●ロックへの旅（第二章）：ルイ・ルイ
    （ザ・キングスメン：1963）

”ジャジャジャン、（ゥン）ジャジャ”というエレクトリック・ピアノ（オルガンの可能
性もあり）のフレーズがとても印象的なのが、アメリカはオレゴン州出身のキングスメン
のシングル・ヒット《ルイ・ルイ》という曲です。この曲がヒットしたのは1963年12月。
ビルボードで最高位の２位を獲得したのが、ビートルズの《アイ・ウォント・トゥ・ホー
ルド・ユア・ハンド》がアメリカ発売される直前の12月14日のことでした。キングスメン
（以外なことに、現在でも現役のグループです）がいまでもガレージ・ロックの元祖など
と言われているのは、この《ルイ・ルイ》のパフォーマンスとヒットした時期に関係して
います。少なくとも、僕はそう思います。1950年代から時系列にロックとその周辺の音楽
を辿る「ロックへの旅」を続ける僕にとっては、1963年という時点でのキングスメンによ
る《ルイ・ルイ》のパフォーマンスはいささかショッキングでした。

《ルイ・ルイ》のパフォーマンスを語る前に、《ルイ・ルイ》という曲のことを少し書い
ておきましょう。《ルイ・ルイ》は、キングスメンのオリジナル曲ではなく、作者のリチ
ャード・ベリーが、自分のグループのファラオズで出した曲です。ベリーという人は様々
なドゥ・ワップ・グループを転々とした人らしく、ロックンロール・クラシックのひとつ
ザ・ロビンズの《ライオット・イン・セル・ブロック・＃９》のベース・ヴォイスも彼の
声なのだそうです。その彼が、なんとカリプソ・スタイルの曲にインスパイアされて作っ
たのが《ルイ・ルイ》なのだそうです。《ルイ・ルイ》はベリーのグループではヒットし
ませんでしたが、その後ロッキン・ロビン・ロバートとファビュラス・ウェイラーズとい
うグループが取り上げローカル・ヒットさせます。キングスメンは、このヴァージョンを
ベースにカヴァーしています。

そのキングスメン・ヴァージョンの《ルイ・ルイ》ですが、何にショックを受けるかとい
うと、パフォーマンス全体から漂う”60年代ロックの香り”です。ザ・フーやキンクスと
いったバンドが持っている暴力的な香り。それが《ルイ・ルイ》から漂ってくるのです。
これが、1964年以降のパフォーマンスならば別にショックは受けなかったでしょう。しか
し、まだビートルズでさえアメリカを席巻する前にこのパフォーマンスということにショ
ックを受けるのです。今回のロックの旅でいろいろと調べてみると、その理由がわかりま
した。60年代ロックのほうが、この曲のリフの影響を大きく受けていたのです。たとえば
ジミヘンの演奏で有名なトロッグスの《ワイルド・シング》など、影響をもろに受けてい
るのがわかります。60年代のいろいろなロックにその影響を聴き取ることができるからこ
そ、キングスメンの《ルイ・ルイ》はいまでも印象的なのだと思います。

《 Louie Louie 》( The Kingsmen )

The Kingsmen are Jack Ely(vo), Mike Mitchell(elg), Don Gallucci(elp), Bob Nordby(b) & Lynn Easton(ds) Written : Richard Berry Produced : Ken Chase Recorded : April, 1963 Released : May, 1963 Charts : POP#2 Label : Wand Appears on :Louie Louie : The Very Best of The Kingsmen 1.Louie, Louie, 2.Money (That's What I Want), 3.Jolly Green Giant, 4.Little Latin Lupe Lu, 5.Death of an Angel, 6.Annie Fannie, 7.Climb, 8.Killer Joe, 9.Little Sally Tease, 10.Don't You Just Know It, 11.That's Cool, That's Trash, 12.Long Green, 13.Shout, 14.Mashed Potatoes, 15.Little Green Thing, 16.Shake a Tail Feather, 17.Mustang Sally, 18.I Like It Like That, 19.Twist and Shout, 20.Do You Love Me, 21.New Orleans, 22.Fever, 23.Gimme Some Lovin', 24.Tall Cool One, 25.Long Tall Texan, 26.Night Train