●ロックへの旅(第三章):シーズ・ノット・ゼア
    (ザ・ゾンビーズ:1964)

「60年代初期にデビューしたグループのデビュー・シングルにしては、素晴らしい完成度
だなー」と思わず感心してしまうのが、ゾンビーズのファースト・シングル、《シーズ・
ノット・ゼア》です。《シーズ・ノット・ゼア》は大ヒットしたにもかかわらず、ゾンビ
ーズもデイヴ・クラーク・ファイヴやアニマルズなどと同様に、ロックの歴史の中に埋も
れてしまいそうになっているグループのひとつではないでしょうか。ゾンビーズには、60
年代後半にも《タイム・オブ・ザ・シーズン(邦題:ふたりのシーズン)》という現在で
もTVのCMなどで使われるヒット曲や、日本ではGSのカーナビ―ツというグループが
歌った《好きさ、好きさ、好きさ》の元歌の《アイ・ラヴ・ユー》というヒットもあるの
ですが、一般的には、ロックの歴史の中で目立った活動がなかったために、おそらく忘れ
去られようとしているのだと思います。

しかしゾンビーズの楽曲を好きない人は多いようで、CMの中であったり、映画の中など
で彼らの楽曲はときどき使用されているようです。そのたびごとに曲を歌っている彼らに
注目が集まるのが、まさにゾンビのようで面白いところです。《シーズ・ノット・ゼア》
も、近年、映画の中で使用されているようですが、ロックへの旅の中でもこの曲は素通り
してしまうわけにはいきません。なんといっても、ビートルズ訪米後のアメリカのチャー
トで、イギリスのグループとしていきなり2位(ちなみにキャッシュ・ボックスのチャー
トでは1位)という大ヒットの実績は無視できません。しかもそれがデビュー・シングル
であり、そのうえ冒頭に記したように、とても素晴らしい完成度なのです。これだけでも
十分に驚きなのですが、《シーズ・ノット・ゼア》の時点では、グループのメンバーの殆
どが十代だったという事実にもさらに驚いてしまいます。

その当時19歳だったロッド・エージェントが書いた《シーズ・ノット・ゼア》の魅力は、
なんといっても楽曲そのものでしょう。同時代の他のグループと比較してみると如実にわ
かりますが、その異色さは群を抜いています。当時のイギリスのグループの曲はというと
、ビートリーな曲か、R&Bの影響モロ出しの曲が殆どですが、《シーズ・ノット・ゼア
》はどちらにもあてはまりません。トラディショナル・フォークとジャズをごった煮にし
て、ボサノヴァで味付けをし、仕上げにロックのスパイスをかけたような不思議な曲なの
です。間奏のエレクトリック・ピアノ・ソロも、まさにジャズ。ブリティッシュ・ロック
のスターには、ストーンズのチャーリー・ワッツや、クリームのジャック・ブルースなど
、ジャズ出身者が多いですが、《シーズ・ノット・ゼア》を聴くと、ジャズがブリティッ
シュ・ロックに与えた影響はもっと研究されてしかるべきだと思うのです。

《 She's Not There 》( The Zombies )
cover

The Zombies are
Colin Blunstone(vo), Paul Atkinson(elg), Rod Argent(elp), Chris White(elb), Hugh Grundy(ds)


Written  by Rod Argent
Recorded  : 1964
Released  : July 24, 1964
Charts    : POP#2(US)
Label     : Decca

Appears on : Begin Here
1.Road Runner, 2.Summertime, 3.I Can't Make Up My Mind, 4.Way I Feel Inside, 5. Work 'N' Play,
6.You've Really Got a Hold On Me / Bring It On Home To Me, 7.She's Not There, 8.Sticks and Stones,
9.Can't Nobody Love You, 10.Woman, 11.I Don't Want To Know, 12.I Remember When I Loved Her,
13.What More Can I Do, 14.I Got My Mojo Working, 15.It's Alright With Me, 16.Sometimes,
17.Kind of Girl, 18.Tell Her No

+ bonus tracks

19.Sticks and Stones [Alternate Take], 20.It's Alright with Me [Alternate Take],
21.I Know She Will, 22.I'll Keep Trying
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