●ロックへの旅(第三章):アイム・ソー・プラウド
    (ザ・インプレッションズ:1964)

ビートルズが全米チャートを席巻した1964年は、ニュー・ソウルの旗手の1人としていま
も多くのミュージシャンから尊敬を集めているカーティス・メイフィールドがかつて在籍
していたグループのインプレッションズが、ピークにあった年としても記憶しておいて良
いと思います。前年のトップ10ヒットの《イッツ・オールライト》にはじまり、1964年
には《トーキング・アバウト・ベイビー》、《アイム・ソー・プラウド》、《キープ・オ
ン・プッシング》、《ユー・マスト・ビリーヴ・ミー》、《エイメン》と5曲ものヒット
をとばしています。そして1965年に最初にヒットするのが、MTVが流行していた80年代
にジェフ・ベック&ロッド・スチュワートもカヴァーした名曲《ピープル・ゲット・レデ
ィ》ですから、1964年という年がインプレッションズのピークのど真ん中にあったことが
わかると思います。

どの曲も歌が大好きな黒人青年達の楽しんでいる姿が見えるような曲ばかりですが、《ア
イム・ソー・プラウド》は違います。これがもう情熱的で素場らしい曲なのです。ぼくが
この曲を知ったのは、ギタリストのジェフ・ベックが、元ヴァニラ・ファッジのベーシス
トのティム・ボガートとドラマーのカーマイン・アピスと組んだベック、ボガード&アピ
スのスタジオ録音盤『ベック、ボガート&アピス』をはじめて聴いたときでした。アルバ
ムの最後に収録されていたのが、《アイム・ソー・プラウド》のカヴァーだったのです。
いま聴きなおしてみると、エンディングなどでロック的な演奏になってはいるものの、基
本的にはインプレッションズのヴァージョンに忠実なカヴァーといえます。インプレッシ
ョンズは、ギター、ベース、ドラムスがサウンドの基本といえるグループなので、オリジ
ナル・ヴァージョンそのものがロックな要素を持っているのだと思います。

その《アイム・ソー・プラウド》は、グロッケンが印象的なイントロではじまります。ぼ
くはこの曲が、ジミ・ヘンドリックスが名曲《リトル・ウィング》にグロッケンを入れる
インスピレーションのもとになったのではないかと推測しているのです。そのグロッケン
のイントロに続き、優しさに満ちた声でメイフィールドが歌い始めます。「世界のなによ
りも可愛いい、ボクはそれほどキミを誇りに思っているよ」と、とても日本語では歌えな
い歌詞ですが、優しさに満ちた声でメイフィールドが歌うと宗教的な癒しにも似た感覚に
なり、なぜだか涙腺を刺激されてしまうのです。歌詞の内容は生まれた子供へのメッセー
ジとも、恋人や妻への告白ともとれますが、ぼくはその両方ではないかと思っています。
公民権運動が盛んだった時代に、生まれた子供や恋人に「キミを誇りに思う」と優しく歌
いかけたメイフィールドは、なんて素敵なミュージシャンなのだろうと思うのです。

《 I'm So Proud 》( The Impressions )
cover

THE INPRESSIONS are
Samuel Gooden, Fred Cash & Curtis Mayfield

Written  : Curtis Mayfield
Produced : Johnny Pate
Released : March 15, 1964
Charts   : POP#14
Label    : ABC

Appears on :Ultimate Collection The Impressions
1.For Your Precious Love, 2.Gypsy Woman, 3.It's All Right, 
4.Talking About My Baby, 5.I'm So Proud, 6.Keep on Pushing, 7.Amen,
8.You Must Believe Me, 9.People Get Ready, 10.Woman's Got Soul,
11.Meeting Over Yonder, 12.You've Been Cheatin', 13.Man, Oh Man, 
14.We're a Winner, 15.I Loved and I Lost, 16.Fool for You, 
17.This Is My Country, 18.Choice of Colors,
19.Finally Got Myself Together (I'm a Changed Man), 20.Same Thing It Took

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