●ロックへの旅(第三章):ドゥ・ワ・ディディ・ディディ
    (マンフレッド・マン:1964)

1964年の10月、前月のアニマルズの《ザ・ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン(邦題:
朝日のあたる家)》に続いて、イギリスのグループの曲がまたまた全米No.1になります。
ロンドン出身のグループ、マンフレッド・マンの《ドゥ・ワ・ディディ・ディディ》とい
う曲です。マンフレッド・マンは非常にややこしいグループで、バンドの創始者の1人、
キーボード担当のマンフレッド・マンの名前をそのままグループ名にしていることがまず
ややこしいですが、グループ名もマンフレッド・マン・チャプター・スリーとか、マンフ
レッド・マンズ・アース・バンドなどと変わっていき、音楽性もそれに伴ってR&B指向
からジャズ指向へと変わっていくのです。もともとはジャズをやっていたらしいですが、
《ドゥ・ワ・ディディ・ディディ》は、ブリティッシュ・ビート勢の1グループだった時
代の彼らの勢いが感じられるポップな傑作なのです。

この曲の作詞・作曲は、なんとジェフ・バリーとエリー・グリーンウィッチ。クリスタル
ズの《ダ・ドゥ・ロン・ロン》やロネッツの《ビー・マイ・ベイビー》など、数々の傑作
をフィル・スペクターと共に世に送り出してきたソング・ライター・チームです。どうし
てそのチームが、イギリス出身のまだ名もないグループに曲を書いているのかと思ったら
、なんてことはない《ドゥ・ワ・ディディ・ディディ》は《テル・ヒム》のヒットで有名
な女性3人と男性1人の黒人ヴォーカル・グループ、エキサイターズのカヴァー曲なので
す。試しに歌詞の彼女を彼に変えてみると、当時熱々のカップルだったこのソング・ライ
ター・チームらしい曲になるわけで、ルンルン気分を「ダ・ドゥ・ロン・ロン・ロン」と
か「ドゥ・ワ・ディディ・ディディ、ダン・ディディ・ドゥ」などとポップに表現するの
は、バリー/グリーンウィッチにしかできない技だなぁと妙に感心してしまいます。

とはいえ、そこはジャズ出身で演奏力に定評のあるマンフレッド・マン。単なるポップな
カヴァーに終わらせません。少しジョン・レノンの影響も感じる、ポール・ジョーンズの
擦れ気味のヴォーカルは最高です。マイナー調になる部分での哀感もレノンによく似てお
り、ジョーンズも、エリック・バートンと同様にロック・ポップスの歴史に埋もれた素場
らしいヴォーカリストの1人なのだと深く感じます。ハイライトは、なんといってもエン
ディング部分です。ジョーンズが”もうガマンできない”という感じで「ウォオゥ、イェ
ー」という雄叫びをあげ、アップテンポのロックンロール調のベース・ラインにのせて「
ドゥ・ワ・ディディ・ディディ、ダン・ディディ・ドゥ」の繰り返しに入っていくところ
はたまりません。このエンディングの勢いを持続して、ブリティッシュ・ビート・グルー
プとしてのマンフレッド・マンの勢いはしばらくのあいだ続くことになります。

《 Do Wah Diddy Diddy 》( Manfred Mann )
cover

Manfred Mann are
Manfred Mann(org), Mike Hugg(ds,perc), Mike Vickers(elg,g), Paul Jones(vo),
Tom McGuinness(elb)


Written  by Jeff Barry & Ellie Greenwich
Produced by John Burgess
Recorded  : June  11, 1964
Released  : July  10, 1964(UK)
            August 3, 1964(US)
Charts    : POP#1(UK&US)
Label     : EMI(UK)
            Ascot(US)

Appears on :The Best of Manfred Mann
1.Do Wah Diddy Diddy, 2.Cock-A-Hoop, 3.I've Got My Mojo Working,  
4.Sticks And Stones, 5.5-4-3-2-1, 6.Why Should We Not, 7.I'm Your Kingpin,  
8.Without You, 9.I Put A Spell On You, 10.Hubble Bubble (Toil And Trouble),  
11.Dashing Away With A Smoothing Iron, 12.Sha La La, 
13.I Can't Believe What You Say, 14.The One In The Middle, 15.Watermelon Man,  
16.With God On Our Side, 17.Come Tomorrow, 18.It's Gonna Work Out Fine, 19.She,  
20.Oh No Not My Baby, 21.My Little Red Book, 22.Come Home Baby, 
23.Pretty Flamingo, 24.If You Gotta Go, Go Now,  
25.Tired Of Trying, Bored With Lying, Scared Of Dying, 
26.There's No Living Without Your Loving, 27.You Gave Me Somebody To Love,  
28.5-4-3-2-1 (Ready Steady Go Theme), 29.Do Wah Diddy Diddy (Unedited Version)  

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