●ロックへの旅(第三章):ベイビー・ラヴ
    (ザ・スプリームス:1964)

うーん、なんとポップで洗練された曲なのでしょう。ダイアナ・ロス、フローレンス・バ
ラード、メアリー・ウィルソンの3人の黒人女性からなるガール・グループ、スプリーム
スの《ベイビー・ラヴ》を聴くたびに、感心の度合いは高まっていってしまうのです。こ
の曲は、2ヶ月前の1964年8月に全米No.1を獲得した前作のシングル《ホェア・ディド・
アワー・ラヴ・ゴー(邦題:愛はどこへ行ったの)》に続く、スプリームスの2曲目の全
米No.1ソングとなりました。曲の作者も、前作と同じモータウン(というよりも60年代)
を代表する作家チームのホランド/ドジャー/ホランドです。ホランド/ドジャー/ホラ
ンドを続けて起用していることから、制作会社のモータウンとしては、確実に二匹目のど
じょうを狙っていたことと思われます。《ベイビー・ラヴ》はその期待に大きく応えただ
けではなく、前作を大きく超えるポップな楽曲に仕上がりとなっています。

リード・ヴォーカルをとるのはダイアナ・ロスです。ロスの高音で滑らかな歌声が、ホラ
ンド/ドジャー/ホランドの書いたポップなメロディによく似合うのです。そのフィット
感は、ホランド/ドジャー/ホランドは、《ベイビー・ラヴ》をロスのために書いたので
はないかと思えてしまうほどです。スプリームスの曲なので当然ではないかという声も聞
こえてきそうですが、そのようなレヴェルの話ではなく、《ベイビー・ラヴ》はロスにし
か歌えないのです。例えば同じモータウンでも、マーサ&ザ・ヴァンデラスのマーサ・リ
ーヴスのリード・ヴォーカルだったとしたらどうでしょう。《ダンシング・イン・ザ・ス
トリート》のようなパンチのあるマーサの声では、おそらく全く違った印象の曲になって
しまうのではないかと思われます。《ベイビー・ラヴ》のメロディは、ロスの可憐で軽や
かな声があってこそポップな色彩を帯びるように創られていると思うのです。

もちろんそうなるように仕掛けたのは、ホランド/ドジャー/ホランドの仕業だと思われ
ます。《ベイビー・ラヴ》と前作の《ホェア・ディド・アワー・ラヴ・ゴー》という2曲
の全米No.1ヒットを連発するこの驚異的な制作チームの才能に、おそらく当時レコード制
作に関わっていた多くの人達は眼を奪われたのではないでしょうか。彼らが監修していた
といわれている、サウンド・プロダクションも申し分ありません。とくに、細かいリズム
を刻むピアノを優しく包みこむようなヴィブラフォンの使い方は見事の一言です。誤解を
恐れずに言えば、このようなポップで洗練された楽曲が、作家、レコード制作、演奏、歌
と、ほぼ全て黒人の手によって作られたということにあらためて驚かされます。それゆえ
《ベイビー・ラヴ》のような60年代モータウンのポップな楽曲を知らなければ、ブラック
・ミュージックの全ての理解したことにはならないのではないかとぼくは思うのです。

《 Baby Love 》( The Supremes )
cover

The Supremes are
Diana Ross(lead-vo), Florence Ballard(vo), Mary Wilson(vo) 

Written  by Brian Holland, Lamont Dozier & Eddie Holland
Produced by Brian Holland & Lamont Dozier
Recorded  : August 13, 1964
Released  : September 17, 1964
Charts    : POP#1
Label     : Motown

Appears on :Where Did Our Love Go? (40th Anniversary Edition) 
Disk1:
Mono Version
1.Where Did Our Love Go, 2.Run, Run, Run, 3.Baby Love,  
4.When The Lovelight Starts Shining Through His Eyes, 5.Come See About Me,
6.Long Gone Lover, 7.I'm Giving You Your Freedom, 8.A Breathtaking Guy,
9.He Means The World To Me, 10.Standing At The Crossroads Of Love,  
11.Your Kiss Of Fire, 12.Ask Any Girl,  
Streo Version
13.Where Did Our Love Go, 14.Run, Run, Run, 15.Baby Love,  
16.When The Lovelight Starts Shining Through His Eyes, 17.Come See About Me,
18.Long Gone Lover, 19.I'm Giving You Your Freedom, 20.A Breathtaking Guy,  
21.He Means The World To Me, 22.Standing At The Crossroads Of Love,  
23.Your Kiss Of Fire, 24.Ask Any Girl  
Disk:2
+ Bonus Tracks
1.This Is It, 2.I'm The Exception To The Rule,  
3.Everyday I'll Love You More Than Yesterday, 4.Beginning To Ending, 5.Mr.Blues,  
6.Come On Boy, 7.Bye Baby, 8.My Imagination, 9.I Idolize You  
10.You're Gonna Come To Me (version 3), 11.Honey Babe, 12.Penny Pincher,  
13.Let Me Hear You Say (I Love You) , 14.Don't Take It Away, 15.Just Call Me,  
16.That's A Funny Way, 17.Stop, Look & Listen, 18.Send Me No Flowers,  
19.Baby Love alternate (early version), 
+ "Live Live Live" 
20.Introduction/Devil's Den,  
21.When The Lovelight Starts Shining Through His Eyes,
22.A Breath Taking Guy, 23.Your Heart Belongs To Me, 24.Let Me Go The Right Way,  
25.I Am Woman, 26.People, 27.Where Did Our Love Go  

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