●ロックへの旅（第三章）：ユー・リアリー・ガット・ミー
    （ザ・キンクス：1964）

ロック史において、ロイ・オービソンの《オー、プリティ・ウーマン》に続く”いかにも
ロックな”リフの曲は、イギリスはロンドン出身のキンクスが1964年に放った《ユー・リ
アリー・ガット・ミー》ではないでしょうか（どちらの曲も、ヴァン・ヘイレンによって
カヴァーされているという共通項があります）。1964年当時、これだけ強力なリフの曲は
他には見当たりません。”（ジャ）ジャジャジャジャン”という、わずか２音からなるリ
フの、なんと力強いこと。この”（ジャ）ジャジャジャジャン”というリフに、”ジャッ
ジャッジャッジャ、ジャージャ”と続ければ、そのままロック的なリフの決定版といえる
クリームの《サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ》のリフになってしまいまうところが凄い
ところです。つまり《ユー・リアリー・ガット・ミー》は、この強力なリフだけで時代を
超越していると言えるのではないでしょうか。

1964年には多くのイギリスのバンドがアメリカのチャートを賑わせましたが、その多くは
ビートルズの影響を色濃く残していました。キンクスも例外ではなく、初期の２枚のシン
グル（デビュー・シングルは、ビートルズもカヴァーしたリトル・リチャード作の《ロン
グ・トール・サリー》）には、ビートルズの初期の２枚のアルバムあたりのサウンドの影
響が垣間見えます。しかし、《ユー・リアリー・ガット・ミー》には、ビートルズの影響
をほとんど感じません。せいぜいが、曲の盛り上がりにつれてコードやコーラスの音が上
昇していくところが、ビートルズの《ツィスト・アンド・シャウト》の「アーアー」とい
う上昇コーラスを思わせるくらいです。ヴォーカルのレイ・デイヴィスによれば、ＴＶで
観たフランス人のグラス・ハーモニカのグループからヒントを得たそうですので、それが
真実だとすればビートルズの影響は全くないということになります。

それでは彼らは何をヒントにして、この強力なリフを創り出すことができたのでしょう。
キングスメンの《ルイ・ルイ》という説もありますが、もう一つ面白い説があります。な
んと、1958年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルをフィルムに収めた映画「真夏
の夜のジャズ」のオープニングを飾っていたジミー・ジェフリー・トリオの《トレイン・
アンド・ザ・リヴァー》からインスパイアされたそうなのです。確かにジミー・ジェフリ
ー・トリオの演奏では、ギターのジム・ホールがブギ・ウギっぽい８ビートのリフを弾い
ています。これにインスパイアされて《ユー・リアリー・ガット・ミー》のリフを完成さ
せたのだとすれば、やはり天才と言われるレイ・デイヴィスの感性は常人とは違うと言わ
ざるを得ません。何にヒントを得たにせよ、《ユー・リアリー・ガット・ミー》でロック
演奏のひとつの”カタチ”をキンクスが完成させたことは間違いないと思います。

《 You Really Got Me 》( The Kinks )

The Kinks are Ray Davies(vo,elg), Dave Davies(elg,cho), Pete Quaife(elb,cho) and Mick Avory(ds,per) Written by Ray Davies Produced by Shel Talmy Recorded : July, 1964 Released : August 4, 1964(UK) August 26, 1964(US) Charts : POP#7(US) Label : Pye Appears on :The Singles Collection 1.Long Tall Sally, 2.You Still Want Me, 3.You Really Got Me, 4.All Day and All of the Night, 5.Tired of Waiting for You, 6.Everybody's Gonna Be Happy, 7.Set Me Free, 8.See My Friends, 9.Till the End of the Day, 10.Where Have All the Good Times Gone, 11.Dedicated Follower of Fashion, 12.Well Respected Man, 13.Sunny Afternoon, 14.Dead End Street, 15.Waterloo Sunset, 16.Death of a Clown, 17.Autumn Almanac, 18.David Watts, 19.Susannah's Still Alive, 20.Wonderboy, 21.Days, 22.Plastic Man, 23.Victoria, 24.Lola, 25.Apeman