●ロックへの旅(第三章):ザ・ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン
    (ザ・アニマルズ:1964)

ぼくがロックに目覚めた1970年代半ば以降のロック系の雑誌では、ブリティッシュ・イン
ヴェイジョンを担った数多くのグループ(例えばデイヴ・クラーク・ファイヴなど)は、
ビートルズとローリング・ストーンズを除いてまったくといってよいほど取り上げられる
ことはありませんでした(主にぼくらの世代をターゲットにしていると思われる”大人の
ロック”系雑誌でも、その傾向は変わりません)。そのため1960年代前半生まれのぼくら
の世代は、イギリス出身のグループとして、ビートルズ、ピーター&ゴードンに続く全米
No.1ヒットをはなったアニマルズについて、ロック的な興味を持つことはなかったのでは
ないかと思います。ストーンズやレッド・ツェッペリンのLPを買っているやつは幾人も
いましたが、アニマルズを持っている友人など少なくともぼくの周りには1人もいません
でした。おそらく、ぼくと同世代の人はほぼ同じなのではないかと思います。

しかし、アニマルズのヒット曲《ザ・ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン(邦題:朝日
のあたる家)》や《ドント・レット・ミー・ビー・ミスアンダーストゥッド(邦題:悲し
き願い)》は、当時のAMラジオで頻繁にかかった記憶があります。したがって、ぼくは
アニマルズにロック的な興味を持つ以前に、彼らの曲を身体で憶えてしまっていました。
とくにマイナー調のギターのアルペジオ(実際はギターだけでなく、ベースが低音を補強
している)ではじまる《ザ・ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン》は、中学生ではじめ
てギターを手にしたときに、知らず知らずのうちに似た曲を作ってしまったほどです。物
哀しいコード進行、しかし後半になるにつれて盛り上がっていく昂揚感。そのアニマルズ
の素場らしいパフォーマンスが、ラジオによって小学生のぼくに刻みこまれ、ギターとい
う表現手段を与えられた中学生のぼくの中からでてきたのだと思います。

無意識のうちにぼくが影響を受けたアニマルズの《ザ・ハウス・オブ・ザ・ライジング・
サン》は、幾人かの信頼できる音楽の語りての方が指摘しているとおり、もっともっとロ
ック的に注目されてよいパフォーマンスです。エリック・バートンの20代前半というのが
信じられないほど素晴らしくソウルフルなヴォーカルと、それをプッシュするプライスの
オルガンを中心としたグルーヴする演奏は、当時も今も間違いなく第一級のパフォーマン
スです。実際に当時のアニマルズの演奏力は、少なくともストーンズやヤードバーズより
は格段に上であり、《ブーン・ブーン》などの彼らのカヴァー演奏を聴けば、彼らがいか
に凄いR&Bバンドだったかが誰にでもたちどころにわかるはずです。アニマルズの《ザ
・ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン》によって自分が初めて本物のR&Bに出会って
いたのだと、「大人のロック」が多少わかるようになったいま、ぼくは深く思うのです。

《 House Of The Rising Sun 》( The Animals )
cover

The Animals are
Eric Burdon(vo), Alan Price(org), Chas Chandler(elb), Hilton Valentine(elg), John Steel(ds)

Written  by Trad., arranged Alan Price
Produced by Mickie Most
Recorded  : Febuary? May 18? , 1964
Released  : June,   1964(UK)
            August, 1964(US)
Charts    : POP#1(US)
Label     : Columbia(UK)
            MGM(US) 

Appears on : The Complete Animals
Disk1:
1.Boom Boom, 2.Talkin' 'Bout You, 3.Blue Feeling, 4.Dimples,
5.Baby Let Me Take You Home, 6.Gonna Send You Back to Walker,  
7.Baby What's Wrong, 8.House of the Rising Sun, 9.F-E-E-L,
10.I'm Mad Again, 11.Night Time Is the Right Time, 12.Around and Around,  
13.I'm in Love Again, 14.Bury My Body, 15.She Said Yeah, 16.I'm Crying,
17.Take It Easy, 18.Story of Bo Diddley, 19.Girl Can't Help It, 
20.I've Been Around  
Disk2:
1.Memphis Tennessee, 2.Don't Let Me Be Misunderstood, 3.Club A Go-Go,  
4.Roadrunner, 5.Hallelujah, I Love Her So, 6.Don't Want Much,  
7.I Believe to My Soul, 8.Let the Good Times Roll, 9.Mess Around,  
10.How You've Changed, 11.I Ain't Got You, 12.Roberta, 
13.Bright Lights, Big City, 14.Worried Life Blues, 15.Bring It on Home to Me,  
16.For Miss Caulker, 17.I Can't Believe It, 18.We Gotta Get Out of This Place,
19.It's My Life, 20.I'm Gonna Change the World  
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