●ロックへの旅(第三章):ラグ・ドール
    (ザ・フォー・シーズンズ:1964)

「あー、イイ曲だなー」と、いつも繰り返して聴いてしまうのが、フォー・シーズンズの
《ラグ・ドール(邦題:悲しきラグ・ドール》です。もうなにも言うことなし。だまって
聴けばそれでよしと言いたいところですが、それでは三行で終わってしまいます。フォー
・シーズンズのヒット曲というと1962年の《シェリー》が有名ですが、最高傑作はこの《
ラグ・ドール》なのです。その証拠に、グループとしては久しぶりの全米No.1ヒットを記
録しています。1964年の全米No.1というのは、それまでの全米No.1とは意味が違います。
1964年の全米チャートにおいて、アメリカの男性グループで1位を獲っているのは《ラグ
・ドール》とビーチ・ボーイズの《アイ・ゲット・アラウンド》だけなのです。ビートル
ズのアメリカ訪問後で、かつイギリスのグループが大挙してチャートに押し寄せてきてい
る中での全米No.1ですから、「よく頑張った、感動した」という立派な記録なのです。

イントロは、エレクトリック・ベースの低音を中心とした”ズン、ズ、ズン”という必殺
のリズムで始ります。なぜ必殺なのか。このリズムをバス・ドラムに置き換えればたちど
ころにわかります。”ズン、ズ、ズン”→”ドン、ド、ドン”。そうです、フィル・スペ
クターがプロデュースしたロネッツの(というよりポップスの)最高傑作《ビー・マイ・
ベイビー》のリズムと同じなのです。このリズムを敢えて引用したところに、フォー・シ
ーズンズ側の《ラグ・ドール》にかける意気込みが伝わってきます。そしてそこに、厳か
なコーラスが入ってきます。フォー・シーズンズのコーラス・ワークは、フランキー・ヴ
ァリのファルセットの使い方によって”お笑い”に落ちていく場合もなきにしもあらずな
のですが、《ラグ・ドール》にはそんな”お笑い”の要素はまったくありません。風格す
ら漂っています。このコーラスが、曲全体に魅力的な厚みをつくりだしているのです。

コーラス以外のサウンドは、当時のチャートを賑わすグループの編成と同じくバンド・サ
ウンドです。グロッケンとタンバリンを効果的に使っているところに、「他のグループと
は違うイイ曲を作ろう」という彼らの気合を感じます。そして曲は、ビリー・ジョエルの
大ヒット《素顔のままで》に引用された歌詞「アイ・ラヴ・ユー、ジャスト・ザ・ウェイ
・ユー・アー」に続く最終部分のコーラスへ。この上昇するコーラスこそ、《ラグ・ドー
ル》のハイライトです。ここを何回も聴きたくなってしまうのです。最終部分で上昇する
コーラスは、ビーチ・ボーイズが《ファン・ファン・ファン》で使っていました。それを
敢えて取り入れたところに、フォー・シーズンズの自信が伺えます。彼らが、当時のチャ
ートを賑わしていたライバル・グループに真正面から勝負を挑んでNo.1を獲得した曲。そ
れが《ラグ・ドール》ではないでしょうか。だからこそ最高傑作の名に相応しいのです。

《 Rag Doll 》( The 4 Seasons )
cover

The 4 Seasons : 
Frankie Valli(vo), Bob Gaudio(key,vo), Tommy DeVito(elg,vo), Nick Massi(elb,vo)

Written  by : Bob Gaudio & Bob Crewe
Produced by : Bob Crewe
Released    : June, 1964
Charts      : POP#1
Label       : Philips

Appears on :In Season : The Frankie Valli and the 4 Seasons Anthology

1.Sherry, 2.Big Girls Don't Cry, 3.Connie-O, 4.Peanuts,
5.Alone (Why Must I Be Alone), 6.Walk Like a Man, 7.Ain't That a Shame,
8.Candy Girl, 9.Marlena, 10.Stay, 11.Little Boy (In Grown Up Clothes),
12.Dawn (Go Away), 13.Silence Is Golden, 14.Ronnie, 15.Rag Doll, 
16.Save It for Me, 17.Big Man in Town, 18.Bye, Bye, Baby (Baby Goodbye),
19.Betrayed, 20.Toy Soldier, 21.Girl Come Running, 
22.Let's Hang On (To What We've Got) , 23.Don't Think Twice, It's All Right,
24.The Sun Ain't Gonna Shine (Anymore), 25.(You're Gonna) Hurt Yourself,
26.Working My Way Back to You, 27.You're Ready Now,
28.Opus 17 (Don't You Worry 'Bout Me), 29.I've Got You Under My Skin

1.Can't Take My Eyes off You, 2.C'mon Marianne, 3.Proud One, 
4.Tell It to the Rain, 5.Beggin', 6.Lonesome Rad, 7.I Make a Fool of Myself,
8.Watch the Flowers Grow, 9.To Give (The Reason I Life), 
10.Will You Love Me Tomorrow, 11.Idaho,
12.The Girl I'll Never Know (Angels Never Fly This Low),
13.And That Reminds Me (My Heart Reminds Me), 14.Patch Of Blue,
15.My Eyes Adored You, 16.Swearin' To God, 17.Who Loves You,
18.Our Day Will Come, 19.December, 1963 (Oh, What A Night), 20.Silver Star,
21.Fallen Angel, 22.Grease

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