●ロックへの旅(第三章):タイム・イズ・オン・マイ・サイド
    (ザ・ローリング・ストーンズ:1964)

ビートルズが《アイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド》によってロックンロー
ルからロックへと続く扉をあけてから、すでに半年以上が経ちました。のちにライバル視
されるローリング・ストーンズは、なにをやっていたのでしょう。彼らも、別にサボッて
いたわけではありません。ビートルズ訪米以降のブリティシュ・インベイジョンの余波に
乗り遅れまいと、全米トップ40圏内に2枚のシングル《テル・ミー》と《イッツ・オール
・オーヴァー・ナウ》を送っています。しかし、全米チャートNo.1を獲得したデイヴ・ク
ラーク・ファイヴやアニマルズに比べると、決定的な何かにかけるような中途半端な印象
を受けます。しかしストーンズも、秋が深まる頃にようやくトップ10圏内へのシングル・
ヒットを放ちます。そのストーンズ最初の全米トップ10ヒットとなった曲が、《タイム・
イズ・オン・マイ・サイド》です。

「タァーアーア、アー」と始まるこの曲は、見事にストーンズにフィットしています。あ
まりにもピッタリなのでストーンズのオリジナルだと思ってしまいますが、作ったのはノ
ーマン・ミードという人物です。実はこの人はジャニス・ジョップリンが歌った《クライ
・ベイビー》(名曲!)、ロレイン・エリソンの《ステイ・ウィズ・ミー》を作ったジェ
リー・ラゴヴォイという人と同一人物なのです。しかも《タイム・イズ・オン・マイ・サ
イド》はストーンズ用に書かれたというわけではなく、オリジナルはジャズの有名なトロ
ンボーン奏者カイ・ウィンディングによるインストルメンタル演奏なのです。ストーンズ
がカヴァーしたのは、ニューオーリンズの黒人女性歌手アーマ・トーマスが自身のシング
ル盤のB面用にカヴァーしたヴァージョンで、ジミヘンの怪しげな渡米前のセッションに
顔を出すシミー・ノーマンという人が新たに歌詞をつけ加えたものでした。

オリジナルはジャズのインストゥルメンタル、カヴァー元は女性シンガーのシングルのB
面となれば、《タイム・イズ・オン・マイ・サイド》はもはやストーンズのオリジナルと
いっても良いでしょう。《タイム・イズ・オン・マイ・サイド》はストーンズによって磨
かれ、その結果、彼らの代表曲のひとつにまで上り詰めたのだと思います。しかし、全米
トップ10ヒットとなったUSシングル・ヴァージョンは良いできではありません。オルガ
ン・イントロ・ヴァージョンと言われるヴァージョンですが、タンバリンのリズムがずれ
たり、コーラスが少し調子はずれだったり、演奏の粗さが目立つのです。とはいえ、スト
ーンズが自らのバンドを代表するような曲に出あえたことは、間違いないでしょう。スト
ーンズの《タイム・イズ・オン・マイ・サイド》のUSシングル・ヴァージョンが伝える
のは、「演奏は粗いのだけど、なんかイイんだよねー」という未知の可能性なのです。

《 Time Is On My Side 》( The Rolling Stones )
cover

The Rolling Stones are
Mick Jagger(vo,tambourine), Keith Richard(elg,cho), Brian Jones(elg), 
Bill Wyman(elb,cho), Charlie Watts(ds)

Ian Stewart(org)

Written  by Norman Meade (aka Jerry Ragovoy), Jimmy Norman
Produced by Andrew Loog Oldham
Recorded  : June 24, 1964
Released  : September 26, 1964
Charts    : POP#6(US)
Label     : London

Appears on :12X5
1.Around And Around, 2.Confessin' The Blues, 3.Empty Heart, 4.Time Is On My Side,
5.Good Times, Bad Times, 6.It's All Over Now, 7.2120 South Michigan Avenue,
8.Under The Boardwalk, 9. Congratulations, 10.Grown Up Wrong, 11.You Need Me, 12.Suzie Q

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