●ロックへの旅:ロンリー・ティアドロップス
    (ジャッキー・ウィルソン:1959)

歌とダンスを交えたパフォーマーの先駆者としてマイケル・ジャクソンが賞賛の言葉を送
り、その熱狂的なライヴ・パフォーマンスに比類しうるのはジェームズ・ブラウンしかい
ないと言われ、強烈なセックス・アピールではサム・クックと同等の位置にいたと言われ
る男。それが1950年代後半から1960年代にかけて活躍したR&Bシンガー、ジャッキー・
ウィルソンです。しかしウィルソンの名前は、マイケル・ジャクソンやジェームズ・ブラ
ウン、そして近年は傑作《ア・チェンジ・イジ・ゴナ・カム》で評価の高まったサム・ク
ックと比較すると、まったく知られていないのに等しいのではないかと思います。R&B
の世界に奥深く進んでいかないとウィルソンの存在に気がつかないのは、彼がスタッフに
恵まれなかったからとか、自身の底知れぬ才能を開花しきれなかったからだなどと言われ
ていますが、結局は楽曲に恵まれなかったことが大きいと思うのです。

《ロンリー・ティアドロップス》は、そんなウィルソンの最初のトップ10ヒット(R&B
チャートでは7週連続1位)となった曲です。言うまでもなくウィルソンの代表作のひと
つですが、《ユー・センド・ミー》や《オンリー・シックスティーン》に代表される軽や
かで甘酸っぱいサム・クックの世界や、「ゲロッパ!」の掛け声でお馴染みのジェムーズ
・ブラウンの《セックス・マシーン》や、マイケル・ジャクソンの大ヒット曲の《ビート
・イット》や《スリラー》のような、音楽史的にみて確固たる位置を占めるようなタイプ
の曲ではありません。代表曲とはいうものの、”ミスター・エキサイトメント”と呼ばれ
たウィルソンのパフォーマーとしての真髄は、《ロンリー・ティアドロップス》からは伝
わってこないのです。それはヒット曲を歌うウィルソンの映像を見ても同様で、ウィルソ
ンの本当の凄さを現代に生きる我々が体感するのは、もう不可能なことなのでしょう。

それでは《ロンリー・ティアドロップス》を聴いてなにを感じるかというと、この曲を作
った作家陣の先見性のようなものです。サウンドや曲のメロディは、この曲が発表された
年に設立されたアルドン・ミュージックの若き白人作家陣(例えば、ジェリー・ゴフィン
&キャロル・キング、ニール・セダカなど)の60年代初期の作風を思わせます。一言でい
うとポップ。そのようなサウンドを、1958年時点で作っていることに驚かされるのです。
しかし作家陣の1人の名をみれば、その先見性に納得することができます。ベリー・ゴー
ディ・Jr。60年代にヒット曲を量産したモータウン・レコードを設立するその人です。
ゴーディの実際の貢献度はどの程度かわかりませんが、彼がポップ・チャートでトップ10
ヒットとなる《ロンリー・ティアドロップス》という作品づくりに関わっていたことは、
その後の黒人による白人マーケット開拓の上で大きな意味を持つような気がするのです。

《 Lonely Teardrops 》( Jackie Wilson )
cover

Jackie Wilson(vo)

Produced by Carl Davis
Written  by Berry Gordy & Tyran Carlo (Billy Davis)
Recorded    1958
Released    1958
Charts      POP#7, R&B#1
Label       Brunswick

Appears on :The Very Best Of Jackie Wilson
1.Reet Petite (The Finest Girl You Ever Want to Meet) , 2.Lonely Teardrops,  
3.To Be Loved, 4.That's Why (I Love You So), 5.I'll Be Satisfied,  
6.Doggin' Around, 7.Lonely Life, 8.Night, 9.You Better Know It, 
10.Talk That Talk, 11.Am I the Man, 12.I'm Comin' on Back to You,  
13.Woman, a Lover, a Friend, 14.Baby Workout, 
15.Squeeze Her - Tease Her (But Love Her) , 16.No Pity (In the Naked City),  
17.Whispers (Gettin' Louder) , 18.I Get the Sweetest Feeling,  
19.Since You Showed Me How to Be Happy, 20.Love Is Funny That Way,  
21.Just Be Sincere, 22.(Your Love Keeps Lifting Me) Higher and Higher,  
23.You Got Me Walking, 24.(I Can Feel Those Vibrations) This Love Is Real  
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