●ロックへの旅:ジョニー・B・グッド
    (チャック・ベリー:1958)

さて今回はロックンロールの代表曲といっても過言ではない、チャック・ベリーのヒット
曲《ジョニー・B・グッド》です。ロックンロールを代表する曲だけあって、ビートルズ
、ビーチ・ボーイズの英米を代表する両グループ、ジミ・ヘンドリックスをはじめ、様々
な人たちにカヴァーされています。映画好きな人は、80年代にヒットした映画「バック・
トゥ・ザ・フューチャー」で、過去にタイム・スリップした主人公が、ダンス・パーティ
で黒人のドゥ・ワップ・グループ(ペンギンズの《アース・エンジェル》を歌っている)
のギターを借りて、弾きまくりながら歌った曲として憶えているのではないでしょうか。
「ゴー、ゴー」という歌詞のため、最近は某テレビ局の開局55周年のCM曲として、クロ
マニヨンズ、シーナ&ロケッツの鮎川誠、藤井フミヤ、萩本欽一(コント55号!)、おま
けになんとチャック・ベリー本人(!)が替え歌でカヴァーしています。

それくらいいろいろな人たちにカヴァーされる理由は、なんといっても「ゴー、ゴー、ゴ
ー、ジョニー、ゴー、ゴー」という、日本人でも容易に理解できるサビがあるせいではな
いかと思われます。日本語で言えば、「いけ、いけー!、いけっジョニー、いけ、いけー
!」という感じでしょうか。このイケイケ感が、ロックンロールの基本ともいえるスリー
・コードのギター・サウンドにピッタリとハマっています。そのため《ジョニー・B・グ
ッド》は、ロック・コンサートで盛り上がるには最適な曲といえるでしょう。曲を聴くだ
けで歌詞(「ベートーベンをぶっ飛ばせ!」など、ベリーは歌詞に天性の才能を持ってい
る)の意味が理解できる欧米のロック・ファンにとっては、誰もが夢をみることのできる
”読み書きもできない貧しい田舎の少年が、ギター片手に都会に出てスターになる”とい
う普遍性をもつ歌詞の内容も共感できるものだったのでしょう。

さらにベリーが優れていると思うのは、サビの「ゴー、ゴー」という後に”ギョワワワワ
ン”とギター・サウンドを入れている点です。実に見事なアイディアといえます。このギ
ター・サウンドがあるために、ロック・コンサートなどではヴォーカリストと観客が一緒
になって「ゴー、ゴー」と叫べば、ギタリストがそれに応えて”ギョワワワワン”と盛り
上がることができるのです。実際、幾多のロック・コンサートにおいて、《ジョニー・B
・グッド》で盛り上がったことでしょう。では、この優れたアイディアを、ベリーはどこ
から得たのでしょうか。ジャズのジャンプ・ブルースには、このような歌と楽器(例えば
ピアノやホーン・セクション)の掛け合いをよく聴くことができます。ぼくが《ジョニー
・B・グッド》を聴いて強く感じるのは、このようなジャンプ・ブルースやジャズのビッ
グ・バンド・サウンドの影響なのです。

ベリーは《ジョニー・B・グッド》を創るにあたって、本当にジャンプ・ブルースやジャ
ズのビック・バンドを意識していたのでしょうか。自覚的だったかどうかはわかりません
が、間違いなくジャンプ・ブルースなどの要素は入っていると思います。なによりもサウ
ンドが物語っているとぼくは思っていますが、証拠があるわけではないので確定的なこと
はいえません。《ジョニー・B・グッド》における有名なベリーのギターのイントロが、
ジャンプ・ブルースのスターであるルイ・ジョーダンの《エイント・ザット・ジャスト・
ライク・ア・ウーマン》という曲に影響を受けたものであるという説もありますが、ジョ
ーダンの曲を聴いたことがないために現段階では確定的なことは言えません。しかし、ベ
リー自身が語った「《ジョニー・B・グッド》の”ジョニー”は、ピアニストのジョニー
・ジョンソンをモデルにした」という言葉は、ヒントのひとつだと思っています。

ジョニー・ジョンソンは、ベリーのレコーディングに数多く付き合っているピアニストで
す(ただし《ジョニー・B・グッド》では、ラファイエット・リークがピアノを弾いてい
る)。想像ですが、《ジョニー・B・グッド》を録音する前に、ライヴでのジョンソンの
ピアノ・ソロで、ベリーが「ゴー、ジョニー、ゴー」とプッシュする場面が何度もあった
のではないでしょうか。ベリーが「ゴー、ジョニー、ゴー」と歌うとジョンソンがピアノ
で「ポロロポロン」と応える。それをギターに置き換えて、ベリーは《ジョニー・B・グ
ッド》を創ったのではないかと思えるのです。ジョンソンがピアノを弾いていないにもか
かわらず、「”ジョニー”はジョンソンがモデルだ」という発言にも説明がつきます。ブ
ギウギ・ピアノをギターに置き換えてロックンロール・ギターの基礎を創ったベリーは、
ジョンソンのピアノからロックンロールの代表曲を思いついた気がしてならないのです。

《 Johnny B.Goode 》( Chuck Berry )
cover

Chuck Berry(vo,elg)

Lafayette Leake(p), Willie Dixon(b), Fred Below(ds)

Produced by : Leonard and Phil Chess
Written  by : Chuck Berry
Released    : January, 1958
Charts      : POP#9
Label       : Chess

Appears on :The Ultimate Collection Chuck Berry
Disk1
1.Maybellene, 2.Wee Wee Hours, 3.Thirty Days, 4.No Money Down,
5.Down Bound Train, 6.Roll Over Beethoven, 7.Too Much Monkey Business,
8.Brown Eyed Handsome Man, 9.You Can't Catch Me, 10.Havana Moon,
11.School Day(Ring Ring Goes the Bell), 12.Oh Baby Doll,
13.Rock and Roll Music, 14.Sweet Little Sixteen, 15.Reelin' and Rockin',
16.House of Blue Lights, 17.Johnny B.Goode, 18.Around and Around,
19.Beautiful Delilah, 20.Carol  
Disk2
1.Sweet Little Rock and Roller, 2.Joe Joe Gunn, 3.Merry Christmas Baby,
4.Run Rudolph Run, 5.Anthony Boy, 6.Little Queenie, 7.Almost Grown,
8.Memphis Tennessee, 9.Back in the U.S.A., 10.Childhood Sweetheart,
11.Too Pooped to Pop, 12.Let It Rock, 13.Bye Bye Johnny, 14.Mad Lad,
15.Betty Jean, 16.Down the Road Apiece, 17.Jaguar and Thunderbird,
18.I'm Talking About You, 19.Route 66  
Disk3
1.Go Go Go, 2.Come On, 3.Nadine, 4.No Particular Place to Go,
5.You Never Can Tell, 6.Go Bobby Soxer, 7.Little Marie,
8.Promised Land, 9.Thing's I Used to Do, 10.Dear Dad,
11.Lonely School Days, 12.It Wasn't Me, 13.Tulane, 
14.Club Nitty Gritty, 15.It Hurts Me Too, 16.My Ding-A-Ling,
17.Reeling and Rocking [1972 Re-Recording]  


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