●ロックへの旅（第三章）：ビコーズ
    （ザ・デイヴ・クラーク・ファイヴ：1964）

「アー、イイなぁー、たまんないなぁー」と思わず口から出てしまう必殺のイントロとメ
ロディが、デイヴ・クラーク・ファイヴの《ビコーズ》なのです。イメージとしては、映
画「若大将シリーズ」で田中邦衛が演じていた”青大将”のようなバミューダ・ショーツ
にマリン・ブルーのストライプのシャツを着たファッションで、助手席には黒いサングラ
スをかけてネッカチーフを髪に巻いたミニのワン・ピース姿の星由里子のような彼女をの
せて、よく晴れた初夏の国道１３４号線をオープン・カーで稲村ヶ崎、七里ヶ浜、鎌倉高
校前、腰越と、江ノ島方面に走らせているときに聴こえてきそうな曲です（ややこしい、
説明ですみません）。何が言いたいのかというと、ひとことで言えば”夏にピッタリ”。
それほど、これからの季節にピッタリのメロディな曲が、デイヴ・クラーク・ファイブの
1964年のヒット《ビコーズ》なのです。

デイヴ・クラーク・ファイヴは、ブリティッシュ・インヴェイジョンの一翼を担ったグル
ープで、リーダーのデイヴ・クラークのドラムスを中心としたラウドなサウンドはおおく
の意外なアメリカのミュージシャン（例えば、ブルース・スプリングスティーン、ヴァン
・ヘイレン、キッス、チープ・トリックなど）に影響を与えたといわれています。ヴァン
・ヘイレンやキッスなどという名前が並ぶとおり、デイヴ・クラーク・ファイヴの初期の
ヒット曲《グラッド・オール・オーヴァー》、《ドゥ・ユー・ラヴ・ミー》（モータウン
のコントゥアーズのカヴァー）は、総じてクラークの激しいドラムスから始まるのですが
、《ビコーズ》は違います。初期の激しいヒット曲では、当時としてはアニマルズのエリ
ック・バートンと並んでソウルフルなヴォーカルを聴かせていたマイク・スミスの弾くオ
ルガン。このオルガンこそが、《ビコーズ》を初夏にピッタリの曲にしているのです。

電子オルガン特有の響きにのせた、イントロの”テテテッテレ”というメロディ。どこか
ワルター・ワンダレイ（《サマー・サンバ》のヒットで有名なオルガン奏者）のサウンド
を想起させ、冒頭に記したような非現実的な初夏のイメージをあおります。そして必殺の
Ｇ、Ｇ＋、Ｇ６、Ｇ７という、キーに対し５度の音が半音づつあがっていくコード進行。
このポップスのクリシェ（繰り返し）でよく使われる半音づつのコード進行。このコード
進行に、これだけ見事にマッチしたメロディをのせたグループは、デイヴ・クラーク・フ
ァイヴがはじめてではないでしょうか。《ビコーズ》のメロディは、まるで風にゆれるロ
ング・ヘアーからただよう優しい香りのようなメロディなのです。なんどでも聴きたくな
る、ロック＆ポップス史でも屈指のメロディではないでしょうか。いまどれだけの人に聴
かれているのかわかりませんが、もっともっと広く知られるべき名曲だと思います。

《 Because 》( The Dave Clark Five )

The Dave Clark Five are Dave Clark(ds,vo), Mike Smith(vo,org,p), Lenny Davidson(g), Rick Huxley(elb) and Denny Payton (sax, harmonica, g) Written by: Dave Clark Produced : Dave Clark Charts : POP#3 Label : Columbia/Epic Appears on :The Dave Clark Five The Hits 1.Do You Love Me, 2.Glad All Over, 3.Bits And Pieces, 4.Can't You See That's She's Mine, 5.Everybody Knows (I Still Love You), 6.Don't Let Me Down, 7.Any Way You Want It, 8.Wild Weekend, 9.Catch Us If You Can, 10.Because, 11.I Like It Like That, 12.Reelin' And Rockin', 13.Over And Over, 14.Come Home, 15.You Got What It Takes, 16.Try Too Hard, 17.Everybody Knows, 18.I'll Be Your's My Love, 19.Nineteen Days, 20.Look Before You Leap, 21.Til The Right One Come Along, 22.All Night Long, 23.Good Old Rock 'n' Roll Medley, 24.Sha Na Na Hey Kiss Him Goodbye, 25.Here Come Summer, 26.Put A Little Love In Your Heart, 27.Universal Love