●ロックへの旅(第三章):シー・ラヴズ・ユー
    (ザ・ビートルズ:1963)

冒頭”ドドンド、ドンド”とリンゴのドラムスが鳴るやいなや、すぐに必殺の「シ、ラヴ
チュー、イェー、イェー、イェ」というコーラスが飛び出してくるのが、ビートルズのイ
ギリスでの4枚目のシングル盤《シー・ラヴズ・ユー》です。全編に渡ってジョンとポー
ルが一緒に歌う、ビートルズならではの一体感がたまりません。《シー・ラヴズ・ユー》
のコーラスの持つインパクトは、ビートルズの全楽曲の中でNo.1ではないかと思っていま
す。それも、ジョンとポール+ジョージが目一杯に叫ぶ「イェー、イェー、イェ」の一体
感があってこそのものだと思っています。それだけではありません。「イェー、イェー、
イェ」の後の、リンゴによるつんのめるような”タッタッ”というドラムス。この”タッ
タッ”があることによって緊張感がグッと増し、コーラス部分のインパクトはより大きな
ものになっているのです。実に見事なアレンジといえます。

この絶対的なインパクトを持つコーラスは、なんでも当初のアイディアでは掛け合い方式
だったそうです。つまりポールが「シ、ラヴチュー」と歌うと、ジョンとジョージが「イ
ェー、イェー、イェ」という合いの手を入れるというやりかたです。しかしジョンの助言
により、全編一緒に歌うようにしたそうです(ちなみに同時期に録音された《イット・ウ
ォント・ビー・ロング》では、このコーラスの掛け合い方式のアイディアを、より複雑化
して行っています)。「イェー、イェー」というのは「イエス、イエス」をリバプール風
に言っているそうですので、コーラスを訳すと「彼女はキミを愛しているよ」「そうだよ
(イェー)、そうだよ(イェー)」というように、掛け合いで考えていた気持ちもわかり
ます。恋に悩む友人を男同士で盛り立てている場面なのですが、ここは一緒に歌うという
ジョンのおそらく音楽的・直感的アイディアが功を奏したということでしょう。

そんなコーラスの裏話を持つ《シー・ラヴズ・ユー》ですが、ぼくが最もたまらないのは
「ウィズァ、ラヴ、ライク、ザット〜」とブレイクする部分です。放り出されるような、
ジラされるような感じがたまりません。自分がMなのではないかとさえ思います。とくに
最後の繰り返しのスローになるところ。ジョンはもちろんですが、高音を受け持つポール
の声の艶っぽいこと。「そんなふうに彼女に思われてようー、キミはようー」と羨むよう
な感じになって(この部分のメランコリーを感じとってください)、「シアワセモノだぜ
ー(ビー・グラーッド)」とバシッと明るく肩を叩かれるような感覚。ビートルズの初期
だけがもつ、キラキラとした若さと眩しさに満ち溢れています。そしてプロデューサーに
古くさいと言われながらも自分達の意見をおしたエンディングのコーラス。《シー・ラヴ
ズ・ユー》は、ビートルズの良いところが目一杯につまった最高の楽曲だと思います。

《 She Loves You 》( The Beatles )
cover

The Beatles are
John Lennon(vo,elg), Paul McCartney(vo,elb), George Harrison(elg,cho), Ringo Starr(ds)

Written  by: John Lennon & Paul McCartney
Produced by: George Martin
Recorded   : July 1, 1963
Released   : August 23, 1963(UK)
             September 16, 1963(US)
Charts     : POP#1
Label      : Swan

Appears on :Past Masters, Vol. 1 
1.Love Me Do, 2.From Me To You, 3.Thank You Girl, 4.She Loves You, 5.I'll Get You
6.I Want To Hold Your Hand, 7.This Boy, 8.Komm, Gib Mir Deine Hand,
9.Sie Liebt Dich, 10.Long Tall Sally, 11.I Call Your Name, 12.Slow Down,
13.Matchbox, 14.I Feel Fine, 15.She's A Woman, 16.Bad Boy, 17.Yes It Is, 
18.I'm Down  

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