●ロックへの旅（第三章）：グラッド・オール・オーヴァー
    （デイヴ・クラーク・ファイヴ：1964）

”タタタ、ドン、ドン、ドン、ドン”というヘヴィーなドラムスの音ではじまるのが、デ
イヴ・クラーク・ファイヴの1964年のヒット曲《グラッド・オール・オーヴァー》です。
デイヴ・クラーク・ファイヴは、そのグループ名のとおりリーダーのデイヴ・クラークを
中心としたイギリス出身の５人組のグループで、ビートルズが扉を開けたアメリカのチャ
ートでの数々のヒット曲により、ロックの歴史にその名を深く刻み込んでいます。現在で
は、ビートルズの次にくるイギリスのバンドといえばローリング・ストーンズの名があが
ることと思いますが、1964年時点では間違いなく彼らがその位置を占めていたことでしょ
う。現在ではオリジナル・アルバムのＣＤ化が行われていないこともあり（なんでも権利
を持っている当のデイヴ・クラーク自身が、アルバムのＣＤ化を認可しないそうです）、
リアルタイムで聴いた世代の人を除いて、殆ど忘れさられた存在になっているようです。

ぼくもリアルタイム世代ではないので、デイヴ・クラーク・ファイヴの音楽を聴いたのは
ずいぶんと後になってからのことでした。そのサウンドの印象はというと、とにかく元気
でパワフルです。音楽がキラキラと、特有の輝きを放っています。その代表的な曲といえ
るのが、ビートルズに次ぐイギリス出身グループの全米トップ10ヒットとなった《グラッ
ド・オール・オーヴァー》（ビートルズも演奏しているカール・パーキンスの曲とは同名
異曲）なのです。《グラッド・オール・オーヴァー》が、元気で、パワフルで、キラキラ
しているのは、デイヴ・クラーク・ファイヴというグループの楽器編成にあると思ってい
ます。彼らの楽器編成は、その後のロックを形づくっていくギター中心の編成ではありま
せん。デイヴ・クラーク・ファイヴは、もちろんギタリストもいるのですが、オルガンお
よびサックスが入った編成なのです。

Ｒ＆Ｂバンドによくあるこの編成こそが、独特なデイヴ・クラーク・ファイヴのサウンド
を形作っているものといえます。《グラッド・オール・オーヴァー》は、ドラムスとベー
スがヘヴィーなビートをつくりだしているのですが、そこに”リズム楽器として”サック
スが加わっているのです。リズム楽器としてサックスを使用する手法は、古いジャズやＲ
＆Ｂで聴くことのできる手法で、フィル・スペクターやブライアン・ウィルソンも音に厚
みを加えるためにこの手法を使っています。サックスをリズム楽器として使うことで、ヘ
ヴィーを超えたパワフルなビートを創りだしているのです。そこに煌びやかなオルガンが
加わり、全体にエコーをたっぷりとかけることでキラキラとした独特なサウンドができあ
がるのです。ぼくはデイヴ・クラーク・ファイヴが《グラッド・オール・オーヴァー》で
確立したこのサウンドは、意外な人達に影響を与えているような気がしているのです。

《 Glad All Over 》( The Dave Clark Five )

Dave Clark Five are Dave Clark(ds,vo), Mike Smith(vo,org,p), Lenny Davidson(g), Rick Huxley(elb) and Denny Payton (sax, harmonica, g) Written by: Dave Clark & Mike Smith Produced : Dave Clark Released : January , 1964 Charts : POP#6 Label : Columbia/Epic Appears on :The Dave Clark Five The Hits 1.Do You Love Me, 2.Glad All Over, 3.Bits And Pieces, 4.Can't You See That's She's Mine, 5.Everybody Knows (I Still Love You), 6.Don't Let Me Down, 7.Any Way You Want It, 8.Wild Weekend, 9.Catch Us If You Can, 10.Because, 11.I Like It Like That, 12.Reelin' And Rockin', 13.Over And Over, 14.Come Home, 15.You Got What It Takes, 16.Try Too Hard, 17.Everybody Knows, 18.I'll Be Your's My Love, 19.Nineteen Days, 20.Look Before You Leap, 21.Til The Right One Come Along, 22.All Night Long, 23.Good Old Rock 'n' Roll Medley, 24.Sha Na Na Hey Kiss Him Goodbye, 25.Here Come Summer, 26.Put A Little Love In Your Heart, 27.Universal Love