●ロックへの旅（第三章）：ビット・アンド・ピーセス
    （デイヴ・クラーク・ファイヴ：1964）

ビートルズのヒット・チャート上でのアメリカ制覇に続いたのは、ローリング・ストーン
ズではなく、いまは殆ど話題に上ることのないデイヴ・クラーク・ファイヴです。初のト
ップ１０シングルの《グラッド・オール・オーヴァー》がヒット・チャートでのピーク（
６位）を記録したのが1964年の４月末。その翌週には、早くも次のシングルがチャートで
の最高位（４位）を記録しています。そのシングル曲《ビット・アンド・ピーセス》は、
前曲の《グラッド・オール・オーヴァー》より、もっと強烈なドラムスのサウンドで始ま
っています。サウンドが強烈な理由は、ドラムスだけではなくフット・ストンピング（足
で床をたたくこと）の音も入っているからです。このため《ビット・アンド・ピーセス》
には、ライブ会場などでこの曲をやると、観客が一斉にフット・ストンピングを始めるの
で床が抜けそうになった（抜けた？）という伝説さえあります。

伝説の真偽をわざわざ確かめてみようとまでは思いませんが、確かにその伝説が真実であ
るかのようなパワーが《ビット・アンド・ピーセス》にはあります。この曲を聴いている
と、曲に合わせて一緒に叫びながらフット・ストンピングをしたくなってしまうのです。
同時に、女の子達の「キャー！」という黄色い叫び声も聞こえてくるようです。ガレージ
・ロックやパンク・ロックが出てくる前の、ロックンロールが持っている猥雑さがこの曲
にはあるのです。当時ヒットしていた曲で、いやアルバムに収録された曲を含めても、こ
れだけのパワーあるいは喧しさを感じさせる曲というのは他には思いつきません。同じく
らいのパワーを感じさせるのは、彼らもカヴァーしたモータウンのコントゥアーズの《ド
ゥ・ユー・ラヴ・ミー》か、「牧師になる」といって引退する前のリトル・リチャードく
らいではないでしょうか。

しかしデイヴ・クラーク・ファイヴが面白いのは、喧しいだけではなくポップさがあるこ
とです。彼らの場合、ポップさは本質的に捨てきれないものといったほうが良いかも知れ
ません。デイヴ・クラーク・ファイヴの喧しさはマイク・スミスのヘヴィーなヴォーカル
によるところが大だと思いますが、そこにいかにもイギリスのバンドっぽい”元気いっぱ
いで若さハツラツ”のコーラスと切れのいいフェンダーのギター・サウンドが加わると、
ヘヴィー＆ポップなデイヴ・クラーク・ファイヴならではのサウンドが生まれるのです。
《ビット・アンド・ピーセス》は、そのデイヴ・クラーク・ファイヴならではの魅力が如
実に表れている曲だと思います。彼ら以上に、この曲を上手く演奏できるグループはいな
いでしょう。ヴァン・ヘイレンやキッスなど、ヘヴィだけどポップな魅力も持っているグ
ループから彼らが支持されるのも頷ける気がします。

《 Bits And Pieces 》( The Dave Clark Five )

Dave Clark Five are Dave Clark(ds,vo), Mike Smith(vo,org,p), Lenny Davidson(g), Rick Huxley(elb) and Denny Payton (sax, harmonica, g) Written by: Dave Clark & Mike Smith Produced : Dave Clark Released : February, 1964 Charts : POP#4 Label : Columbia/Epic Appears on :The Dave Clark Five The Hits 1.Do You Love Me, 2.Glad All Over, 3.Bits And Pieces, 4.Can't You See That's She's Mine, 5.Everybody Knows (I Still Love You), 6.Don't Let Me Down, 7.Any Way You Want It, 8.Wild Weekend, 9.Catch Us If You Can, 10.Because, 11.I Like It Like That, 12.Reelin' And Rockin', 13.Over And Over, 14.Come Home, 15.You Got What It Takes, 16.Try Too Hard, 17.Everybody Knows, 18.I'll Be Your's My Love, 19.Nineteen Days, 20.Look Before You Leap, 21.Til The Right One Come Along, 22.All Night Long, 23.Good Old Rock 'n' Roll Medley, 24.Sha Na Na Hey Kiss Him Goodbye, 25.Here Come Summer, 26.Put A Little Love In Your Heart, 27.Universal Love