもスティール・ギター奏者がいた)
でも使われていた楽器で、ハワイアンに限定された楽器ではありません。サント自身は、
ハワイアンのスティール・ギター奏者から楽器を習ったことはあったようですが、俗に3
連ロッカ・バラードと言われるリズムを使った自作の《スリープ・ウォーク》を聴くと、
ハワイアンをやりたかったわけではないと思われます。ロックンロールの時代において、
3連ロッカ・バラードを目いっぱいエレクトリック・スティール・ギターで鳴らすという
姿勢は、実にロックを感じさせます。その姿勢が演奏に影響を及ぼし、ジェフ・ベック、
ジョー・サトリアーニ、ラリー・カールトンといった多くの異なるタイプのギタリストを
惹きつけてやまないこの曲の魅力の元になっているのかもしれません。

《 Sleep Walk 》( Santo & Johnny )
cover

Santo & Johnny 

Written  by Ann Farina, John Farina & Santo Farina
Recorded  : 1959
Released  : 1959
Charts    : POP#1, R&B#4
Label     : Canadian American

Appears on :The Best Of Santo & Johnny 
1.Sleep Walk, 2.All Night Diner, 3.Tear Drop, 4.Caravan, 5.Summerimte, 6.Lazy Day, 7.Anna,
8.Twistin' Bells, 9.Bulls-Eye, 10.Hop Scotch, 11."Theme From ""Come September"", 
12.I'll Remember (In The Still Of The Night), 13.A Thousand Miles Away, 14.Over The Rainbow,
15.Crying In The Chapel, 16.Venus, 17.Tenderly, 18.School Days, 19.You Belong To Me,
20.Deep Purple, 21.Blue Moon, 22.Save The Last Dance For Me, 23.Canadian Sunset

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