●ロックへの旅:アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー
    (ザ・フラミンゴス:1959)

《アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー》という曲は、もともとは1930年代に映
画で使用された曲で、フランク・シナトラやレターメンなど、いろいろな人がカヴァーし
ています。全米トップ40などのラジオ番組で洋楽を聴いた世代には、1975年の(サイモン
&ガーファンクルの)アート・ガーファンクルによるカヴァー・ヴァージョンで知られて
いるのではないかと思われます。ポップ歌手ばかりでなく、ぼくの大好きなジャズ・ユニ
ットのアート・アンサンブル・オブ・シカゴのトランペット奏者、レスター・ボウィーも
自己のユニットで取り上げていました。しかし《アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー
・ユー》といえば、なんといってもフラミンゴスのヴァージョンです。シナトラはともか
く、ほかのカヴァーはフラミンゴスのヴァージョンが存在しなかったら存在していないの
では。そう思わせるくらい、決定的なヴァージョンなのです。

どのように、決定的なのか。フラミンゴスの《アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・
ユー》を一回聴けば、おそらく誰もがたちどころにわかるのではないかと思います。なん
といっても素場らしいのは、サウンド・プロダクションです。元々が古い曲なので、おそ
らく普通にやったらムーディなジャズ・コーラスのレコードになってしまったでしょう。
しかしフラミンゴスのコーラスは、ドゥ・ワップでもないし、ジャズ・コラースとも違う
し実に不思議なコーラスなのです。なかでも”パチッパチッ”という瞬きを表したような
コーラスの合いの手は、実に印象的です。誰のアイディア(アレンジも担当していたとい
う、メンバーのテリー・ジョンソンでしょうか)かはわかりませんが、実に素場らしいア
イディアです。深いエコーに包まれたこのコーラスがあるのとないのとでは、曲の印象は
全く異なったものになったと思います。

フラミンゴスの深いエコーに包まれたコーラスと共に、サウンド・プロダクションの面で
注目に値するのが、ギターやオルガンといったエレクトリック系楽器の使い方です。ロッ
クンロールのエレクトリック・ギター、R&Bやジャズのオルガンと、当時の音楽業界で
はこれらのエレクトリック系の楽器は既に一般的になっていました。時代を代表するエレ
クトリック楽器と、ピアノやベースといったアコースティック系楽器とを絶妙に組み合わ
せることによって、一度聴いたら忘れられないような印象的なサウンドになっています。
深いエコーの中で奇跡的にブレンドされたそのサウンドは、衝撃的ですらあります。この
フラミンゴス・ヴァージョンの《アイ・オンリー・ハヴ・アイズ・フォー・ユー》に似た
サウンドは、フラミンゴス以前はおろか、それ以後も殆ど見つけることはできません。そ
れくらいオリジナリティに溢れたサウンドは、ロック史の中でも必聴といえるでしょう。

《 I Only Have Eyes for You 》( The Flamingos )
cover

The Flamingos are
Nate Nelson, Terry Johnson, Tommy Hunt, Zeke Carey, Paul Wilson and Jake Carey 

unknwon(p,org,elg,b,ds)

Written  by : Al Warren & Harry Dubin 
Charts      : POP#11, R&B#3
Label       : End

Appears on :The Best Of The Flamingos 
1.That's My Desire, 2.Golden Teardrops, 3.Jump Children, 4.Dream Of A Lifetime,
5.Ko Ko Mo (I Love You So), 6.I'll Be Home, 7.Kiss From Your Lips, 8.Vow,  
9.Ladder Of Love, 10.Lovers Never Say Goodbye, 11.I Only Have Eyes For You,
12.Mio Amore, 13.Nobody Loves Me Like You, 14.Your Other Love,
15.If I Can't Have You, 16.Love Walked In, 17.Goodnight Sweetheart, 18.Time Was

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