●ロックへの旅(第三章):マイ・ガイ
    (メアリー・ウェルズ:1964)

ビートルズやデイヴ・クラーク・ファイヴといったブリティッシュ・インヴェイジョンの
嵐がヒット・チャートを吹き荒れるなか、それに負けずにヒットを出していたアメリカ勢
のひとつが、黒人社長ベリー・ゴーディ・ジュニアが”自動車産業の盛んな街”のデトロ
イトで経営していたレコード会社のモータウンです。スモーキー・ロビンソン&ミラクル
ズ、リトル・スティーヴィー・ワンダー、テンプテーションズ、スプリームスなど、60年
代のヒット・チャートを彩るスター達を数々輩出したモータウンですが、そのモータウン
がビートルズのアメリカ上陸後に放った初の全米No.1ソングが、黒人女性歌手メアリー・
ウェルズが歌った《マイ・ガイ》です。《マイ・ガイ》は、マーヴェレッツの《プリーズ
・ミスター・ポストマン》、リトル・スティーヴィー・ワンダーの《フィンガー・ティッ
プス・パート2》に続いて、モータウンに3度目の全米No.1をもたらしました。

《マイ・ガイ》を創り、かつプロデュースを担当したのは、優れたシンガー・ソング・ラ
イターでもあったスモーキー・ロビンソンです。ウェルズのプロデュースを任されたロビ
ンソンは、その洗練されたセンスの楽曲でたちまちウェルズをポップ・チャートのトップ
・テン圏内に押し上げました。そして《マイ・ガイ》による決定的な成功によって、ウェ
ルズは初期モータウンのスターになります。ウェルズのことはビートルズもお気に入りだ
ったようで、彼らの1964年末の全英ツァーの際に、ウェルズはスペシャル・ゲスト扱いで
ツァーに帯同しているほどです。当初はソング・ライターを目指していたというウェルズ
がそれほどのスターになれたのは、ひとえにロビンソンの提供した優れた楽曲があっての
ことでしょう。事実、《マイ・ガイ》のヒットの後にウェルズは他のレコード会社に移籍
しますが、再び《マイ・ガイ》のようなヒットを出すには至っていません。

ある意味でウェルズという歌手の命運を左右してしまったといえる《マイ・ガイ》ですが
、指パッチンや手拍子に感じることのできるゴスペルっぽいリズム感や、最後にベースを
バックに歌うところなどにあきらかなジャズ・フィーリングなど、よく聴くとブラック・
ミュージックのエッセンスが散りばめられている曲です。それにも関わらず曲全体を覆っ
ているのは、見事に洗練されたポップ感覚という不思議なフィーリングをもったなの曲で
す。これこそが、その後モータウンが生みだしていくヒット曲を貫く特徴であり、その意
味で《マイ・ガイ》は、ホランド、ドジャー&ホランド(後にスプリームスやフォー・ト
ップスでヒットを連発する作家チーム)の最初のコラボレーションとなったマーサ&ザ・
ヴァンデラスの《カム・アンド・ゲット・ディーズ・メモリーズ》と共にモータウン・サ
ウンドを決定づけた曲といってもよいと僕は思っているのです。

《 My Guy 》( Mary Wells )
cover

Mary Wells(vo)

Instrumentation by The Funk Brothers:
Earl Van Dyke(org), Johnny Griffith(p), Eddie Willis(g), Robert White(g),
James Jamerson(b), Benny Benjamin(ds), Dave Hamilton?(vib),
Herbert Williams(tp), Russell Conway(tp), Paul Riser(tb), George Bohannon(tb)
The Andantes(Jackie Hicks, Marlene Barrow, and Louvain Demps)(back-vo)

Written  by: Smokey Robinson
Produced   : Smokey Robinson
Recorded   : 1964
Released   : March 13, 1964
Charts     : POP#1
Label      : Motown

Appears on :The Difinitive Collection
1.My Guy, 2.You Beat Me to the Punch, 3.Two Lovers, 4.Your Old Stand By,
5.What's Easy for Two Is Hard for One, 6.Operator, 7.Laughing Boy,
8.Once Upon a Time, 9.I Don't Want to Take a Chance, 10.One Who Really Loves You,  
11.You Lost the Sweetest Boy, 12.Old Love (Let's Try Again),  
13.Two Wrongs Don't Make a Right, 14.What Love Has Joined Together,  
15.Oh Little Boy (What Did You Do to Me), 16.What's the Matter with You Baby,  
17.Whisper You Love Me Boy, 18.Bye Bye Baby  

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