●ロックへの旅(第三章):キャント・バイ・ミー・ラヴ
    (ザ・ビートルズ:1964)

ポール・マッカートニーの歌うタイトルと同じ歌詞でいきなり始まるのが、ビートルズの
イギリスでの6枚目のシングル《キャント・バイ・ミー・ラヴ》です。イギリスでもアメ
リカでも、予約だけで百万枚レベルにまで達したそうです。アメリカでは、訪米の余韻が
覚めやらぬ3月に発売され、いきなりチャートで1位を獲得(予約だけで百万枚を超えて
いたのですから、当然でしょう)。ちなみにこのときのチャートは、1位から5位までを
ビートルズのシングルが独占(1位から順に、《キャント・バイ・ミー・ラヴ》、《ツィ
スト・アンド・シャウト》、《シー・ラヴズ・ユー》、《アイ・ウォント・ホールド・ユ
ア・ハンド》、《プリーズ・プリーズ・ミー》)していました。6位以下にはじきとばさ
れたフォー・シーズンズのボブ・ゴーディオやビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソ
ンにとって、このビートルズの勢いは相当の脅威に写ったことでしょう。

しかし《キャント・バイ・ミー・ラヴ》は、曲の持つインパクトという意味でいうと《シ
ー・ラヴズ・ユー》や《アイ・ウォント・ホールド・ユア・ハンド》には及んでいないと
思います。イギリスにおいてもアメリカにおいても、当時のビートルズの持つ勢い(それ
は《シー・ラヴズ・ユー》と《アイ・ウォント・ホールド・ユア・ハンド》によってもた
らされたものといえる)によって、より多くを売ったシングル曲といえるのではないでし
ょうか。ジョンとポールが一緒にリード・ヴォーカルをとる《シー・ラヴズ・ユー》や、
《アイ・ウォント・ホールド・ユア・ハンド》のもつ塊り感と比較すると、終始ポールが
リード・ヴォーカルをとる《キャント・バイ・ミー・ラヴ》は、やはりワン・ランク落ち
る気がします。しかし楽曲の持っている”明るさ”や”昂揚感”のようなものは、当時の
ビートルズの勢いを確実に含んだ楽曲といえるでしょう。

それがよく現れているのが、やはり冒頭の歌いだしの部分と言えるのではないかと思いま
す。アイディアはプロデューサーのジョージ・マーティンによるものとのことですが、自
分達の持っていた勢いにピッタリだったのでビートルズも異論はなかったのでしょう。そ
のくらい冒頭から歌いだすポールの歌声には、当時のビートルズの勢いを感じさせます。
ぼくはこの冒頭部分を聴くと、視界が「パーッ」と開くような感じを受けます。おそらく
ビートルズの最初の主演映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」の監督ディック・レスター
も同様だったのではないでしょうか。映画の終盤で、ビートルズの4人が劇場の裏口の階
段から脱出するシーンにおいて、階段(つまり建物の外部)に出るといきなり「キャント
・バイ・ミー・ラヴ」と冒頭部分が始まるのです。《キャント・バイ・ミー・ラヴ》とい
う曲の持つイメージを、上手く活かした使い方だといえるのではないかと思います。
《 Can't Buy Me Love 》( The Beatles )
cover

The Beatles are
John Lennon(cho,g), Paul McCartney(vo,elb), George Harrison(elg,cho), Ringo Starr(ds)

Written  by: John Lennon & Paul McCartney
Produced by: George Martin
Recorded   : January 29, 1964
             February 25,1964
Released   : March 20, 1964(UK)
             March 16, 1964(US)
Charts     : POP#1
Label      : Capitol

Appears on :A Hard Day's Night
1.A Hard Day's Night, 2.I Should Have Known Better, 3.If I Fell,  
4.I'm Happy Just To Dance With You, 5.And I Love Her, 6.Tell Me Why,  
7.Can't Buy Me Love, 8.Any Time At All, 9.I'll Cry Instead, 
10.Things We Said Today, 11.When I Get Home, 12.You Can't Do That, 13.I'll Be Back

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