●ロックへの旅(第三章):オー、プリティ・ウーマン
    (ロイ・オービソン:1964)

ロイ・オービソンの初期のヒット曲を聴いていると、1970年代に森田健作(俳優・歌手・
政治家)がやっていた青春ドラマの光景が頭の中に浮かんできます。オービソンの初期の
ヒット曲の《クライング》や《イン・ドリームス》などの南国風なアレンジが、どこか海
をイメージさせることもありますが、決定的なのは、森田健作のヒット曲で青春ドラマの
主題歌であった《さらば愛の日々よ》という曲と、オービソンの最初のビッグ・ヒットと
なった1960年の《オンリー・ザ・ロンリー》という曲の雰囲気が、とてもよく似ているた
めです。オービソンのベスト盤などで年代順にヒット曲を聴いてもらうとわかりますが、
初期のオービソンのヒット曲は、いくつかの例外はあるものの、青春映画、ドラマ、ミュ
ージカルなどの主人公が歌うのにピッタリのタイプの曲が多いのです。したがって初期の
ヒット曲だけを聴いていると、ロイ・オービソンとロックは結びつきません。

そこに変化が訪れるのが、1963年のオービソンのトップ・テン・ヒットとなった《ミーン
・ウーマン・ブルース》です。エルヴィスの『ラヴィン・ユー』というアルバムのトップ
を飾っていた曲で、この曲によってオービソンの印象はポップ歌手からロックンローラー
へと変わります。そして、そこに更なる変化が訪れるのが、この《オー、プリティ・ウー
マン》なのです。その変化は、まさに、ロックンロールからロックへの変化です。イント
ロを聴くだけで、誰でも一発でわかります。”タン、タン、タン、タン”と4拍子のアタ
マを刻むドラムスの音。そこに被さってくる必殺のギター。そしてギター、ピアノ、ベー
スによる圧倒的なユニゾン・リフ。後にヴァン・ヘイレンが、よりヘヴィな音でカヴァー
した際にも、このユニゾン・リフのアイディアはそのまま残したことでもわかるとおり、
ロックとしか言いようのない素場らしいイントロなのです。

それで、ふと考えるわけです。どのようにして、この素場らしいイントロのアイディアを
思いついたのだろうと。すぐに思いつくのは、リトル・リチャードの《ルシール》です。
このロックンロールの傑作ナンバー全体を貫くリフは、《オー、プリティ・ウーマン》の
イントロとよく似ています。オービソンは、《ミーン・ウーマン・ブルース》でも《ルシ
ール》を参考にしたと思われるふしがあるので、この推測はそんなに間違ったものではな
いと思います。そして最大の謎は、冒頭のドラムスの”タン、タン、タン、タン”です。
ロック世代には、やがてローリング・ストーンズの《サティスファクション》のブレイク
でお馴染みになる”タン、タン、タン、タン”を、どのようにして思いついたのか。オー
ビソン以前に誰かやっていたのか。それともドラム・サウンドが特徴の”あのグループ”
の音の影響か。その答えは、もう少し探し続けてみたいと思います。

《 Oh, Pretty Woman 》( Roy Orbison )
cover

Roy Orbison

Written  by Roy Orbison and Bill Dees
Released  : August, 1964
Charts    : POP#1
Label     : Monument

Appears on :The Essential Roy Orbison
Disk.1
1.Ooby Dooby, 2.Go! Go! Go!, 3.Rock House, 4.Uptown,
5.Only The Lonely (Know The Way I Feel), 6.Blue Angel, 7.I'm Hurtin', 8.Lana,
9.Love Hurts, 10.Crying, 11.Candy Man, 12.Dream Baby (How Long Must I Dream),
13.The Crowd, 14.Leah, 15.Falling, 16.Working For The Man, 17.Mean Woman Blues,
18.Blue Bayou, 19.Pretty Paper, 20.It's Over
Disk.2  
1.Oh, Pretty Woman, 2.You Got It, 3.She's A Mystery To Me, 4.California Blue,  
5.The Only One, 6.Ride Away, 7.Crawling Back, 8.Best Friend,  
9.Communication Breakdown, 10.Walk On, 11.That Lovin' You Feelin' Again, 
12.Running Scared, 13.In Dreams, 14.A Love So Beautiful, 15.The Comedians,  
16.Claudette, 17.I Drove All Night, 18.Wild Hearts Run Out Of Time,
19.Coming Home, 20.Life Fades Away

Disk1-1,1-2,1-3:Roy Orbison & Teen Kings
Disk2-11:Emmylou Harris With Roy Orbison
Disk2-19:Roy Orbison with Carl Perkins / Johnny Cash / Jerry Lee Lewis
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