●ロックへの旅(第三章):デッド・マンズ・カーヴ
    (ジャン&ディーン:1964)

ファンファーレのようなイントロに導かれて始まるのが、ジャン&ディーンの1964年5月
のヒット曲《デッド・マンズ・カーヴ(邦題:危険なカーヴ)》です。前作のシングル・
ヒット《ドラッグ・シティ》に続く車をテーマにした作品で、オリジナル・ヴァージョン
はアルバム『ドラッグ・シティ』の収録曲です。つまり《デッド・マンズ・カーヴ》は、
一般的に言うところの”最新アルバムからの2曲目のシングル・カット”という位置付け
の曲にあたります。車がフル・スピードで走り回るような《ドラッグ・シティ》とは異な
り、《デッド・マンズ・カーヴ》はゆったりとしたミドル・テンポの曲です。重々しいド
ラムスと”ジャジャジャジャ、ジャジャジャジャ”というイントロ、および歌に入ってか
らの分厚い音像は、明らかにフィル・スペクターが創りあげたロネッツの傑作《ビー・マ
イ・ベイビー》を意識したものと思われます。

このことから、同じくロネッツの《ビー・マイ・ベイビー》を下敷きしたビーチ・ボーイ
ズの傑作《ドント・ウォリー・ベイビー》と《デッド・マンズ・カーヴ》の関係について
面白いことが見えてきます。まず歌詞ですが、《デッド・マンズ・カーヴ》は”危険なカ
ーヴまでのレースを挑まれた若者”について、対する《ドント・ウォリー・ベイビー》は
”カー・レースに行く不安を励ましてくれる彼女”についてと、内容に共通性を見出すこ
とができます。なにより《ドント・ウォリー・ベイビー》を創ったロジャー・クリスチャ
ンとブライアン・ウィルソンは、《デッド・マンズ・カーヴ》の作家でもあるのです。上
記の2点の共通性が彼らのなかで偶然に生まれたと考えるほうが、不自然なきがします。
《デッド・マンズ・カーヴ》の録音が1963年の12月、《ドント・ウォリー・ベイビー》は
1964年の2月ですので、時系列的にも関連性を裏付けているのではないでしょうか。

また当時のブライアン・ウィルソンが、ジャン&ディーンのジャン・ベリーのスタジオ技
術に大きな影響を受けたことは有名な話ですが、《デッド・マンズ・カーヴ》にはそれを
裏付けるようなエピソードがあります。プロデューサーでもあるジャン・ベリーは、《デ
ッド・マンズ・カーヴ》のシングル化にあたり『ドラッグ・シティ』収録のヴァージョン
を使用せずに録音しなおしています(2つのヴァージョンは歌詞も異なる)。再録音され
たシングル・ヴァージョンには、印象的な”交通事故のSE”が加えられました。前作の
《ドラッグ・シティ》にもSEは使われていましたが、《デッド・マンズ・カーヴ》のほ
うがより大胆な使い方です。ブライアン・ウィルソンも、ビーチ・ボーイズの作品でかな
り大胆にSEを使うようになっていきますが、おそらくジャン・ベリーとの作業の経験が
その根底にあったのではないかと思います。

《 Dead Man's Curve 》( Jan & Dean )
cover

Jan & Dean : 
Jan Berry and Dean Torrence

Written  by: Jan Berry, Brian Wilson, Roger Christian and Artie Kornfeld
Produced by: Jan Berry
Recorded   : December 4, 1963
Released   : Feburury 7, 1964
Charts     : POP#8(US)
Label      : Liberty

Appears on :The Complete Liberty Singles 
Disk1:
1.Sunday Kind of Love, 2.Poor Little Puppet, 3.Tennessee,  
4.Your Heart Has Changed Its Mind, 5.My Favorite Dream, 6.Who Put the Bomp,  
7.Frosty (The Snow Man), 8.She's Still Talking Baby Talk, 9.Linda,
10.When I Learn How to Cry, 11.Surf City, 12.She's My Summer Girl,  
13.Honolulu Lulu, 14.Someday (You'll Go Walking By), 15.Drag City,
16.Schlock Rod, Pt.1, 17.Dead Man's Curve, 18.New Girl in School,  
19.Little Old Lady (From Pasadena), 20.My Mighty G.T.O. 
Disk2:
1.Ride the Wild Surf, 
2.Anaheim, Azuza & Cucamonga Sewing Circle, Book Review and Timing Associ,
3.Sidewalk Surfin', 4.When It's Over, 
5.(Here They Come) From All Over the World, 6.Freeway Flyer,  
7.You Really Know How to Hurt a Guy, 8.It's as Easy as 1, 2, 3, 9.I Found a Girl,
10.It's a Shame to Say Goodbye, 11.Beginning from an End, 12.Folk City, 
13.Batman, 14.Bucket 'T', 15.Norwegian Wood (This Bird Has Flown),
16.Popsicle, 17.Fiddle Around, 18.Surfer's Dream,  
19.School Day (Ring! Ring! Goes the Bell), 20.Submarine Races,  
21.Universal Coward, 22.I Can't Wait to Love You

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