●ロックへの旅(第三章):ヘイ・リトル・コブラ
    (ザ・リップ・コーズ:1964)

1964年のアメリカで、少なくとも音楽業界においては前年のケネディ暗殺による暗い気分
を引きずっているわけにはいかなかったでしょう。ビートルズが《アイ・ウォント・トゥ
・ホールド・ユア・ハンド》を引っさげてアメリカに上陸するのが1964年の2月。それ以
降の全米ポップ・チャートは、ビートルズをはじめとするイギリス勢に席巻されていきま
す。その波は、アメリカの同業者達にとって予想していた以上だったでしょう。《ミスタ
ー・ロンリー》で有名なボビー・ヴィントンなど、古いタイプの歌手はチャートから消え
ていきます。全米チャート上の対抗勢力として残ったのは、デトロイトのモータウン勢、
東海岸のフォー・シーズンズ、そして西海岸のビーチ・ボーイズを代表とするサーフィン
&ホット・ロッド勢でした。今回紹介する《ヘイ・リトル・コブラ》で有名なリップ・コ
ーズは、そんな西海岸ホット・ロッド勢のなかのグループのひとつです。

リップ・コーズは、フィル・スチューワートとアーニー・ブリンガスという高校の友人同
士によって1957年に結成されます。1957年ですから、彼らは当初からビーチ・ボーイズや
ジャン&ディーンのようなホット・ロッド系音楽をやろうとしていたのではなかったので
しょう。話が転がりはじめるのは、彼らが1962年にコロンビアのオーディションを受けた
ところからです。歌手・女優のドリス・ディの息子で、後にバーズやポール・リヴェラ&
ザ・レイダーズのプロデュースを行うテリー・メルチャーは、当時コロンビアとアーティ
スト契約を結んでいました。しかしヒットには恵まれず、スタジオに出入りするうちにプ
ロデュース業の方に興味を抱いたようです。そんなメルチャーのところに現れたのが、リ
ップ・コーズの2人だったのでしょう。メルチャーは彼らをプロデュースすることに決め
、2枚のシングルでそこそこのヒットを記録するのです。

そんな彼らの次のシングルが《ヘイ・リトル・コブラ》です。ビートルズ訪米の翌日のチ
ャートで4位を記録しています。そのサウンドは、ブライアン・ウィルソンやジャン・ベ
リーが創り出したコーラスとギター主体のサウンドに沿ったものです。メンバーのブリン
ガスが2枚目のシングル発売後に一時脱退してしまうのですが、メルチャーはヒットで見
えてきた成功の兆しを逃したくなかったのでしょう。メルチャーと友人のブルース・ジョ
ンストン(現ビーチ・ボーイズ)によって、《ヘイ・リトル・コブラ》の録音は行われた
そうです。そんなウラ話がある《ヘイ・リトル・コブラ》ですが、アール・パーマーと思
われるドライヴ感溢れるドラムと、ビーチ・ボーイズやジャン&ディーンを研究したよう
なコーラス・ワークが見事です。同時に、ビートルズ訪米時点でのビーチ・ボーイズやジ
ャン&ディーンのサウンドが注目に値するものであった格好の実例だと思います。
《 Hey Little Cobra 》( The Rip Chords )
cover

The Rip Chords are
Phil Stewart(vo), Ernie Bringas(vo)

But 《Hey Little Cobra》sang by Terry Melcher(vo), Bruce Johnston(vo,p)

Other Instruments by Wrecking Crew 

Maybe...

Earl Palmer?(ds), Ray Pohlman?(b), Glen Campbell?(g), 
Bill Pitman?(g), Tommy Tedesco?(g), Billy Strange?(g), Carol Kaye?(g), 
Al DeLory?(p), Leon Russell?(p), Don Randi?(p)

Written  by: Carol Conners  & Terry Melcher
Produced by: Terry Melcher
Charts     : POP#4
Label      : Columbia

Appears on :Hey Little Cobra and Other Hot Rod Hits
1.Hey Little Cobra, 2.Here I Stand, 3.Queen, 4.409,
5.Trophy Machine, 6.Gone, 7.Little Deuce Coupe, 8.'40 Ford Time, 
9.She Thinks I Still Care, 10.Shut Down, 11.Drag City, 12.Ding Dong  

+ bonus tracks

13.Karen, 14.Bunny Hill, 15.Don't Be Scared

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