ビートルズ旋風がアメリカを席巻していた1964年2月、全米チャートで見事に3位を獲得 したのが、フォー・シーズンズの《ダウン(ゴー・アウェイ)(邦題:悲しき夜明け)》 です。《ダウン(ゴー・アウェイ)》は、フォー・シーズンズにとって新しい契約先とな るフィリップス移籍後の初のシングルでした。当時のフォー・シーズンズは、それまでの 所属レコード会社のヴィー・ジェイ(ビートルズのレコードを、キャピトル・レコードか ら発売される前に発売していたレコード会社のひとつとしても有名)とロイヤリティの問 題でもめていたそうで、《ダウン(ゴー・アウェイ)》はヴィー・ジェイでレコーディン グされましたが、発売はフィリップスからとなったのでした。その間、フォー・シーズン ズ側はアトランティック・レコードにもアプローチしたようですが、アトランティックは 《ダウン(ゴー・アウェイ)》を蹴ったとされています。 アトランティックからは蹴られたという《ダウン(ゴー・アウェイ)》でしたが、同社の 敏腕エンジニアのトム・ダウド(レイ・チャールズの《ホワット・アイ・セイ》、オーネ ット・コールマンの《フリー・ジャズ》、デレク&ザ・ドミノスの《いとしのレイラ》な どのレコーディングで有名)との間には交流が生まれたようで、この時期のフォー・シー ズンズ作品のいくつかにはトム・ダウドが関わっています。ゴーディオによれば、《ダウ ン(ゴー・アウェイ)》初めて8トラックを取り入れた曲で、トム・ダウドと一緒にミキ シングを行ったそうです。なぜフォー・シーズンズとトム・ダウドなんだろうと思ってい たのですが、当時のアトランティック・レコードのスタジオには業界に先駆けて8トラッ クのコンソールが導入されていたようで、その新しいテクノロジーがフォー・シーズンズ とトム・ダウドを結びつけていたようです。 8トラックのテクノロジーが導入された《ダウン(ゴー・アウェイ)》ですが、モノラル なのでその恩恵は正直よくわかりません。しかしヴィー・ジェイ時代とは違い、バンドの 音とコーラスとヴォーカルが塊りになってでてくるサウンドには意表をつかれます。曲は 《キャンディ・ガール》を踏襲したスローなパートでスタートし、バディ・ザルツマンと 思われるお馴染みのドラム・ロールとともにやってくるオルガンが必殺のポップ・フレー ズを撒き散らします。そして「シンクッ!」のブレイクや、予想を裏切る中盤のコード展 開。ものの見事に、フォー・シーズンズの制作陣(作者のゴーディオ、プロデュースのボ ブ・クリュー、アレンジメントのチャーリー・カレロ)の力を見せ付けます。ビートルズ 上陸時点のアメリカでは、音楽性の点で間違いなくフォー・シーズンズがトップをいって いたでしょう。ブライアン・ウィルソンがライヴァル視したのも無理もありません。