●ロックへの旅（第三章）：ダンシング・イン・ザ・ストリート
    （マーサ＆ザ・ヴァンデラス：1964）

うーん、これはもう、最高としか言いようがないですね。もしモータウンのNo.1ソングは
何かと問われた場合、マーヴィン・ゲイの《ホワッツ・ゴーイング・オン》、バレット・
ストロングの《マネー》、テンプテーションズの《マイ・ガール》、スプリームズの《恋
はあせらず》など、人によっていろいろ時代の曲があがると思います。ぼくの場合は誰が
なんと言おうと、このマーサ＆ザ・ヴァンデラスの1964年のヒット《ダンシング・イン・
ザ・ストリート》がNo.1ソングです。その魅力は、分厚い音圧を持つビート。とくに強烈
な重低音のベース（エレクトリックとアップライトの双方を重ねているのか）と、グルー
ヴ・マシーンのようなドラムス。これらのリズム楽器が織り成す躍動感タップリのビート
の魅力にハマってしまうと、そこから抜け出すことは不可能なのではないか。そう信じて
しまいたくなるほど、この曲のビートは強烈です。

《ダンシング・イン・ザ・ストリート》のビートの魅力の虜になってしまった人は、ミュ
ージシャンにも多いようで、モータウンの曲の中では多くのカヴァー・ヴァージョンが発
表されています。有名なところでは、あの1985年のイギリスとアメリカを結んだ一大ミュ
ージック・イベントのライヴ・エイドで披露されたミック・ジャガーとデビッド・ボウィ
ーによるコラボレーション・フィルムや、ローラ・ニーロが発表したＲ＆Ｂのカヴァー・
アルバム『ゴナ・テイク・ア・ミラクル』に収録されたメドレー形式のカヴァー（バック
・コーラスはラベル）があります。またザ・フー、キンクス、グレートフル・デッド、ヴ
ァン・ヘイレンなど、英米双方のロック勢、しかも、どちらかというとヘヴィーさが売り
のバンドがカヴァーしているということも面白いところです。これらの事実は、間違いな
く《ダンシング・イン・ザ・ストリート》の魅力の一端を物語っていると思います。

しかし、どのカヴァー・ヴァージョンも、マーサ＆ザ・ヴァンデラスのオリジナル・ヴァ
ージョンの魅力を超えてはいません。上記以外のシンガーやミュージシャン以外にも本当
に数多くのカヴァーが存在しており、その全てを聴いたわけではありませんが、絶対にオ
リジナルを超えたものは存在しないと断言できます。それほどオリジナル・ヴァージョン
の、とくにドラムスとベースを中心に全ての楽器が巨大なグルーヴ・マシーンとなったよ
うなビート感覚は強烈なのです。多くのミュージシャンが、やってみたくなる気持ちも、
よくわかります。またヴォーカルだけでなく、見落とされがちですがベティ・ケリーとロ
ザリンド・アシュフォードのバック・コーラスの素場らしいこと。さすがにマーヴィン・
ゲイのバックをいくつも務めただけのことはあります。演奏のビートと主役達のヴォイス
、この二つが揃っているのはオリジナル・ヴァージョン以外には存在しないのです。

《 Dancing In The Street 》( Martha And The Vandellas )

Martha & The Vandellas are Martha Reeves(lead vo), Betty Kelly(vo) and Rosalind Ashford(vo) The Funk Brothers Joe Messina(g), Robert White(g), Eddie "Chank" Willis(g), Ivy Jo Hunter(p?), James Jamerson(b), Marvin Gaye(ds), Jack Ashford(per), Henry Cosby(sax), Thomas "Beans" Bowles(sax), Russ Conway(tp), Herbie Williams(tp), Paul Riser(tb), George Bohannon(tb) Written by William "Mickey" Stevenson,Marvin Gaye and Ivy Jo Hunter Produced by William "Mickey" Stevenson Recorded : June 19, 1964 Released : July 21(31?), 1964 Charts : POP#2 Label : Gordy Appears on :The Definitive Collection 1.Come and Get These Memories, 2.(Love Is Like A) Heat Wave, 3.Nowhere to Run, 4.In My Lonely Room, 5.Dancing in the Street, 6.Quicksand, 7.Love (Makes Me Do Foolish Things), 8.Live Wire, 9.I'm Ready for Love, 10.Love Like Yours (Don't Come Knocking Every Day), 11.Wild One, 12.Third Finger, Left Hand, 13.Honey Chile, 14.You've Been in Love Too Long, 15.Jimmy Mack, 16.Love Bug Leave My Heart Alone, 17.Bless You, 18.My Baby Loves Me