●ロックへの旅(第三章):アイ・フィール・ファイン
    (ザ・ビートルズ:1964)

ビートルズの8枚目のシングルで、スプリームスの《カム・シー・アバウト・ミー》に代
わって1964年12月の全米No.1となったのが《アイ・フィール・ファイン》です。《アイ・
フィール・ファイン》といえば、まずはなんといってもイントロのフィードバック。数多
いビートルズ伝説では、「電気系統のアクシデント」ということになっていましたが、偶
然ではなく最初からこのフィードバックを取り入れていたことがここ十数年のビートルズ
研究によって明らかにされています。もともとは確かに、「電気系統のアクシデント」と
思われるような形でフィードバック現象が起こったのでしょうが、それがいかにも「録音
のときに(まさにレコーディングしようとしているそのときに)偶然発生したものを、そ
のまま取り入れた」かのように伝説として語られてきたところが、まさにビートルズなら
ではだと思います。

《アイ・フィール・ファイン》を聴いて感じるのは、それまでのシングル盤とは異なるサ
ウンド・カラーです。デビュー・シングルの《ラヴ・ミー・ドゥ》を除き、《プリーズ・
プリーズ・ミー》から《ア・ハード・デイズ・ナイト》までのシングルは、原色のポップ
な色合いのサウンドを感じます。しかし《アイ・フィール・ファイン》やB面に収録され
た《シーズ・ア・ウーマン》ではサウンドが変化して、土色や茶色っぽい乾いた色合いに
感じるのです。その色合いは、同時期に録音されたアルバム『ビートルズ・フォー・セー
ル』にも感じます。ビートルズ伝説によれば、このサウンドの変化は、彼らの多忙による
ものだそうです。確かに、発表に値する手持ちの新曲は少なかったのでしょう。しかし、
《アイ・フィール・ファイン》のイントロや、この曲のリフに聴けるようなサウンド上の
実験精神からは、むしろ『リボルバー』あたりのビートルズを感じます。

では、なぜサウンドは変わったのでしょう。生演奏ではないのですから、多忙や疲れが音
楽の色合いを変えるなんておかしな話です。結論を言えば、サウンドの変化は50年代後半
のR&Bサウンドに彼らが一時的に(かつ無意識に)ハマったのではないかと僕は推測し
ているのです。ビートルズは1964年6月のセッションで、ラリー・ウィリアムズやカール
・パーキンスのカヴァーを録音しています。彼らの意識が、50年代のR&Bに向いたこと
は間違いないでしょう。それが、《アイ・フィール・ファイン》を含む、この時期の彼ら
のサウンドに影響を及ぼしたのではないでしょうか。レイ・チャールズの《ホワット・ア
イ・セイ》を思わせる《アイ・フィール・ファイン》のリズムや《シーズ・ア・ウーマン
》のピアノ、当時未発表だったリトル・ウィリー・ジョンのカヴァー《リーヴ・マイ・キ
ティン・アローン》のR&Bの色合いの濃いサウンドを聴くと、そう思えてくるのです。

《 I Feel Fine 》( The Beatles )
cover

The Beatles are
John Lennon(vo,g), Paul McCartney(backing-vo,elb), George Harrison(backing-vo,elg), 
Ringo Starr(ds,per)


Written  by: John Lennon & Paul McCartney
Produced by: George Martin
Recorded   : October 18, 1964
Released   : November 23, 1964(US)
             November 27, 1964(UK)
Charts     : POP#1
Label      : Capitol(US)

Appears on :Past Masters
Disk1:
1.Love Me Do [Mono Version], 2.From Me to You, 3.Thank You Girl, 4. She Loves You [Mono Version],  
5.I'll Get You [Mono Version] , 6.I Want to Hold Your Hand, 7.This Boy, 8.Komm, Gib Mir Deine Hand,  
9.Sie Liebt Dich, 10.Long Tall Sally, 11.I Call Your Name, 12.Slow Down, 13.Matchbox, 
14.I Feel Fine, 15.She's a Woman, 16.Bad Boy, 17.Yes It Is, 18.I'm Down  
Disk2:  
1.Day Tripper, 2.We Can Work It Out, 3.Paperback Writer, 4.Rain, 5.Lady Madonna, 6.Inner Light,  
7.Hey Jude, 8.Revolution, 9.Get Back, 10.Don't Let Me Down, 11.Ballad of John and Yoko,  
12.Old Brown Shoe, 13.Across the Universe, 14.Let It Be,  
15. You Know My Name (Look Up the Number) [Mono Version]  

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